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#19 みけねこの由来
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フォルティと再会したのも束の間、とんでもない事を聞かされる羽目になったが、その話も一旦まとまって、その後は聞きたかった事もいくつか聞くことが出来た。
聞いた内容としては、もらったスキルががかなり規格外だった点や、スキルポイントのシステムの事が主だ。
職業が規格外な点はさっきも言われた事なのだが、簡単に死んじゃったりしないように、強めに設定したらしい。
「過剰じゃない?」と言ったところ、「これでも不安なくらいです!」と言われてしまった。
スキルポイントシステムは匠真が単純に楽しめるようにとか、不便しないようにという事で設けたシステムで、こんなスキル欲しいなとなった時に、簡単に取れるようにしたそうだ。
大分反則な気はするが、助かってる事には間違いないので、これは素直にありがとうと言っておいた。
(聞きたい事も大体聞けたし、とても価値のある時間だったな……って、やばい! どのくらいここにいたんだ!?)
「フォルティ? ここに来てからどれくらい経った?」
「んー、匠真さんの感覚で言うと1時間くらいですかね?」
「もうそんな経ってたの!? ごめん、そろそろ戻るね!」
「ふふ、慌てなくても大丈夫ですよ。 向こうで意識を取り戻した時には数分しか経っていないようにしてるので」
「ほんと? それは助かるよ、ありがとうフォルティ」
「いえいえ、また来てくださいね? 待ってますから」
「うん、定期的に来るようにするよ。 それじゃあまたね」
「はい! またお話ししましょう!」
その言葉を最後に、視界が光に包まれていった。
*
匠真が目を開けると、そこは教会の女神像の前だった。
祈りの姿勢を解き立ち上がって、最後に女神像に向かって頭の中でまた来るよと呟いてその場を後にする。
「……終わった?」
座って待っていたノアルがぴょんっと立ち上がり、こちらに寄ってきた。
「うん、終わったよ。 待たせてごめんね?」
「……そんなに待ってないから大丈夫」
(フォルティが言っていた通り、時間はそこまで経ってないみたいだ。 良かった)
「あの、ショーマさん?」
「あれ、マイヤさんも待ってたんですか?」
「あ、はい。 ショーマさんの事がどんな風に祈りを捧げるのか気になったので」
「そうですか、お待たせしてすいませんでした」
「い、いえ、いいんです、私が勝手に見たいと思っただけなので。 それに、ノアルちゃんと話してたのでそこまで退屈じゃ無かったですし」
「……マイヤはいい人」
「ふふ、ありがとうノアルちゃん」
(ノアルって意外と人と仲良くなるの早いよね。 口数は多くないんだけど、なんでだろうか?)
「あ、それで、ショーマさんの祈ってる姿見たんですけど、凄かったんです! 元々大きかった力が更に大きくなって、言い表せないくらい凄かったです!」
とても興奮した様子でマイヤさんが詰め寄ってくる。
「マ、マイヤさん、ちょっと近いです……」
「……マイヤ、近い」
「はっ! す、すいません! あ、あまりに凄かったものですからちょっと興奮してしまって…… ご、ごめんねノアルちゃん。 さっき話してたような事じゃないからね?」
「……分かってる」
ノアルもそう思ったらしく、マイヤの肩を持って匠真から引き離した。
(さっきの話ってなんだろうか? 僕が関係してる事なのかな?)
「ノアル、さっきの話って?」
「……秘密」
「えー、なにさ? 気になるなぁ」
「……秘密は秘密」
「ショーマさん、ダメですよ女の子の秘密を詮索するのは」
「そういうものなんですか……」
(まぁ、誰にでも聞かれたくない秘密の一つや二つくらいあるよね。 ……僕なんていくつ隠し事があるか分かんないし)
「それじゃあ、そろそろ宿に戻ろうか?」
「……ん」
「マイヤさん、それでは僕らはそろそろ行きますね。 ギルドとかで会ったらまたお願いします」
「そういえば、ショーマさん冒険者なんですよね…… あんなに大きな力持ってると教会関係者にしか思えないんですけど……」
「マイヤさんは教会関係者という訳ではないんですか?」
「いえ、私は個人的に女神フォルティ様を信仰してるだけですので、教会関係者という訳ではありません。 勧誘はすごい来るんですけど、今のところ受けるつもりはありませんね」
「そうなんですか」
「ショーマさんも少し気をつけておいた方がいいですよ。 あそこまで大きな神聖力持ってると分かったら必ず教会は勧誘に来ると思います」
「ご忠告感謝します。 僕も当分は冒険者としてやっていくつもりなので、勧誘が来ても断らせてもらいます」
「その方がいいと思います。 それじゃあ私も宿の方に戻りますね。 またお話し聞かせてください」
「お手柔らかにお願いします」
「……ばいばい、マイヤ」
匠真達は、教会前でマイヤと別れ、宿への道を歩き出した。
*
そんなこんなで宿までもう直ぐというところまで戻って来たのだが、匠真はとあることを思い出した。
「ミルドさん達にどう説明しよう……」
そう、今朝のノアルは黒猫の姿だったが、今は獣人の姿なのだ。
(というか、そもそもこの宿に獣人は泊まっていいのだろうか? ノアルの話を聞くに、ダメな宿もあるのではないか?)
「……獣化する?」
「いや、獣化は魔力を使うんでしょ? 早いとこ魔力を回復させたいだろうし、その姿で、もし泊まっちゃダメって言われたら別の宿を探そうか」
「……ごめんなさい」
「謝らないで? 僕は平気だから」
「……ん」
「それじゃ、行こうか」
不安からか、ノアルは匠真の服の裾を掴んで直ぐ後ろを付いてくる。
宿の扉を開き、中に入るとそこには従業員の人がいた。
「あ、ショーマさん、お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
この宿にはミルド一家に加えて2人の従業員がいる。
今出迎えてくれたのは従業員のソーイという女性で、もう1人の従業員のトーイとは双子の姉妹らしい。
ちなみに、髪型がロングとショートなので見分けが付くが、それ以外は体格や顔も全く持って見分けがつかないくらいそっくりである。
「あれ、そちらの方は?」
「あー…… この子は見た通り獣人なんですけど、この宿って獣人は泊まっちゃダメとかありますかね?」
「いや、大丈夫だと思いますよ? 珍しいですけど、獣人の方や魔族の方も泊まりに来ることありますし、そういう宿に泊まってる以上、獣人が極端にダメなお客さんもいないと思いますよ」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
(良かった、宿を変えたりする必要はないみたいだ。 最悪、森の方で野宿かなーとも思っていたので一安心だ)
「お、ショーマじゃないか。 どうした?」
話し声を聞きつけたのかミルドが受付の奥のスペースから顔を出して来た。
「あ、ミルドさん、えっとですね……」
匠真はソーイに聞いた事をもう一度ミルドに聞いた。
すると、ソーイの言った通り泊まることに全く問題はないらしかった。
加えて、昨日助けた黒猫がノアルだった事や、今朝はこの宿がもし獣人NGだった時のために獣化していた事も告げた。
「なるほど、まぁ、うちの宿は基本的には種族とかで無理とかは無いぞ。 なんでも、この宿を最初に作った人…… 俺の曾祖父だったかなんだかが猫の獣人だったらしくてな。 そんな事もあってウチの宿では種族贔屓はしない事にしてるよ」
「そうだったんですか」
(だから宿屋の名前もみけねこなのかな?)
「それで、そいつも泊まるって事でいいのか?」
「……ん、泊まる。 それと、ありがと」
「ん? なにがだ?」
「……ノアルが倒れている時に様子を見てくれたって聞いた。 だから、ありがと」
「ああ、その事か。 気にしなくていい、元気になったみたいで良かったな」
「……ん」
ノアルはミルドにお礼を言うと、匠真後ろからひょこっと出てきた。
「そういえば、ショーマは最初に3日分の宿代払っていたが、これからどうすんだ?」
「そうですね…… ノアル? あとどれくらいで魔力回復しそう?」
「……あと2日くらい」
「じゃあ、あと2日でお願いします」
「そうか、今払うか? 後でもいいぞ?」
「あ、今支払いします」
匠真はそう言って、受付でミルドにお金を払いに行く。
ノアルはそんな匠真の背中を不思議そうに見つめていた。
聞いた内容としては、もらったスキルががかなり規格外だった点や、スキルポイントのシステムの事が主だ。
職業が規格外な点はさっきも言われた事なのだが、簡単に死んじゃったりしないように、強めに設定したらしい。
「過剰じゃない?」と言ったところ、「これでも不安なくらいです!」と言われてしまった。
スキルポイントシステムは匠真が単純に楽しめるようにとか、不便しないようにという事で設けたシステムで、こんなスキル欲しいなとなった時に、簡単に取れるようにしたそうだ。
大分反則な気はするが、助かってる事には間違いないので、これは素直にありがとうと言っておいた。
(聞きたい事も大体聞けたし、とても価値のある時間だったな……って、やばい! どのくらいここにいたんだ!?)
「フォルティ? ここに来てからどれくらい経った?」
「んー、匠真さんの感覚で言うと1時間くらいですかね?」
「もうそんな経ってたの!? ごめん、そろそろ戻るね!」
「ふふ、慌てなくても大丈夫ですよ。 向こうで意識を取り戻した時には数分しか経っていないようにしてるので」
「ほんと? それは助かるよ、ありがとうフォルティ」
「いえいえ、また来てくださいね? 待ってますから」
「うん、定期的に来るようにするよ。 それじゃあまたね」
「はい! またお話ししましょう!」
その言葉を最後に、視界が光に包まれていった。
*
匠真が目を開けると、そこは教会の女神像の前だった。
祈りの姿勢を解き立ち上がって、最後に女神像に向かって頭の中でまた来るよと呟いてその場を後にする。
「……終わった?」
座って待っていたノアルがぴょんっと立ち上がり、こちらに寄ってきた。
「うん、終わったよ。 待たせてごめんね?」
「……そんなに待ってないから大丈夫」
(フォルティが言っていた通り、時間はそこまで経ってないみたいだ。 良かった)
「あの、ショーマさん?」
「あれ、マイヤさんも待ってたんですか?」
「あ、はい。 ショーマさんの事がどんな風に祈りを捧げるのか気になったので」
「そうですか、お待たせしてすいませんでした」
「い、いえ、いいんです、私が勝手に見たいと思っただけなので。 それに、ノアルちゃんと話してたのでそこまで退屈じゃ無かったですし」
「……マイヤはいい人」
「ふふ、ありがとうノアルちゃん」
(ノアルって意外と人と仲良くなるの早いよね。 口数は多くないんだけど、なんでだろうか?)
「あ、それで、ショーマさんの祈ってる姿見たんですけど、凄かったんです! 元々大きかった力が更に大きくなって、言い表せないくらい凄かったです!」
とても興奮した様子でマイヤさんが詰め寄ってくる。
「マ、マイヤさん、ちょっと近いです……」
「……マイヤ、近い」
「はっ! す、すいません! あ、あまりに凄かったものですからちょっと興奮してしまって…… ご、ごめんねノアルちゃん。 さっき話してたような事じゃないからね?」
「……分かってる」
ノアルもそう思ったらしく、マイヤの肩を持って匠真から引き離した。
(さっきの話ってなんだろうか? 僕が関係してる事なのかな?)
「ノアル、さっきの話って?」
「……秘密」
「えー、なにさ? 気になるなぁ」
「……秘密は秘密」
「ショーマさん、ダメですよ女の子の秘密を詮索するのは」
「そういうものなんですか……」
(まぁ、誰にでも聞かれたくない秘密の一つや二つくらいあるよね。 ……僕なんていくつ隠し事があるか分かんないし)
「それじゃあ、そろそろ宿に戻ろうか?」
「……ん」
「マイヤさん、それでは僕らはそろそろ行きますね。 ギルドとかで会ったらまたお願いします」
「そういえば、ショーマさん冒険者なんですよね…… あんなに大きな力持ってると教会関係者にしか思えないんですけど……」
「マイヤさんは教会関係者という訳ではないんですか?」
「いえ、私は個人的に女神フォルティ様を信仰してるだけですので、教会関係者という訳ではありません。 勧誘はすごい来るんですけど、今のところ受けるつもりはありませんね」
「そうなんですか」
「ショーマさんも少し気をつけておいた方がいいですよ。 あそこまで大きな神聖力持ってると分かったら必ず教会は勧誘に来ると思います」
「ご忠告感謝します。 僕も当分は冒険者としてやっていくつもりなので、勧誘が来ても断らせてもらいます」
「その方がいいと思います。 それじゃあ私も宿の方に戻りますね。 またお話し聞かせてください」
「お手柔らかにお願いします」
「……ばいばい、マイヤ」
匠真達は、教会前でマイヤと別れ、宿への道を歩き出した。
*
そんなこんなで宿までもう直ぐというところまで戻って来たのだが、匠真はとあることを思い出した。
「ミルドさん達にどう説明しよう……」
そう、今朝のノアルは黒猫の姿だったが、今は獣人の姿なのだ。
(というか、そもそもこの宿に獣人は泊まっていいのだろうか? ノアルの話を聞くに、ダメな宿もあるのではないか?)
「……獣化する?」
「いや、獣化は魔力を使うんでしょ? 早いとこ魔力を回復させたいだろうし、その姿で、もし泊まっちゃダメって言われたら別の宿を探そうか」
「……ごめんなさい」
「謝らないで? 僕は平気だから」
「……ん」
「それじゃ、行こうか」
不安からか、ノアルは匠真の服の裾を掴んで直ぐ後ろを付いてくる。
宿の扉を開き、中に入るとそこには従業員の人がいた。
「あ、ショーマさん、お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
この宿にはミルド一家に加えて2人の従業員がいる。
今出迎えてくれたのは従業員のソーイという女性で、もう1人の従業員のトーイとは双子の姉妹らしい。
ちなみに、髪型がロングとショートなので見分けが付くが、それ以外は体格や顔も全く持って見分けがつかないくらいそっくりである。
「あれ、そちらの方は?」
「あー…… この子は見た通り獣人なんですけど、この宿って獣人は泊まっちゃダメとかありますかね?」
「いや、大丈夫だと思いますよ? 珍しいですけど、獣人の方や魔族の方も泊まりに来ることありますし、そういう宿に泊まってる以上、獣人が極端にダメなお客さんもいないと思いますよ」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
(良かった、宿を変えたりする必要はないみたいだ。 最悪、森の方で野宿かなーとも思っていたので一安心だ)
「お、ショーマじゃないか。 どうした?」
話し声を聞きつけたのかミルドが受付の奥のスペースから顔を出して来た。
「あ、ミルドさん、えっとですね……」
匠真はソーイに聞いた事をもう一度ミルドに聞いた。
すると、ソーイの言った通り泊まることに全く問題はないらしかった。
加えて、昨日助けた黒猫がノアルだった事や、今朝はこの宿がもし獣人NGだった時のために獣化していた事も告げた。
「なるほど、まぁ、うちの宿は基本的には種族とかで無理とかは無いぞ。 なんでも、この宿を最初に作った人…… 俺の曾祖父だったかなんだかが猫の獣人だったらしくてな。 そんな事もあってウチの宿では種族贔屓はしない事にしてるよ」
「そうだったんですか」
(だから宿屋の名前もみけねこなのかな?)
「それで、そいつも泊まるって事でいいのか?」
「……ん、泊まる。 それと、ありがと」
「ん? なにがだ?」
「……ノアルが倒れている時に様子を見てくれたって聞いた。 だから、ありがと」
「ああ、その事か。 気にしなくていい、元気になったみたいで良かったな」
「……ん」
ノアルはミルドにお礼を言うと、匠真後ろからひょこっと出てきた。
「そういえば、ショーマは最初に3日分の宿代払っていたが、これからどうすんだ?」
「そうですね…… ノアル? あとどれくらいで魔力回復しそう?」
「……あと2日くらい」
「じゃあ、あと2日でお願いします」
「そうか、今払うか? 後でもいいぞ?」
「あ、今支払いします」
匠真はそう言って、受付でミルドにお金を払いに行く。
ノアルはそんな匠真の背中を不思議そうに見つめていた。
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