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2章 次代へ
9.乱入
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「お父様!」
謁見室で隣国からの使者を出迎えた後、宰相と相談していた時だった。
許可もなく、エリーゼが突然入ってきた。
謁見室には侍従たちは入ってこれない。
扉が閉まる前、向こうでうろたえているのが見えた。
「なんだ、急に。用があるなら使いを出せ。」
「お父様、ジークハルトはどうして学園にいないのです。」
思わず宰相を見る。
渋い顔をしている。もう少しでエリーゼを怒鳴りつけそうな感じがする。
「エリーゼ、お前には関係ないだろう?」
「あります!私はジークハルトと結婚するのですから!」
「はぁぁぁぁ。無理だと言ってるだろう?」
「どうしてですか!」
「エリーゼ王女…いいかげんにしろ。」
あ、叔父上が怒った。
この忙しい中、エリーゼの我がままにつきあっていられないのだろう。
「私は真面目に…。」
「王女の真面目はなんだ?人の話を聞かないのか?
ジークは王女が嫌いなんだ。だから隣国に行った。何度も言ってるよな?」
「そんなことありません。」
「どうして否定できるんだ?」
「だって、ジークハルトは優しいから、
きっとアンジェリカ王女の我がままを聞いてあげてるんだわ。」
はぁぁ。ため息が重なる。どうしたらこんな性格に育つんだ。
「王女が何を言っても変わらん。
ジークが隣国に留学したのも、
アンジェリカ王女のそばにいるのも自分で決めたことだ。
俺や陛下が何かできることはないぞ。」
「じゃあ、私も留学します。」
「無理だ。王女には魔力が無い。
魔力が無ければ王女でも魔術師学校には入学できない。
マーガレット王妃もその理由で入学できなかったのだから。」
「…どうして、そんな意地悪言うの。
じゃあ、私に王位継承権が認められていないのはどうして?
今日ジョルノに馬鹿にされたのよ!」
そう来たか。ジョルノには厳しいことを言ってもいいと言ったが。
入学式早々、ぶつかったのか。
「それは俺が決めた。」
「お父様、どうして!」
「何度も言ったな?王女としてふさわしくなるように学べと。
お前は王女教育どころか、普通の令嬢教育さえもままならなかった。
そんなものに王位継承権など渡せるわけ無いだろう。」
「どうしてジョルノにはあるのに!」
「ジョルノは完璧だ。あいつは本当ならすぐにでも卒業できる。
お前を監視してもらうためだけに学園に通わせているんだ。
少しは申し訳なく思え。」
「監視なんていらないのに。」
「いいや、いる。お前、もうすでに問題起こしてきただろう。
他の学年の校舎に行ったと聞いた。
次にそれやったら、退学だそうだ。」
「なぜ?ちょっと聞きに行っただけじゃない。」
「それがわからないから、お前はダメなんだ。部屋に戻れ。
学園以外に外出することは禁ずる。
反省するまで外出禁止だ…いいな。」
うなずくことなく謁見室から逃げて行った。
これでは、本当に相談しなければならないかもしれない。
「宰相、あの件だが…進めてくれ。」
「…いいのか?」
「いい。多分、そうしなきゃいけなくなると思う。」
「わかった。」
娘のことが可愛くないわけがないと言い聞かせていた。
だけど、それも限界なのかもしれない。
俺は母上が嫌いだ。
俺を人形のように扱い、ミレーヌを虐げていた母上。
エリーゼを見るたびに母上を思い出してしまう。
母上とも最後まで話が通じることがなかった。
謁見室で隣国からの使者を出迎えた後、宰相と相談していた時だった。
許可もなく、エリーゼが突然入ってきた。
謁見室には侍従たちは入ってこれない。
扉が閉まる前、向こうでうろたえているのが見えた。
「なんだ、急に。用があるなら使いを出せ。」
「お父様、ジークハルトはどうして学園にいないのです。」
思わず宰相を見る。
渋い顔をしている。もう少しでエリーゼを怒鳴りつけそうな感じがする。
「エリーゼ、お前には関係ないだろう?」
「あります!私はジークハルトと結婚するのですから!」
「はぁぁぁぁ。無理だと言ってるだろう?」
「どうしてですか!」
「エリーゼ王女…いいかげんにしろ。」
あ、叔父上が怒った。
この忙しい中、エリーゼの我がままにつきあっていられないのだろう。
「私は真面目に…。」
「王女の真面目はなんだ?人の話を聞かないのか?
ジークは王女が嫌いなんだ。だから隣国に行った。何度も言ってるよな?」
「そんなことありません。」
「どうして否定できるんだ?」
「だって、ジークハルトは優しいから、
きっとアンジェリカ王女の我がままを聞いてあげてるんだわ。」
はぁぁ。ため息が重なる。どうしたらこんな性格に育つんだ。
「王女が何を言っても変わらん。
ジークが隣国に留学したのも、
アンジェリカ王女のそばにいるのも自分で決めたことだ。
俺や陛下が何かできることはないぞ。」
「じゃあ、私も留学します。」
「無理だ。王女には魔力が無い。
魔力が無ければ王女でも魔術師学校には入学できない。
マーガレット王妃もその理由で入学できなかったのだから。」
「…どうして、そんな意地悪言うの。
じゃあ、私に王位継承権が認められていないのはどうして?
今日ジョルノに馬鹿にされたのよ!」
そう来たか。ジョルノには厳しいことを言ってもいいと言ったが。
入学式早々、ぶつかったのか。
「それは俺が決めた。」
「お父様、どうして!」
「何度も言ったな?王女としてふさわしくなるように学べと。
お前は王女教育どころか、普通の令嬢教育さえもままならなかった。
そんなものに王位継承権など渡せるわけ無いだろう。」
「どうしてジョルノにはあるのに!」
「ジョルノは完璧だ。あいつは本当ならすぐにでも卒業できる。
お前を監視してもらうためだけに学園に通わせているんだ。
少しは申し訳なく思え。」
「監視なんていらないのに。」
「いいや、いる。お前、もうすでに問題起こしてきただろう。
他の学年の校舎に行ったと聞いた。
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「なぜ?ちょっと聞きに行っただけじゃない。」
「それがわからないから、お前はダメなんだ。部屋に戻れ。
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うなずくことなく謁見室から逃げて行った。
これでは、本当に相談しなければならないかもしれない。
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「…いいのか?」
「いい。多分、そうしなきゃいけなくなると思う。」
「わかった。」
娘のことが可愛くないわけがないと言い聞かせていた。
だけど、それも限界なのかもしれない。
俺は母上が嫌いだ。
俺を人形のように扱い、ミレーヌを虐げていた母上。
エリーゼを見るたびに母上を思い出してしまう。
母上とも最後まで話が通じることがなかった。
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