初夜で殺して来いと命じられましたが、好きになるなんて想定外です

gacchi(がっち)

文字の大きさ
16 / 29

16.対決

それから二時間後の竜帝国の応接室。
私とレオナは部屋の奥ににある隠し部屋にいた。

ここは何かの時に王族が隠れる場所らしいが、
帝王の許可を得て特別に入ることが許された。

壁際に置かれている本棚が引き戸になっていて、
奥の隠し部屋に入ることができる。
ここからは壁にかかっている鏡が、
透明の窓のようになっていて応接室が見える。
声は少し聞き取りにくいが、聞こえないほどではない。

帝王とイザークが並んでソファに座り待っていると、
ようやく待っていた相手が現れる。

入ってきたのは金髪をゆるく巻いた女性とカロリーヌ王女だ。
カロリーヌ王女よりも頭半分ほど背の高い女性は側妃だろう。
目の色は緑……カロリーヌ王女の琥珀色の目は誰に似たのだろう。
側妃はアレッサンド国の侯爵家出身だったはず。

「お待たせしてしまったかしら」

「挨拶はいい、早く座れ」

話が終わるまでは冷静に話すつもりだったようだが、
帝王はいら立ちを隠しきれなかったようだ。


側妃は帝王に急かされても慌てることなく、ゆっくりと向かい側のソファに座る。
その隣にはうれしそうな顔で少し落ち着きのないカロリーヌ王女。
これからの話し合いが自分にとって、
いいことだと信じているのかもしれない。

「さて、さきほど側妃とは話をしたのだがな。
 イザークから直接言われたほうがいいだろうと思ってカロリーヌを呼んだ」

「イザーク様から?何かしら?」

にっこりとイザークに笑いかけた王女だったが、
イザークが無表情なのを見て首をかしげている。

「先日申し込まれた婚約だが、断らせてもらった」

「え?」

「つい先日、別の女性と婚約した。時期を見て結婚を公表する。
 カロリーヌ王女には別な令息を…」

「ちょっと待って!」

王女はイザークに断られていることに気がついて話を止めた。
それに慌てたように口をはさんだのは側妃だった。

「ねぇ、イザーク様。さきほどお断りされましたけれど、
 やはり考え直してもらえませんの?」

「考え直す?なぜ」

「ほら……番だというのは間違いかもしれませんし、
 公爵家にふさわしい女性なのかどうか、
 ちゃんと見極めたほうがいいのでは?」

これには帝王とイザークは目を合わせてため息をついた。

「カサンドル、お前は人族だからわからないのだろうが、
 番というのは間違えるものではないのだ。
 娘の婚約の申し出を断られたくないのはわかるが、
 それは難癖というものだ」

「ですが、お父様!あのような者はイザーク兄様にはふさわしくないわ!」

「あのような者?カロリーヌ、お前はいつイザークの番に会ったのだ?」

「……会ってないわ。でも、平民の旅人だと聞いたわ。
 そんな下賤なものと結婚するなんてありえないもの!」

その言葉に、大きくため息をついたのは帝王だった。

「下賤か。竜人にはそんなものは関係ないのだ。
 番と王女、どちらを優先するかと聞かれたら全員が番だと答える」

「そんなの嘘よ!」

「お前は竜帝国に生まれたというのに、
 まったく竜族のことを理解できていないのだな」

「……」

呆れたように言われ、王女は悔しそうに顔をゆがめた。
助けを求めるようにイザークの方を見たが、イザークは無表情なままだ。
目の前の側妃にも王女にも関心がないように見える。

だが、私にはわかる。今すぐにでも殴り倒したいのを我慢している顔だ。
最後まで話を聞きたいから、怒るのは後でにしてねとお願いしてあった。

「ですが、もう一度ふさわしいかどうか確認するくらいいいではありませんか?
 そうすればカロリーヌも納得すると思いますし」

「どうやってふさわしいか確認するのだ?」

「会わせてもらえるだけで良いですわ」

「先ほどは顔も見たくないと言ったのにか?」

「娘のためになら嫌でも会うくらいはいたしますわよ?」

優し気に王女を見る側妃。母親としての愛情はあるのだろう。
それが歪んだものであったとしても。

「わかった。会わせたら納得するのだな?
 イザーク、番をこの部屋に連れて来てくれるか?」

「わかりました」

イザークは一度応接室を出て、裏側から隠し部屋へと入ってくる。
私へと近づくと、小声で確認してくる。

「あいつらに会って大丈夫か?」

「平気よ」

「よし、じゃあ行くか。レオナも来てくれ」

「ええ」

イザークに抱き上げられ応接室へと移動する。
その後ろをレオナがついてくる。
ダニーとデニーは意識を取り戻したが竜帝国の医師に治療を受けている。
これは竜酔香が本当に使われたかの確認のためでもあった。

応接室に入ると、側妃と王女が目を見開いて驚いたのがわかった。
イザークはそのままソファへと座り、私をひざの上に座らせる。
レオナはソファの後ろへと控えた。

「イザークの番のラディアだ。これで文句はないな?」

あなたにおすすめの小説

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。