【R18】ユートピア

名乃坂

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本編(中編)

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彼女が男と家の中に入るのを見届けて、それから僕も帰宅した。

頭を落ち着けようとしても、さっき見た光景が忘れられない。

僕は思わず携帯を手に取る。

とにかく今日のことは、彼女に探らなければならない。
まずは、彼女と会う約束を取り付けよう。
彼女の口からはっきり聞くまでは、まだあいつが彼女の恋人だと確定したわけではない。冷静にならないと。

メッセージを打つ手は震えている。
冷静でいようと思えば思うほど、心がざわつく。


「どうせ今もあいつのことが好きなんだろ!」

父の言葉が頭に浮かぶ。
そうだ。あのおぞましい光景を見た時、たしか父はそんなことを言っていた。

でも何故今、その言葉が浮かぶのだろうか。
僕と父は全然違うのに。

僕はあんな最低な人間じゃない。
僕が彼女に向ける愛情はあんな身勝手で汚いものじゃない。


僕は……父とは違うよね……?




僕はいつも通り、彼女と会って会話をする。
話す内容は絵のことが中心だけど、出来るだけ自然に世間話に持って行く。
彼女はニコニコと最近楽しかったことを話している。
僕は彼女の話がひと段落ついたところで、彼女に聞いてみる。

「そういえば、君のスマホの待ち受け画面、最近ネックレスの写真に変わったよね。今までは君自身の絵だったのに。ねえ、その写真、何方の作品なのかな?どこかの個展で撮ったもののように見えるんだけど」

彼女は狼狽える。
彼女が恋人といるところを見かけてから、彼女の待ち受け画面の作品は、彼女の恋人が作ったものではないかと予想していたけれど、どうやら当たりのようだ。

「えっと……ゆ……友人の作品です……」
「……そうなんだ……。そのネックレス、素敵だよね。ねえ、何方の作品なのかな?男物とかもある?その方も支援しようかなって」
「あはは……。お気持ちはありがたいですけど、申し訳ないですから……」

彼女は明らかに彼について知られたくないようだ。
彼女はこんな時も分かりやすい。
彼女の表情が豊かで分かりやすいところが好きなはずなのに、今の僕にはそんな彼女の姿が辛い。
受け入れ難い推測が事実であると突きつけられていくようで。

「あはは。もしかして君に渡す金額が減るかもしれないって心配してる?大丈夫。もちろん、君に渡す金額は変わらないから」
「あ……ありがとうございます……」

茶化すように言っても、彼女はそのまま黙る。
どうやら僕に名前を教えてくれる気はないらしい。

「何で教えてくれないのかな?君の友人さんにとっても、悪い話ではないと思うんだけど」
「そうですね……」
「だから教えてよ」

彼女の顔をじっと見つめて問い続けると、彼女はぼそぼそとその友人とやらの名前を言う。
僕は彼女に「ありがとう」とだけ言って、それからスマホでそいつの名前を検索する。

検索画面には、その友人とやらの自撮りが載っている。
そいつは……この前彼女の家の前で見かけた男と同一人物のようだ。
この前は暗がりだったからよくは見えてなかったけど、髪型や背格好が一致している。
いかにも頭の悪そうな男だし、別に容姿が取り立てて優れているわけでもない。

何でこんな奴と……?
憎い。許せない。お前なんかが彼女と付き合うな。
こいつと付き合うくらいなら、僕でいいでしょ……?

黒い感情がどんどん湧いてくる。
でも今は彼女が隣にいる。
冷静にならないと。

必死に気持ちを落ち着けて、他の画像を見る。
陳腐なデザインのアクセサリーがいくつも並んだ画面に嫌気が差す。

ふと、指輪の写真に目が止まる。
その写真に写っている指は、どう見ても愛しい彼女の指だ。

「ねえ、このサンプル画像って君の手?」
「えっと……」
「友達だからサンプル用にモデルになってあげたんでしょ?爪の形とか指の長さとか肌の色とか、どう見ても君だよね」
「えっ……。……あっ……あはは……。バレましたか……?恥ずかしいから隠しておきたかったのに……」

歯切れの悪い答え方をする彼女にそのまま踏み込んだ質問をしていく。

「そういえば、今日はいつもより楽しそうだけど、最近何か良いことあった?」
「特にはないですけど……」
「そうなの?あんまり楽しそうだから、もしかしてあの日の後、誰か良い人でも出来たのかなって思ったよ」
「……あはは……。そんなすぐできるわけないじゃないですか……」

彼女は明らかに固まっている。
それでも僕はそれに気づかないフリをして続ける。

「でも良かった。実は男だけだと行きにくいところがあったんだけど……もし君に恋人が出来てたら、誘ったら悪いかなって悩んでたから。ねえ、良かったら今度一緒に遊びに行かない?」
「えっ……」

絵とは関係ないことで彼女と会う約束をするのは初めてだ。
そのせいか彼女は少し身構えている。

「ああ、もちろん、謝礼なら払うからさ。ちょっと待ってね」

僕が財布から札束を取り出すと、彼女はいっそう慌て出す。

「いやっ……こんな金額……」
「ごめん、足りないよね」

追加でさらにお金を足そうとする僕を、彼女は制止する。

「いや……絵を描いたわけでもないのに……こんな金額、いただけません……」
「いやいや。君の絵を描くための貴重な時間を奪うわけだから、これくらいは受け取ってもらわないと」
「わ……私なんかよりもっと適任な方が……」
「他の女性と行けってこと?あはは。僕は君以外の女性とは、ビジネス以外で大した関わりがないんだよね」
「そう……なんですか……?」
「もしかして、社長は全員、愛人を何人も囲ってるみたいな偏見でも持ってる?僕のこともそんな風に思ってるのかな?」
「いや……そういうわけじゃないんですけど……」

彼女はなかなか頷いてくれない。
僕は半ば彼女に押し付ける形で、お金を渡す。

「とにかく、謝礼は前払いで渡しておくから。行けそうだったら来てよ。行けない場合もそのお金は返さなくていいから」
「えっと……」
「そのお金で、さっき話してたお友達と美味しいものでも食べなよ。ね?」
「…………はい……。分かり……ました…………。こんなに……ありがとうございます……」

強引にお願いすると、彼女は困りつつもお金を受け取ってくれた。
あくまで行けそうだったらというニュアンスで伝えたけど、お金を受け取ってしまった以上、彼女はちゃんと来てくれるだろう。
そこらへんは律儀な子なんだ。
そこを利用させてもらったのは悪いけど、今から彼女とのデートが楽しみで仕方ない。
彼女はあんな甲斐性のなさそうな男とも一緒にいるんだから、彼女を支えてあげてる僕がこれくらいのことを望んだって、何もおかしくないよね?



計画通り、彼女とのデートは実現した。
デートと言っても、僕自身もデートだと伝えたわけではないし、彼女はそうは思ってはいないのかもしれないけど。
この前は不審な態度を取ってしまったから、彼女を怖がらせないように、いつもと変わらないように接してみる。
すると、彼女は最初は身構えていたけれど、だんだん落ち着いてきたのか、いつもと変わらないように微笑んでくれる。

彼女は僕と2人きりで遊ぶのが嫌じゃないんだろうか。
なら、もっとデートみたいなことがしたい。
思わずそんな欲が出てしまう。
彼女はあんな奴ともデートしてるんなら、彼女の画家としての生活を支えてあげている僕とも、デートの真似事くらいしてくれてもいいんじゃないかな。
僕にはその権利があるはずだ。

「あのさ……今日は手を繋いで歩いてもいい?」
「……えっ……?な……何でですか?」

彼女は驚いたような困ったような顔をする。
僕は彼女に構わず続ける。

「今日はそういう気分なんだ。何か寂しいから。お願い」
「…………」
「謝礼渡すからさ。いいでしょ?」
「えっ……?あっ……その……」

束になった万札を渡す。

「ね?」
「……は、はい……」

彼女はぎこちない動きで僕の手に指を絡める。
彼女の手は温かくて触り心地が良い。
ずっと触っていたくなる。
指先からもこんなにも愛らしさを発しているなんて、彼女は実は天使か何かなんだろうか。
愛しくて仕方がない。

緊張で手汗をかいていたらどうしよう?
彼女に触り方がいやらしいと思われていないかな?

情けないことに、そんな思春期の少年のような不安が湧いてくる。

彼女と手を繋いでいるという事実でいっぱいいっぱいで、それから何を見たのか、どこに行ったのか思い出せないくらいだった。



それから、何度も彼女とデートした。
彼女に対する要求は少しずつエスカレートしていって、その度に彼女は困った顔をしたものの、だんだん慣れてきたようだ。
彼女のそういう態度を見ていると、僕は彼女に受け入れてもらえているという安心を得る。

幸せだ。
何で今までこうやって彼女とデートをしてみなかったんだろう?
お金さえ払えば、彼女とこんなにも近づけて、こんなにも幸せになれるのに。

愛はお金で買える。
世の中の既婚男性の中には、年収と引き換えに心の支えとなる女性と結婚した人達だって多いじゃないか。
だから、僕が彼女をお金で買っても、それは普通の恋愛と大して変わらないよね?

それに、彼女は神聖な女神ではなく、結局はお金で動く程度には生身の人間なんだ。
彼女もお金さえ払えば恋人の真似事に応じてくれると気付いてから、何度か彼女に失望することもあった。
それでも嬉しさが勝った。
僕も所詮、生身の人間だから。
いくら美しい世界を希求していても、人並みにそういう欲求もある。
だから彼女もまた、生身の人間で良かったんだ。
手の届かない存在ではなく、彼女もまた、僕と同じところにいる存在で、僕達は近しい存在なんだ。
だから、僕だって彼女に生身の欲望を向けたっていいよね?

あれ……?
僕は彼女に無償の愛を与えるって、彼女に愛を返せと求めないって、そう思ってたんじゃなかったっけ……?

いや、僕はあくまでも純粋な好意から、僕とデートしてくれる彼女への感謝の気持ちをお金に換算していて、彼女もまた、自由意志で僕との関係を続けてくれているんだ。
だから僕は、彼女に自分の身勝手な欲をぶつけてなんかいない。
これは汚い欲望なんかではない。
好きだったらこれくらい当然だ。
大丈夫。大丈夫。僕は父とは違う。


最近、彼女の声を聴くだけでは物足りなくなって、地下室の壁に彼女の写真を貼るようになった。

僕は父と母のあの光景を見てしまってから、地下室がトラウマになっていた。
だから、それを克服するために、地下室は好きなものを詰め込んだ空間にしている。
最初の頃は好きな絵、好きな本があるだけの空間だったけど、彼女と出会ってからは、彼女の絵を飾るようになった。
そして今は、彼女自身の写真も飾っている。
1番お気に入りの写真は、彼女の笑顔の写真だ。

写真だけじゃなくて、この部屋に本物の彼女が居てくれたら、どれだけ幸せだろうか。

そうだ、彼女にここに住んでもらえばいいんだ。
彼女が居てくれたら、僕にとってこの地下室は楽園になる。


それから、将来的に彼女が住むことを前提として、地下室を改造した。
何となく、扉のロックは指紋認証式にした。

何でだろう……?
自由に扉を開けられると、彼女が居なくなる気がするから?
いや、違う。僕はそんなこと、考えていない。
だって、ここに住んでもらうのは、彼女と付き合ってからだから。
無理矢理ここに入れるわけじゃないんだから、彼女が逃げるなんてことはありえない。
これはただ、危ない奴が彼女に近付かないように、彼女を守っているだけだ。
彼女はちょっと抜けているところがあるから、扉の開閉の自由を彼女に委ねると、怪しい奴も招いてしまうかもしれない。
そう。だからこれは、彼女を心配する僕の善意の表れだ。
いくら家そのもののセキュリティが高くても、もしも彼女に何かあったらって心配なだけだ。
僕は心配性だから。ただ、それだけ。


それから数週間で準備は整った。
後は彼女に気持ちを伝えるだけだ。


「明日うちに来てくれないかな?」

ある日のデートの帰りに、彼女にそう告げると、彼女は不安そうな顔をする。

「西園寺さんの……おうちに……?」
「うん。僕の家の庭の絵を描いて欲しいんだ。頼めるかな……?」
「絵ですか……!?絵なら喜んで!」

彼女はさっきまでの不安そうな顔は嘘だったかのように、笑顔を浮かべる。

「絵なら」ってまるで僕とのデートが嫌だったみたいじゃないか……。

次の日、彼女は約束通り僕の家に来た。
彼女は僕の家の広さに感動しているようで、物珍しそうにあちらこちらを眺めている。

可愛い……。
目を輝かせる彼女を見ていると、こっちまで幸せな気持ちになる。
それに、彼女が自分の家に居るという事実に興奮する。

「せっかく来てくれたんだし、庭に行く前にケーキでも食べる?」
「いいんですか!?」
「もちろん。オススメのやつだから、期待してていいよ」
「ありがとうございます!」

ケーキを差し出すと、彼女は美味しそうにケーキを食べ始める。
口の端にクリームがついていて扇情的だ。
舐め取ってあげたいな。

「ねえ、キスしてもいい……?」

最近は彼女に踏み込んだお願いをしても断られなかったからか、ついそんな言葉が口を出てしまった。
彼女の隣に座って、彼女の肩を抱くと、肩から震えが伝わってくる。

「お金なら払うから……。僕、君のことが好きでたまらないんだ……。僕と付き合ってよ。欲しいものなら何でもあげるから……。今は気持ちがなくても、少しずつ僕のことを好きになってくれたらいいから……」

彼女の唇と触れそうになったところで、突然彼女にものすごい勢いで押しのけられる。

「やめてください!」

彼女の声は震えている。
そのまま彼女は半泣きで続ける。

「西園寺さん……最近何か変ですよ……」
「変……?どこが?」

彼女は僕からゆっくり距離を取りながら話し続ける。

「手を繋いだらお金あげるとか、デートしたらお金あげるとか、今日も絵のために呼んだのかと思ったら、変なこと言いますし……」

絵だけじゃなくて、彼女自身も好きだから、彼女自身にお金を払う。
それがそんなにいけないことなんだろうか。
どうせ他の男にも触れられているのなら、僕だって彼女に触れても良いはずだ。

「私達、画家とパトロンの関係ですよね……?私は絵を描いて、西園寺さんはそれを支援してくださるみたいな……。その……今の私達の関係はおかしいですよ……。絵じゃなくて、私自身を売っているような気持ちになります……。こんなの……間違ってます……」
「間違ってる?間違ってるのは君の方だよ」

もう1度、今度は強めに彼女の肩を掴む。

「何であんな男と付き合ってるの?僕が君のこと好きなの、気付いてたよね?気付いてたから、恋人がいることを僕に隠してたんでしょ?」
「えっ……何で……西園寺さんがそれを……?」

彼女は狼狽えている。
そうか。彼女からしたら、まさか僕が跡をつけていたなんて想像もつかないのだろう。

「僕が君のこと好きなの、利用できるとでも思ってたんじゃないの?だって君、僕のおかげで生活できてるし、僕のおかげで大好きな絵を描けてるんだもんね。僕に嫌われたら困るもんね。そうやって僕を勘違いさせるようなことをしてたくせに、僕のことを非難する資格が君にはあるの?」
「…………」
「何とか言いなよ」

彼女の顔を真っ直ぐ見つめて問い詰めると、彼女は静かに口を開く。

「あの……もうパトロン契約は無効にさせてください……。お願いします……。西園寺さん……怖いです……」

彼女は震えながらもはっきりとそう言った。
彼女は、どこまでも僕を拒絶する。

「そう……。僕と離れたいんだ……」

嫌だ。嫌だ。
彼女と離れたくない。
その一心から、僕の口からは醜い言葉が次々と出てくる。

「じゃあさ、今君が住んでる家からは出て行ってよ。僕は君の画家としての活動のためにあの家をあげただけで、君があんな男と愛し合うためにあげたわけじゃないんだけど」
「何で……それを……?」
「それから、僕があげた画材も今月分の生活費も全部返してよ。あと僕の力で開催決定した君の個展も君の都合でキャンセルってことにしようか」
「それは……」
「無理でしょ?感情に任せてあまりにも無計画なことを言っちゃダメだよ?」

彼女は僕がいるありがたみをもっと知るべきだ。
無自覚なんだよ。本当は僕がいなきゃ、画家を続けられてなんかいないくせに。

「君は僕がいないとダメなんだよ。これで分かってくれたかな?」

彼女は俯いている。

別に彼女にあげたものが惜しいわけでは全くないけど、ここまで言えば流石に彼女も諦めるだろう。

そう思ったのに、彼女からは意外な言葉が返ってくる。

「いえ……それで大丈夫です……。貧乏暮らしには慣れてるので……。色々頼りきりですみませんでした……。画材とお金は後で送ります……。今までお世話になりました……。さようなら……」
「…………えっ……?本気で……言ってるの……?」

彼女はそのまま荷物を持って僕から去ろうとする。

「待ってよ!考え直してよ!何でそんなに僕が嫌なの!?別にあいつとは付き合えてるんだから僕でもいいでしょ!?何であいつは良くて僕はダメなの!?」

彼女は僕の言葉を無視して全力で走り始める。

「逃げても無駄だよ……!僕の家なんだから、僕の方が詳しいに決まってるでしょ」

彼女を追いかけると、一瞬で彼女に追いつく。

「捕まえた。ねえ、僕のこと拒んでごめんなさいって謝って?今謝ったら許してあげる……」
「嫌です……!西園寺さんなんか大嫌いです……!離してくださ……」

彼女は僕の腕の中で、僕から離れようと必死に暴れる。

プツンと何かが切れる音がした。

気付くと彼女を突き飛ばしていた。

「いたっ……!」

怯えてる彼女を無視して、彼女に馬乗りになって首を絞める。
彼女は息も絶え絶えになりながらも、何か言葉を発しているみたいだけど、今の僕には何も届かない。
彼女がおとなしくなったところで、彼女の服を無理矢理脱がせて、彼女の両腕を縛る。

「ごめん……なざい……。ゆるじ……」

1回首を絞められたからか、彼女はさっきまでの威勢が嘘だったかのように、弱々しくなる。

「今謝ってももう遅いよ」

そのまま彼女を起き上がらせて、地下室まで連れて行く。

彼女をベッドに拘束したところで、昂っていた気持ちが落ち着き始める。
昂っていた感情が収まると、さっきまでの自分の冷静さを欠いていた行動に対する反省が湧いてくる。
彼女にDVみたいなことをしてしまった。

「さっきは痛いことしてごめんね……」

謝っても彼女は震えたままだ。

「でもね、僕達は結ばれる運命なんだよ……。だって、同じ世界を夢見てるなんて奇跡だよね……?これってきっと、僕達がお互いに運命の相手だって証拠なんだよ。運命の相手から逃げちゃダメだよ……」

思い描いていた理想とは全然違うけど、彼女が手に入った。
僕達は運命なんだから、一緒に居れば、彼女もいつか僕のことを好きになってくれるよね?

ふと、地下室全体を見回す。
彼女のための場所として整えたから当然なんだけど、この地下室は本当に彼女によく似合っている。

ドアのロック、指紋認証式にしておいて良かった……。

僕がいる間は、彼女が暴れないように拘束しておくとしても、僕が仕事の間は彼女もある程度自由に動けないと困るだろう。
彼女が自分の意思では地下室から出られないようにしていて正解だった。

「ようこそ。ここが僕達にとってのユートピアだ。ここでいっぱい愛し合おうね」

僕は彼女にそっと口づけた。
それが、彼女との初めてのキスだった。
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