裏信長記 (少しぐらい歴史に強くたって現実は厳しいんです)

ろくさん

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幕間 (その一)

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伊蔵の場合


いくさは、弱者にとても厳しい。
現在、重治を主人と仰ぐ三人の青年たちもまた、弱者だった。


重治様?
んっ、優しいんだ!それと暖かいんだ。


三人に尋ねれば三人ともが同様に答える。

ある斉藤家と織田家の境にあった山間部の小さな小さな集落があった。そんな集落も、両家の争いが激しくなると戦禍に巻き込まれた。逆らう男衆は殺し尽くされ、女衆は、凌辱され続け正気を失う者さえあった。
若い者の消えた集落は、残り火がゆっくりと消えて行くように存在をけした。

消え去るような集落には、孤児になった者に手をさしのべることはできない。
邪魔者、厄介者として生きていくことさえ否定されていった。

重治は、何気に伊蔵の幼い頃の記憶をたずねたことがあった。もちろん悪気などあろうはずもない。


そうですねぇ…、確か…両親はいたような…うーん、たぶんいたような…もしかすると願望なのかなぁ…


曖昧な言葉の繰り返しに重治は、後悔した。胸は熱くなり瞳からは涙が湧れ出した。


幼い頃の記憶としてはっきりしているのは、盗み損ねて捕まった私たちを重治様がお助けくださった以降ですかねぇ。


後ろを向いて涙を拭う重治に、伊蔵は優しく笑って答えた。


親や親族を失った孤児のいくすえは、死か罪を犯していくかで、まずまともな人生を望めない。

重治が三人にであったのは、ほんの偶然である。はっきりと言って、手をさしのべたのもただの好奇心、気まぐれだった。
人の人生、生きる死ぬに関与して行こうなどとは、重治は、髪の毛先の微塵さえ考えつかなかった。


ほんと、お腹いっぱい食べれるって最高ですよね。それからそれから明日の心配をせず安心して眠れること。

弟たちの言うことはよく解る。だからこそ、この幸せを与えてくださった重治様になんとしても報いなければならない。
死と隣り合わせにいた我ら三人。命をかけて御奉公して参ります重治様。


あっ、一つだけ。…すぐに泣くのだけは、おやめいただけま……あっ、いえ、今のは無かったことに……………………





山崎新平の場合


俺の名は山崎新平と申す。よしなに。

これでも近江の国ではちっとは名が知れてるんだぞ。『浅井家の中、隣に並び立つものなし』なんてもて囃されて、まぁ少し鼻を高くしていたことは否定しない。

あんときの戦い、ほんと勝ちを確信したよ。十中八九負けはない。この時の俺は自身の力に驕り昂ぶり慢心していたと思うよ。

だけどなぁ、ありゃあ、いくら何でも反則だぞ。

戦いのさなか俺は一騎駆けにて単身、敵陣に突っ込んでいった。
目指すは本陣、大将首だ。織田家の家紋の染めらた陣幕を見つけた俺は勝利を確信した。

抵抗してくる奴らの弱っちいこと弱っちいこと。もちろん、俺は目前の陣幕を切り裂いて陣中に駆け込んださ。
数人の奴がいるにはいたが、どう見繕っても馬廻りの雑魚。

もらったぁ。勢い勇んで切り込もうとしたよ。これほどの好機、逃す馬鹿はいるはず無い。


はぁ……結果…………

確かに自惚れていましたよ…
なんであんなに軟弱なのに強いんですか。
はぁ、四百年?そんな武術の流派きいたことないぞ?!


まあ、いいか楽しいから。

ほんとうちの大将、変わってるよ。
いくさってのは、敗者には厳しいもんなんだよ。敗者の末路は斬首。勝者に媚びを売るやつなんかもいるが俺は真っ平ごめんだ。

そんな俺だが、惚れちまった。
うーん、なんか可愛いんだよ。織田の殿さんも公言してるが、あれは愛かね。なんか護ってやりたくなるんだよな。

それにさ、一緒にいるのが楽しいんだよ。
とにかくさ、楽しくって愉しくって。

まぁ、これから宜しくな『大将』






竹中半兵衛重治の場合



私、竹中半兵衛重治と申します。

ほんとあの時は、びっくりしました。
ほんと覚悟しちゃっていたんです。それがいきなりピカッですからねぇ。

何が何だか判らなかったんだけど、せっかくいただいた好機でしたからねえ。

ほんとに感謝しきれません。
命のご恩人様、ありがとう御座います。


なんでも私、名軍師として名を残すらしいんです。
まぁ、確かに、人よりも知略に自信はありますよ。孫子の兵法書に始まり多種多様の軍記物、史実書を読みふけってはきましたよ。

でもでも、重治さん……
うーん、どうも自分の名前を呼ぶ行為ってのは照れますね。
それはさておき重治さん。なんなんですか、あなたの知識。えっ、未来人?私の子孫??はあ??????

これは間違いなく名軍師として名を残すのは、あなたですよ、あなた。
そしてそのあなたの知識があれば、いくさのない世界が間違いなく作り出せます。

もちろん私も協力させていただきます。
ふふふふ、楽しくなってきましたねぇ。さあ、明るい明日に向かって頑張って参りましょう。

あっ、それからそれから、できればご先祖様だけは勘弁くださいませんか。
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