その物語は、悲劇から始まった

ろくさん

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第四章 異世界生活

十話 おっさん、初めてのおつかい

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ギルド受付嬢ミリアの言によると、治癒魔法を使える魔術師は、初期の段階から冒険者ランクが優遇されるそうである。

自分、もしくはパーティーメンバーの回復手段を持っているということは、危険を伴う冒険に対して、大きなアドバンテージに繋がるのである。



そんなこんなのドタバタ喜劇を踏まえ、おっさん、新しいカードの発行を再び待つことになっていた。


「いきなりEクラスか‥何年ぶりかなぁ」


おっさんの隣の毛むくらじゃがつぶやく。


冒険者のランクは、Gクラスから始まる。
見習い冒険者であるGクラスは、通常、街中の雑用業務をこなして住人からの信頼を重ねていく。

クエストポイントとギルド貢献ポイントの蓄積によりクラスの昇格。Gクラス卒業後、始めて街外のクエスト、採取や討伐の依頼を受ける事になる。


人外指定は免れたものの、おっさんはやっぱり規格外だった。


「クエストを受けるなら、今のうちにボードチェックした方がいいんじゃないか?」


「そうなのか?ゴルちゃん‥じゃ、少しアドバイスしてくれないか?」


「もちろん、そのつもりだ♪」


ニヤリと毛むくらじゃのゴルドが応えた。

人見知りだったおっさん。
友人らしい友人のいなかったおっさん。
他人と一緒の行動が、これほど高揚するとは思いもしなかったおっさんである。


「はい、これ。」


ボードとにらめっこのおっさん、不意に肩を叩かれる。


「Eクラスカード。それにクラン山茶花からクエスト報酬の一部が振り込まれているから、受付で確認しておいてね♪」


最果ての街エンドのホープの可能性を秘めたおっさんに対する態度が一気に改善する。

それまでの胡散げな視線はまるで感じられず、営業スマイルではない好意的な笑顔さえ覗えた。


「ミリアさん、ありがとうございます」


「ヨッシーさん、私のことは、ミリアで♪ね♪」


「あっ、は、はい。では、私のこともヨッシーと呼び捨てでお願いします」


好意的な女性からの笑顔で、おっさんはしどろもどろ。混乱を発生させる。

《何でもかんでもスキル発生させないからな!》


おっさんが取得している文字化けスキルの能力。
『超異常耐性』このスキルさえ発動されていれば、混乱とは無縁のおっさんのはずであった。



とりあえず混乱の治まったおっさんは、毛むじゃのおっさんとギルドを後に、街の鍛冶屋へとやって来ていた。


「ここが俺のお勧めの鍛冶屋だ。今は2代目で見た目は若いが腕の方は俺が保証する」


毛むじゃの言うとおり、おっちゃんと呼ぶにはまだまだ若い。
義弘は、言葉を選んで話しかけた。


「大将♪私し冒険初心者で、剣技駄目魔法駄目のヒヨッコですが、何かお勧めの武器防具があればお教え願えませんか…」


「……おまえ、ほんとバカ丁寧な奴だなあ…ゴルドのお気に入りみたいだし、…これなんかどうだ?とっておきだぞ?」



最果ての街エンドでのゴルドの名前は信頼を極アップする。
鍛冶屋しかり道具やしかり、その店、取って置きが次々に低料金で差し出される。

ゴルドの信頼、この街への貢献度の高さが、思わぬ機会に知ることになり、心が高揚する。

思わぬ理不尽な解雇から半年。心は寂れ人生さえ投げやりになっていたおっさん。そんなおっさんの目の前に、これからの人生の理想の像が、暖かい眼差しを向けてくれていた。
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