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#31 故郷への道②

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 道から外れ森に入った匠真達は、かなりの頻度で現れる魔物を倒しながらノアルの故郷に向かって真っ直ぐ進んでいた。

 
(それにしても、道から外れると、魔物とこんなに遭遇するとは思っていなかったな)


「ノアルの故郷って森からどれくらい離れてるの?」

「……んー、走って30分かからないくらい?」

「魔物の大群は森の方から来たんだよね?」

「……そう。 村の見張り番が押し寄せてくる魔物の大群を見つけて、慌てて村中で防衛の準備をしたけど、ノアル達だけじゃ対処出来ないと思って、近くの大きな街に早馬を走らせもした」

「防衛って、自警団とかがいるの?」

「……自警団というほどではではないけど、獣人は戦闘スキルを持っている人が多いから、子供とかお年寄り以外はほとんどみんな戦える。 ノアルも手伝いとかよくしてた」

「助けは期待出来そう?」

「……来てくれると思う。 けど、早馬でも1日はかかるから、救援が到着するのは早くても4、5日かかる。 それまでに村が無事だといいんだけど……」

「それなら、急がないとね。 明日で必ず着けるよう、今のうちに進んでおこう」

「……ん!」


 ノアルが故郷から逃げて今に至るまで1週間程経っている。 

 なので、ノアルの故郷がどうなっているかは全く予想がつかない。

 歩きながらその他にも話を聞いたところ、ノアルは村の中だと戦闘能力は上の方だが、ノアルより戦闘能力の高い人も何人かいるそうだ。 

 ノアルも最初は一緒に戦っていたそうだが、戦況の悪さから戦えない人達と共に逃されたらしい。 

 だが、逃げている途中で魔物に見つかり、そいつらをノアルが囮になって引き付けて、そのまま魔物が出てきた方の森とは違う入り口から森に入って迎撃しながら逃げ回っていたそうだ。


(たった1人で誰かを守るために動く事はそうそう出来る事じゃない)


 だからこそ、命をかけてまで他人を助けようとするこの少女の力になりたいと思ったのだ。


(急がないとな。 向こうに着いたら、僕が出来る事ならなんだってしよう)



     *



「お、このスペースいいんじゃないかな?」

「……いいと思う」


 あれから6時間程歩を進め、日が落ちてきたため休む場所を探していたところだったのだが、いい場所を見つけた。

 そこでまず匠真は結界石を作ることから始めた。

 アイテムボックスから、鉄鉱石を取り出して、鍛冶師のスキルで形を変える。 イメージする形は正三角錐だ。 これなら固定する台座とかが無くても大丈夫だろう。

 認識阻害の付与は付けるとして、あと一個なにを付与しようと付与可能な効果一覧を見ていると、良さげなものを見つけた。


『吸着』
 ↓
・魔力を流すと物体と物体の設置面をくっつけることができる。 流した魔力量によって、効果時間が変わる。


 これを付ければ何かが結界石に当たったり強風などが吹いても、転がったりせずに済むだろう。


 結界石を作って魔力を流すと、認識阻害の効果が発動し、辺りにモヤっとした魔力が広がっていった。

 中からだと効果がよく分からないので、ノアルを中に残して結界の外に出てみると、ノアルの姿は見えず、周りの風景との違和感も無かった。 

 一応、ノアルにも同じように確認してもらってちゃんと発動している事を確認したが、大丈夫そうだった。

 結界石の準備が出来たので、次に絨毯を広げ、食事の準備をしていく。

 ここまで歩き通しだったので、匠真もノアルもかなり空腹だった。

 サンドイッチとクリームシチューの準備をした後、ここに来るまでにウルフを5匹、ゴブリンを10匹、爪熊を3匹にブラッドスネークと言われる蛇の魔物を5匹ほど倒した事で、手が少し汚れてしまった。 

 なので、しっかりと生活魔法で綺麗にしてから手をつけていく。


「……美味しそう。 食べていい?」

「もちろんいいよ! 僕もお腹空いたから、早速食べようか。 ……いただきます」

「……? ……いただきます?」

「あぁ、これは僕の故郷の食前での挨拶で、作ってくれた人とか動物とかの命を頂くことに感謝しますって意味なんだ」

「……ん、じゃあノアルも。 いただきます」


 ノアルも匠真の真似をして、顔の前で両手を合わせていただきますをした。

 まずは、クリームシチューから口をつける。 


(うん、アイテムボックスから出したから、出来たてで美味しいな。 本当に便利な魔法だ……)


「……あったかいし、美味しい」

「お気に召したかな?」

「……ん! とても美味しい」


 ノアルはクリームシチューとサンドイッチに関しては味見せずに「……楽しみにしとく」と言っていたので、食べるのは初めてである。


(口にあったようで良かったなー)


「それにしても、魔物肉の旨味はすごいねぇ…… 本当はもう少し調味料入れるんだけど、これなら全然いらないや」

「……お肉美味しい」


 はぐはぐとレッドウルフの肉を食べながらノアルもそう言ってくる。


「サンドイッチはどうかな?」


 匠真はサンドイッチが載ったお皿から照り焼きサンドを取って一口食べてみた。


「うん、これはこれで美味しい」


 みりんが無かったので照り焼きもどきだが、これはこれでいい味を出している。


「……! 美味しい……!」


(お、ノアルが食べたのは生姜焼きサンドだな。 それ、僕も好きなんだよねー。 ご飯にも合って、パンにも合うって最強だと思う)


 その後も匠真達は、自分達で作った食事を心置きなく堪能して、とても満足感を得ることが出来た。


「ふぅー、お腹いっぱい。 ごちそうさまでした」

「……ごちそうさま。 ショーマありがとう、とても美味しかった」

「ノアルも手伝ったんだから、僕だけの力じゃないよ? だから、ノアルもありがとう。 美味しかったよ」

「……ん!」


 食事をしていたら辺りはいつの間にか暗くなってきたので、光魔法の基本であるライトの魔法を使う。

 空中にふよふよと光の球を浮かばせ、それが、眩しすぎないように魔力を調節した。

 この魔法もウィンドと一緒で基本の魔法だが、使い方によっては目眩しなどに使えるので、非常に便利な魔法だ。


(さて、光源も準備出来たし、寝るまでに一作業しようかな)


「これから僕は色々と作業するんだけど、ノアルはどうする? 寝ててもいいよ?」

「……ん、じゃあ、先に少し寝ておく。 作業が終わったら、交代」

「分かったよ。 はい、これ寝袋ね」

「……ありがと」


 ノアルはいそいそと寝袋に入り、絨毯の上に仰向けで寝そべる。 位置的には僕のすぐ横である。


「そんな近くて大丈夫? 結構色んな音するから寝にくいかもよ?」

「……まだあんまり眠くないから、ショーマの作業少し見とく」

「そっか、眠くなったらいつでも寝ていいからね?」

「……ん」


 匠真は新しい武器を作るために、浮空石と鉄鉱石、更に魔石をアイテムボックスから取り出し、作業を始めていった。



     *



 その後、匠真は新しい武器に魔法付与を施したりその武器の試運転を繰り返し、その武器を使うために必要なスキルをスキルポイントを使って取ったりと、かなり充実したものになった。

 いつの間にか寝ていたノアルが夜中に起きた時に、「……交代」と言われても、「もう少し!」と言って中々寝ようとしなかったので、終いにはノアルに少し怒られてしまった。


「……ちゃんと休まないとダメ」

「ごめん、ちょっと楽しくて夢中になっちゃった」

「……早く寝て」

「……はーい」


 いつものジト目気味でちょっと眠たげな目を更に細め、これ以上ないほどのジト目にして、ノアルはそう匠真に言ってきた。

 何故か分からないが、あの目で言葉を言われると逆らえる気がしなかった。
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みんなの感想(7件)

チャチャ
2022.12.20 チャチャ

面白いですね!!
あっという間に読んでしまいました!
続きを楽しみにしてます!

カムラ
2022.12.20 カムラ

感想ありがとうございます!
更新頑張りますね!

解除
星影すばる
2022.12.19 星影すばる

#3まで読んだけど、以前に読んだことがありますね。これ。
書き直しか何かですか?

カムラ
2022.12.19 カムラ

感想ありがとうございます!
よく覚えてましたね!
一応処女作のリメイクになってます!
かなり言い回しや文体、設定などが変わってるので割と別物にはなってますが!

解除
狐猫
2022.12.18 狐猫

にゃんこあるある腹に乗ってくる

カムラ
2022.12.19 カムラ

感想ありがとうございます!
あるあるですね笑

解除
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