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20.間に合った
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エラルドとの婚約解消が受理されたと三日後に連絡がきた。
心配してくれたアルフレード様とエルネスト様に報告すると、
自分のことのように喜んでくれた。
「よかったな」
「ありがとうございます」
「なぁ、ディアナ嬢は卒業したらすぐに領地に帰ってしまうのか?」
「そうですね。一週間ほどは王都の屋敷に滞在しますが、
その後カファロ領に帰る予定です」
「そっか。じゃあ、卒業したら会えるのは当分先になるな」
お祖父様とお祖母様がさみしがるので、一週間は残ることにした。
領地に帰ってしまえば、会うのは社交シーズンだけになる。
卒業まで残り十日ほど。
三人でいられる貴重な時間だけど、じわじわと時は進んでいく。
何かしてくるかもと心配していたエラルドだが、
婚約解消した後で手紙が届いた。
父上を説得してくれただろうかと書かれた手紙に脱力しそうになった。
そして、おそらくブリアヌ侯爵に知られたせいだろう、
御者が代わり、侍従がつけられたせいで寄り道ができなくなった、
三人とゆっくり会う時間がとれなくなった、
どういうことだろうか、と書かれていた。
これ以上事態が悪くならないために、
令嬢たちと学外で会えないようにしたらしい。
手紙にはジャンナ様が身ごもったと思っていたが違った、
だけどすぐに三人のうち誰かが身ごもると思うから待っていて。
そう書かれていたのを読んで、
少なくとも子どものことを心配せずにすんだとほっとした。
あとは卒業した後で何かしらの対応がされるだろう。
事後報告でいいと言っておいたから、
それを知るのは私が領地に帰った後になるに違いない。
卒業の前の日、卒業式の打ち合わせが終わった後、
エルネスト様が学生会室に来てほしいという。
「何かあったのですか?」
「うん。話があるんだ」
「話、ですか?」
理由はわからないけれど、ご機嫌なエルネスト様に連れられ、
私とアルフレード様は学生会室へと向かう。
もう学生会の後輩たちも帰った後で、誰もいない。
三人分のお茶を入れ、二人と自分の前へと置く。
エルネスト様はおいしそうにお茶を飲むと、
私とアルフレード様の前に書類を置いた。
「いやぁ、時間がなくて大変だったけど、がんばったよ」
「何がだ?」
「大変、って」
意味がわからなくて、私とアルフレード様は顔を見合わせる。
とりあえず渡された書類を読むと、陛下の承認がされている。
「おい……エルネスト、お前!」
「え?……これ」
見たものが信じられなくて、エルネスト様を見つめる。
私たち二人の視線を受け、エルネスト様がにかっと笑った。
「どうだ。ほめてくれていいんだぞ。
アルの婚約者候補としてディアナ嬢を認めさせた」
「……どうやって」
「だってさ、法に規定されていなんだ。
領主同士が結婚しちゃいけないなんて。
だから、国王をはじめとする貴族たちが認めれば問題ないだろうって」
「法に規定されていない……」
「それはそうだが……」
言われてみればそうだ。
もともと、女性が爵位を継ぐのはめずらしい。
だから、国法には当主同士の結婚の規定はない。
そんなものは想定されていないからだ。
だが、想定されていないということは、
認められたこともないということ。
だから、無理だとあきらめていたのに。
「宰相の力を借りた」
「え?」
「ディアナ嬢に、俺たちに借りがあるだろう?
あの件が公になっていたら、当然宰相は失脚、
宰相の息子たちも責任をとって文官をやめることになっていたはずだ」
「お前、もしかして宰相を脅したのか?」
「脅さなくても快く協力してくれたよ。
ディアナ嬢に悪いことをしたと思っていたらしい」
「ブリアヌ侯爵が……」
困ったことがあれば相談してほしいというのは本気だったんだ。
「宰相だけじゃない。国王と王妃、王太子夫妻と第二王子夫妻、
うちの両親とディアナ嬢の父上。みんなが協力してくれた」
「兄上たちまで?」
「二人とも怒ってたぞ。
俺たちだってちゃんと好きになれる相手を選んで結婚したんだ、
お前だけ王族としての責任とか言って犠牲になる気か、と」
「……そんなつもりは」
「あっただろう。二人とも責任だとか義務だとか考えすぎだ。
一生を貴族として生きるのはいいが、一度くらいわがまま言ってもいいんだ。
好きな相手と添い遂げたいとあがいてみたらどうだ」
わがまま……言ってもいいんだろうか。
認めてもらえるというのなら、一緒にいたいと言っても……いいの?
「というわけで、アルフレードとディアナ嬢が結婚するのに問題はなくなった。
あとは、どうしたいのか自分たちで考えてよ」
「エルネスト……」
「あ。俺、教室に忘れ物したわ。ちょっと取ってくる」
「え?」
エルネスト様はそう言うと、にっこり笑って学生会室から出て行った。
後には私とアルフレード様が残される。
……えっと、どうしたらいいの?
戸惑っていたら、アルフレード様は立ち上がり、私の隣へと座る。
ソファが重みで傾いて、身体がふれてしまう。
こんな近くにいるのはダンスの授業の時以来。
アルフレード様はいつでも距離を取って、
私に不名誉な噂が出ないようにしてくれていた。
それなのに、今、こうして隣に座って、ふれた身体をそのままにしている。
恥ずかしくて座りなおそうとしたら、そのままでと言われ、
アルフレード様の大きな手が私の手に重なる。
「あ、あの」
心配してくれたアルフレード様とエルネスト様に報告すると、
自分のことのように喜んでくれた。
「よかったな」
「ありがとうございます」
「なぁ、ディアナ嬢は卒業したらすぐに領地に帰ってしまうのか?」
「そうですね。一週間ほどは王都の屋敷に滞在しますが、
その後カファロ領に帰る予定です」
「そっか。じゃあ、卒業したら会えるのは当分先になるな」
お祖父様とお祖母様がさみしがるので、一週間は残ることにした。
領地に帰ってしまえば、会うのは社交シーズンだけになる。
卒業まで残り十日ほど。
三人でいられる貴重な時間だけど、じわじわと時は進んでいく。
何かしてくるかもと心配していたエラルドだが、
婚約解消した後で手紙が届いた。
父上を説得してくれただろうかと書かれた手紙に脱力しそうになった。
そして、おそらくブリアヌ侯爵に知られたせいだろう、
御者が代わり、侍従がつけられたせいで寄り道ができなくなった、
三人とゆっくり会う時間がとれなくなった、
どういうことだろうか、と書かれていた。
これ以上事態が悪くならないために、
令嬢たちと学外で会えないようにしたらしい。
手紙にはジャンナ様が身ごもったと思っていたが違った、
だけどすぐに三人のうち誰かが身ごもると思うから待っていて。
そう書かれていたのを読んで、
少なくとも子どものことを心配せずにすんだとほっとした。
あとは卒業した後で何かしらの対応がされるだろう。
事後報告でいいと言っておいたから、
それを知るのは私が領地に帰った後になるに違いない。
卒業の前の日、卒業式の打ち合わせが終わった後、
エルネスト様が学生会室に来てほしいという。
「何かあったのですか?」
「うん。話があるんだ」
「話、ですか?」
理由はわからないけれど、ご機嫌なエルネスト様に連れられ、
私とアルフレード様は学生会室へと向かう。
もう学生会の後輩たちも帰った後で、誰もいない。
三人分のお茶を入れ、二人と自分の前へと置く。
エルネスト様はおいしそうにお茶を飲むと、
私とアルフレード様の前に書類を置いた。
「いやぁ、時間がなくて大変だったけど、がんばったよ」
「何がだ?」
「大変、って」
意味がわからなくて、私とアルフレード様は顔を見合わせる。
とりあえず渡された書類を読むと、陛下の承認がされている。
「おい……エルネスト、お前!」
「え?……これ」
見たものが信じられなくて、エルネスト様を見つめる。
私たち二人の視線を受け、エルネスト様がにかっと笑った。
「どうだ。ほめてくれていいんだぞ。
アルの婚約者候補としてディアナ嬢を認めさせた」
「……どうやって」
「だってさ、法に規定されていなんだ。
領主同士が結婚しちゃいけないなんて。
だから、国王をはじめとする貴族たちが認めれば問題ないだろうって」
「法に規定されていない……」
「それはそうだが……」
言われてみればそうだ。
もともと、女性が爵位を継ぐのはめずらしい。
だから、国法には当主同士の結婚の規定はない。
そんなものは想定されていないからだ。
だが、想定されていないということは、
認められたこともないということ。
だから、無理だとあきらめていたのに。
「宰相の力を借りた」
「え?」
「ディアナ嬢に、俺たちに借りがあるだろう?
あの件が公になっていたら、当然宰相は失脚、
宰相の息子たちも責任をとって文官をやめることになっていたはずだ」
「お前、もしかして宰相を脅したのか?」
「脅さなくても快く協力してくれたよ。
ディアナ嬢に悪いことをしたと思っていたらしい」
「ブリアヌ侯爵が……」
困ったことがあれば相談してほしいというのは本気だったんだ。
「宰相だけじゃない。国王と王妃、王太子夫妻と第二王子夫妻、
うちの両親とディアナ嬢の父上。みんなが協力してくれた」
「兄上たちまで?」
「二人とも怒ってたぞ。
俺たちだってちゃんと好きになれる相手を選んで結婚したんだ、
お前だけ王族としての責任とか言って犠牲になる気か、と」
「……そんなつもりは」
「あっただろう。二人とも責任だとか義務だとか考えすぎだ。
一生を貴族として生きるのはいいが、一度くらいわがまま言ってもいいんだ。
好きな相手と添い遂げたいとあがいてみたらどうだ」
わがまま……言ってもいいんだろうか。
認めてもらえるというのなら、一緒にいたいと言っても……いいの?
「というわけで、アルフレードとディアナ嬢が結婚するのに問題はなくなった。
あとは、どうしたいのか自分たちで考えてよ」
「エルネスト……」
「あ。俺、教室に忘れ物したわ。ちょっと取ってくる」
「え?」
エルネスト様はそう言うと、にっこり笑って学生会室から出て行った。
後には私とアルフレード様が残される。
……えっと、どうしたらいいの?
戸惑っていたら、アルフレード様は立ち上がり、私の隣へと座る。
ソファが重みで傾いて、身体がふれてしまう。
こんな近くにいるのはダンスの授業の時以来。
アルフレード様はいつでも距離を取って、
私に不名誉な噂が出ないようにしてくれていた。
それなのに、今、こうして隣に座って、ふれた身体をそのままにしている。
恥ずかしくて座りなおそうとしたら、そのままでと言われ、
アルフレード様の大きな手が私の手に重なる。
「あ、あの」
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