側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。

gacchi(がっち)

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17.理解できない

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授業が終わり、三人で学生会室へと向かう。
エラルドはまだ来ていなかった。
鍵を開けて中に入ると、エルネスト様がアルフレード様に注意をする。

「いいか?できるかぎり出てくるんじゃないぞ?」

「なんでだよ」

「アルが出てきたらしゃべらなくなるかもしれないだろう。
 何を話すつもりなのかはわからないが、これが最後の機会なんだ。
 あいつの言いたいことを言わせてやろう」

「わかったよ。油断させろってことだろう」

「そうだ」

納得したのか、アルフレード様は奥の休憩室へと隠れる。
私とエルネスト様はソファに座ってエラルドが来るのを待った。

それほど時間をおかずにドアがノックされる。
返事をするとエラルドと令嬢たちが中に入ってきた。
警告したのにも関わらず一緒に来るとは。
予想通りの展開に思わず笑いそうになるのを抑えた。

「エラルド、そこに座って」

「え。ああ」

エルネスト様がいると思わなかったからだろう。
エラルドはぎこちなく返事をすると向かい側のソファに座る。
その隣にはジャンナ様が座り、エルマ様とラーラ様は後ろに立つようだ。

「それで、話って何かしら」

「その前に……どうしてエルネスト様がいるんだ?」

その質問には私ではなく、エルネスト様が答える。

「どうしてって、立会人だよ」

「立会人?」

「ああ。貴族が家同士のことを話す時は立会人をつけるのが普通だろう。
 俺のことは気にしないで話し合ってくれ。
 ただし、何か問題があれば止めさせてもらうから」

「エルネスト様はディアナの味方なんでしょう?」

もしかして、以前何か言われたことでもあるのかな。
エラルドはエルネスト様を警戒している。

「侯爵家同士の話し合いの立会はそれ以上の家格の者じゃないとできない。
 俺以外で立ち会うとなるとアルフレードしかいないが、
 王族を立会させると大ごとになるぞ。それでもいいのか?」

「え?そうなんだ……じゃあ、わかったよ」

「それに、ディアナ嬢の味方だって言うけどな、
 そっちは四人で来ていて、ディアナ嬢は一人で来いっていうのか?」

「そんなことはないけど……」

「じゃあ、問題ないだろう」

私一人だけと話せば何か違う結果になると思っていたのかな。
エルネスト様がいてくれるのは心強いけど、
それで話し合いの結果が変わるようなことはないんだけど。

「それで、エラルド。話ってなに?」

「あ、ああ。やっぱりこの三人をカファロ領に連れて行こうと思うんだ」

やっぱりそうか。
令嬢のことを話したいというのは、そうじゃないかとは思っていた。
警告した時、四人とも納得できないという顔をしていた。

問題は令嬢たちを連れていきたいという理由だ。
ここでなんとか恋愛感情があると言わせて、エラルドの過失にしたい。

「エラルドに側近はいらないって言ったわよね?」

「それは聞いたよ。だけど、ずるいじゃないか」

「ずるい?」

「ディアナは幼馴染を側近にしているだろう。
 それにジョイとルーイは男性じゃないか。
 ディアナには許されて、どうして僕の幼馴染はそばに置いちゃダメなんだ」

「は?」

ジョイとルーイが幼馴染?
そんなこと考えたこともなかった。

「ジョイとルーイは幼馴染じゃないわよ」

「うそだ。小さいころから一緒にいたって」

「そりゃそうよ。ジョイとルーイはうちの分家だもの。
 カファロ侯爵家に仕えるために幼いころから教育されているのよ」

「それって、幼馴染と何が違うんだ?
 結局はディアナに男の側近がついていることに変わらないじゃないか」

生まれてからずっと主従関係にあるのを幼馴染というだろうか。
遊んでもらったとは思うし、勉強も教えてもらった。
だけど、今も私の側近であって対等な関係ではない。
説明しても理解させるのは難しそうなエラルドに、ため息をつきたくなる。

「あのね。ジョイとルーイは私の婿に仕えるはずだったのよ。
 あの時まではエラルドに仕える予定だった。
 エラルドが領主の勉強から逃げたから、私の側近になったんじゃない。
 エラルドが侯爵になっていれば側近が男性でも問題なかったのよ」

「え……え?僕のせいなの?」

「側近の話はもういいわ。エラルドは仕事をしないんだから。
 どうして令嬢たちを連れていきたいのか、その理由を言って」

私が聞きたいのはどうして令嬢たちと離れたくないのか、それだけ。
そこに特別な感情があれば過失にできるかもしれない。
エラルドは令嬢たちと見つめあってうなずいた。

「この三人がいたから、僕は今まで頑張れたんだ。
 もしいなくなってしまったら、どうしていいかわからない」

「その三人のことが大事なのはわかるけど、
 幼馴染だっていう理由で連れていくわけにはいかないわ」

「あの後みんなで考えたんだ。
 ディアナがこの三人を側近だって認めてくれないなら、
 この三人は僕の愛人にして連れて行こうと思って」

「………あいじん?」

期待以上の言葉が返ってきて、ぽかんとしてしまう。
え?今、愛人って言った?
男女の仲じゃないってはっきり言ってたはずよね?

私が止まってしまったからか、エルネスト様が口をはさむ。

「エラルド、お前、愛人って何のことかわかって言ってるのか?」

「わかってるよ。妻のかわりに子どもを作る人でしょう?」

「わかっていて、この三人を愛人にすると?」

「そうだよ。ね?みんな?」

エラルドは満面の笑みで令嬢たちに尋ねる。
令嬢たちもうれしそうに笑ってうなずいた。

え……うれしいけど、本当に?
エルネスト様を見ると、エルネスト様も動揺している。
だが、小声で「否定せずに話を聞こう」とささやかれた。

「三人もエラルドの愛人になるつもりだってこと?」

「ええ。エラルドと離れたくないもの」

「私だって、エラルド様のそばにずっといたいですから」

「私たちはエラルドのそばにいるためなら愛人でもかまわないわ」

「そうなの……」

これで婚約解消できるだろうか。
ほかに何を聞けばエラルドの過失にできる?
悩んでいると、エルネスト様がエラルドに問いかけた。

「エラルドはどうして三人を愛人にしようと思ったんだ?」

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