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33.確認して

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いつも通りに夜着に着替え、ノエルさんを待った。
夜着姿で部屋に入ってきたノエルさんは、まだ髪はそのままだ。
塔にほとんど人はいないと言っても、部屋にはヘレンさんがいた。
ヘレンさんはノエルさんが入ってくるのと交代で、
おやすみなさいと言って部屋から出て行った。

そうやって誰もいなくなった後、
髪をしばって上にあげてくれたノエルさんを鏡の前に連れていく。

「ねぇ、ノエルさん、自分の顔を鏡で見てくれる?」

「…見なきゃダメか?」

やっぱり、鏡を見ていないんだ。嫌なんだろうな。

「うん、見て。私を信じてくれるなら、見てくれないかな?」

どうしても、確認してもらわなければいけないことがある。
じっと目を見て、ノエルさんの返事を待つ。
小さなため息をついて、ノエルさんがわかったと言ってくれた。

少しだけかがむようにして、鏡の前に顔を出してのぞき込む。
そのまま、時間が止まったように、ノエルさんの動きが止まった。
それを、話しかけることもなく、ノエルさんが戻ってくるのを待った。



どのくらい時間がたっただろう。
ゆっくりと、ノエルさんがこちらに振り返った。
信じられないという表情で、口が開きっぱなしになっている。

「見たよね?ね?ノエルさん。
 私って、ちゃんと薬師だったでしょう?」

胸を張って、そう言った。
自分の顔は見れないけど、きっと満面の笑みだったと思う。
答えが来るよりも先に、ノエルさんに抱きしめられていた。
腕の中にぎゅうぎゅうに閉じ込められている。
たぶん、ノエルさんは泣いていると思うから、
このまま閉じ込められていよう。
泣き顔を見られるのは、やっぱり嫌だよね。
私はよく見られている気がするけど、ノエルさんは嫌がると思うから。
泣き止むまで、ここで待っていよう。




しばらくして離してくれたノエルさんの目はまだ濡れていたけど、
泣き顔というほどひどくは無かった。
傷口だったところは、少し皮膚の色が薄く見えるけど、もう傷には見えない。
綺麗な濃い青の瞳がまっすぐに私を見てくる。
通った鼻筋や、少しだけ骨ばってるあごの線、
大人の色気が感じられて、なんだか気持ちが落ち着かなくなる。
後ろに流すように結んでいる髪も、
もう紺というよりも濃い青色に近づいているように見えた。
魔獣の毒が薄れて、元のノエルさんに近づいているのだろう。

「ありがとう、ルーラ。治るなんて、思ってなかった。
 痛みがひいたとは思ってたんだ。でも、見る勇気なんて無かった。」

「…治ってきていたのは知ってたの。だって、毎日傷薬塗ってるんだし。
 でも、ちゃんと治ったって思うまで待つつもりだった。
 もっと早くに言えばよかったね。
 色が変わってるなんて、知らなかったから…。
 多分、このままいけば髪も目も元の青に戻ると思うよ。」

「…そうか。うれしいけど、複雑な気持ちもあるな。」

「複雑?」

「あぁ、なんでもない。ルーラは紺と青、どっちが良かった?」

「…?どっちって、どっちもいいよ?
 紺も青も綺麗だし、ノエルさんに変わりないし。」

そう答えると、また抱き上げらえれて、くるくると振り回されてしまった。
もう、これだけはやめてほしいって、後でちゃんと言わないと!


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