その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

五話 冒険者登録

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ギルド会館の入口は、西部劇風ウエスタンドアなどではなくて、観音開きの質素なドアである。
建物に比べてかなり新しい所をみると、いろいろなトラブルで交換されたことを想像させた。


「ミリア♪この人の登録お願い♪」


「リリー♪その人?」


「そう、ちょっとばかり訳ありでね、うちで世話やく事になったの」


「もしかすると、例の?」


「そう、当たり♪流石に耳が早いね♪」


世話役リリーの顔馴染みなのか、カウンターレディーのその女性は、主役の筈のおっさんを置き去りに軽快にトークを繰り返す。


「へへへへ、まあね♪情報第一の世の中だからね♪」


「まあ、そんな訳で、このおっさ‥ヨッシーの登録お願い♪」


『もう、おっさんでもおっちゃんでも、好きにしてください』


義弘は、ミリアがカウンターに差し出した用紙に目を通し始めた。


『なるほど、やっぱり読めるか…』


それは、義弘の想像の通りだった。始めて山茶花のメンバーとあった時、言葉が通じた事から文字に対しても予想の範疇であった。


「文字の方は大丈夫?」


優しく営業スマイルでミリアが尋ねた。


「はい。大丈夫です。ところで、この特技なんですが…」


「ああ、それね♪そこの所は、書いても書かなくても適当でいいわよ♪…そう、何か特技が書いてあれば、クエストのお誘いなんかをこちらから紹介したりできるからね」


「なるほど、そういう事ですか…」


義弘は説明を聞いたあと、書類の特技項目の空欄を、選択した。
人外能力を指摘されてなお、特技として書き込めば、それは必ずトラブルを呼ぶ事が予想できた。


「それじゃ、書けたみたいだから、今度は二つのオーブに手を当ててもらうね♪」


『きたぁー!やっぱりこれもテンプレ通り♪オーブちゃん壊れないでね♪』

おっさんは期待と不安を胸に抱えて、そっとオーブに手を伸ばした。


「ふぅーん、なるほどね。はい。O.K.です♪」


「???」


「じゃ、今度はこっちのオーブ♪」


「あっ、はい‥」


ミリアの営業スマイルは、全く感情を読ませない。
結果は?
期待と不安を抱えるおっさんの感情の秤が、不安へとどんどん傾く。


「なるほどなるほど…はい♪O.K.ですよ」


「あのぉ、結果の方は?」


「えっ?結果ですか?……今、ここで、言っちゃっていいんですか?」


「えっ…、ま、まずい‥やっぱり、まずいですよねぇ…」


ミリアの表情は、笑顔のまま、全く変化を見せない。


「まあ、ご本人が希望ならば、いいんですけどね♪」


「あっ、やっぱりいいです、全然、後からで結構です!」


「そうですよねぇ~♪それでは、後からで♪」


「あっ、はい、後からでお願いします…」


「では、ギルド証とオーブ鑑定結果は、1時間後以降ならいつでもこの受付で渡せます。まあ、出来れば早い方が良いですけどね♪」


おっさんに向ける最後の笑顔は、それまでの営業スマイルとは違い、冒険者仲間として受け入れてもらえたと感じるほど、とても暖かく感じられた義弘である。


「じゃあ、ヨッシー。簡単にここのシステムを教えるね」


それまで、ずっとおっさんの傍らで動向をチェックしていたリリーが、呆然唖然としていた義弘に声をかけた。


「あっ、はいぃ!よろしくお願いします」
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