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番外編
第一話 初夜 ―氷の仮面が溶ける夜―
しおりを挟む静かな夜だった。
王家の断罪劇が終わり、すべての嘘が剥がれ落ちたあと――セレスティアとレオナルドは、ようやく“本当の婚姻”を結んだ。
月明かりが白絹のカーテンを揺らし、二人の影を重ねる。
「……まるで夢みたいね」
セレスティアが小さく呟いた。
「悪女と呼ばれた私が、こうして幸せを感じるなんて」
「夢なら、俺は一生覚めなくていい」
レオナルドは彼女の頬に触れた。
その指先は優しく、震えている。
「怖い?」
「少しだけ。……でも、あなたの目を見てると、平気」
セレスティアは微笑み、彼の胸に額を寄せた。
「セレスティア。俺はあなたに拾われてよかった。たとえ最初が“取引”でも、今は違う。俺はあなたに――救われた」
長い夜の沈黙のあと、彼女はただ一言だけ囁く。
「私もあなたと同じ」
カーテンの向こう、月がゆっくりと傾いていく。
それは、悪役同士の二人がようやく手にした“真実の夜明け”だった。
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