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2章 旅の始まり
13.話し合いにならない
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小さな部屋の中に転移させられたリリーは、まず人の気配が無いか確認した。
周囲にはいなそうだが、部屋の外には何人かいそうだった。
下手に出ていくよりは、ここで待っていた方が良さそうだ。
そのほうが言い逃れができないだろう。
半刻ほど待っただろうか。
部屋のドアが開いたと思ったら、数人が中に入ってきた。
その先頭にいた人物を見て、脱力してしまう。
「…エヴァンだったかしら?」
ロードンナ国の魔術師が犯人だとは思っていたが、
それがエヴァンだとは思っていなかった。
まさか、そこまで愚かではないと思っていたのだが…。
予想を裏切る愚かさに、一瞬迷ってしまう。
ロードンナ国がこんな状態だとは…ジョエル大丈夫なんだろうか。
「リリーアンヌ様、お目覚めでしたか。
無理に転移させてしまったので、意識を失っているかと思っていましたが、
さすがリリーアンヌ様ですね。耐性がおありでしたか。」
「まず、どうして私を転移させたのかしら?答えてくれる?」
当たり前の質問だと思うのに、エヴァンは心底疑問だという顔をする。
「この国はリリーアンヌ様の居場所ではありません。
正しい場所へお連れするために転移したのです。」
「正しい場所?」
「はい。ロードンナ国の正妃、という居場所です。
あなたは王弟妃などという何の役にも立たない地位にいていいはずがない。
正妃となって、初めて本当の価値がわかるのです。
ここ2年程は正妃となられたのかと思って安心しておりましたのに、
正妃代理だっただけなどと…
どこまでリリーアンヌ様を馬鹿にする気なのか。」
2年の正妃代理は、ただの代理だ。
なのに、周りには代理だと思われていなかった。
おそらく、レオを国王に、私を正妃にしたい貴族たちが、
あえてそういう噂を流したのだろう。
そしてその数が多かったからこそ、それが真実だと思われてしまっていた。
だけど、他国でそのことをこんな風に考えているものがいるとは…。
「私は正妃でいたいなど、一度も思ったことは無いわ。」
「リリーアンヌ様が思うか思わないかではないのです。
正しいか、正しくないか、の違いなのですよ。」
もうエヴァンが何を言いたいのか、まったく理解できない。
どうして私のことなのに、私の意思は必要とされないのだろう。
こうした貴族的な考えが大嫌いだからこそ、
正妃などという立場を望まないというのに。
「あなたは正妃になるべく生まれたお方だ。
それを正妃にしないなどと…ありえません。」
「エヴァン、あなたの意見はそうであっても、私は正妃にならないわ。
ここから帰らせてもらうわね。」
もう話にならないし、これ以上付き合っていても仕方ない。
犯人もわかったことだし、帰ってレオとジョエルに何とかしてもらおう。
すると、エヴァンは後ろにいた者たちに合図を出した。
2人が部屋の外に出ていく。何をする気なのだろう。
「リリーアンヌ様が帰られると困るのですよ。
ですから、自発的にここに残られるようにしましょう。」
「…何をする気なの?」
「簡単です。
リリーアンヌ様がおとなしくロードンナ国に一緒に行くと言うまで、
あの獣を外に放ちます。」
「え?」
周囲にはいなそうだが、部屋の外には何人かいそうだった。
下手に出ていくよりは、ここで待っていた方が良さそうだ。
そのほうが言い逃れができないだろう。
半刻ほど待っただろうか。
部屋のドアが開いたと思ったら、数人が中に入ってきた。
その先頭にいた人物を見て、脱力してしまう。
「…エヴァンだったかしら?」
ロードンナ国の魔術師が犯人だとは思っていたが、
それがエヴァンだとは思っていなかった。
まさか、そこまで愚かではないと思っていたのだが…。
予想を裏切る愚かさに、一瞬迷ってしまう。
ロードンナ国がこんな状態だとは…ジョエル大丈夫なんだろうか。
「リリーアンヌ様、お目覚めでしたか。
無理に転移させてしまったので、意識を失っているかと思っていましたが、
さすがリリーアンヌ様ですね。耐性がおありでしたか。」
「まず、どうして私を転移させたのかしら?答えてくれる?」
当たり前の質問だと思うのに、エヴァンは心底疑問だという顔をする。
「この国はリリーアンヌ様の居場所ではありません。
正しい場所へお連れするために転移したのです。」
「正しい場所?」
「はい。ロードンナ国の正妃、という居場所です。
あなたは王弟妃などという何の役にも立たない地位にいていいはずがない。
正妃となって、初めて本当の価値がわかるのです。
ここ2年程は正妃となられたのかと思って安心しておりましたのに、
正妃代理だっただけなどと…
どこまでリリーアンヌ様を馬鹿にする気なのか。」
2年の正妃代理は、ただの代理だ。
なのに、周りには代理だと思われていなかった。
おそらく、レオを国王に、私を正妃にしたい貴族たちが、
あえてそういう噂を流したのだろう。
そしてその数が多かったからこそ、それが真実だと思われてしまっていた。
だけど、他国でそのことをこんな風に考えているものがいるとは…。
「私は正妃でいたいなど、一度も思ったことは無いわ。」
「リリーアンヌ様が思うか思わないかではないのです。
正しいか、正しくないか、の違いなのですよ。」
もうエヴァンが何を言いたいのか、まったく理解できない。
どうして私のことなのに、私の意思は必要とされないのだろう。
こうした貴族的な考えが大嫌いだからこそ、
正妃などという立場を望まないというのに。
「あなたは正妃になるべく生まれたお方だ。
それを正妃にしないなどと…ありえません。」
「エヴァン、あなたの意見はそうであっても、私は正妃にならないわ。
ここから帰らせてもらうわね。」
もう話にならないし、これ以上付き合っていても仕方ない。
犯人もわかったことだし、帰ってレオとジョエルに何とかしてもらおう。
すると、エヴァンは後ろにいた者たちに合図を出した。
2人が部屋の外に出ていく。何をする気なのだろう。
「リリーアンヌ様が帰られると困るのですよ。
ですから、自発的にここに残られるようにしましょう。」
「…何をする気なの?」
「簡単です。
リリーアンヌ様がおとなしくロードンナ国に一緒に行くと言うまで、
あの獣を外に放ちます。」
「え?」
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