断罪された悪役令息は、悪役令嬢に拾われる

由香

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番外編

スピンオフ短編 ―薬師団の遺志―

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 夜の都。
 人々が眠るその下で、灯りがひとつ、静かに揺れていた。

「……ルヴァン夫人の娘は、無事に真実を暴いたそうね」

 声の主は、黒衣の女。
 “薬師団”の新たな長となった女性、アイラ・シェル。
 彼女は古びた薬壺を撫でながら、微笑を浮かべた。

「あなたの娘さん、立派にやり遂げましたよ、ミレーヌ様」

 天井の棚には、封じられた古い手帳。
 それは、かつてセレスティアの母――ミレーヌ・ルヴァンが記した研究日誌。

 そこには、王家の秘密だけでなく、国を癒すための“真の薬術”の理論が残されていた。

 アイラは手帳をそっと開く。
 最後の頁には、たった一行だけ、ミレーヌの筆跡があった。

 「この国が再び“真実”を語る日が来たら――薬師団の使命は終わる」

 アイラは目を細めた。

「……その日が来たのね」

 その時、背後の扉が開き、若い使者が入ってきた。

「団長。レディ・セレスティアより、王都再建支援の依頼が届いています」

「ええ、引き受けましょう」

 アイラは微笑んだ。

「私たち“影の薬師”は、もう裏には戻らない。これからは――光の下で人を癒すの」

 薬壺の中で、淡い光が瞬いた。
 ミレーヌの残した技術が、今、次の世代へと受け継がれていく。

 静かな夜に、かすかな香草の匂いが広がった。
 それは、断罪の時代が終わり、癒しの時代が始まったことを告げる香りだった。




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