妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

文字の大きさ
28 / 60

27、女神のヘルプ 女神視点

しおりを挟む
   ワタクシは豊穣の女神アリストです。

 均整のとれた豊満な肢体に蜂蜜色の豊かな髪をもっている。

 くわえて陶器のようなツヤ肌にアーモンドのような大きな目。

 自分で言うのもなんだけど、美女だらけの女神の中でも、とびっきりの美女だと思うわ。

 雲の上にそびえる城に住んでいるワタクシは、絹でできた純白のドレスをまとい、花に囲まれた部屋で暮らしている。

 毎日お気に入りの精霊や、魂だけになった人間とのお喋りを楽しみにしながら。

「ローラ。
 あなたの娘アイリーンの様子を、魔法の鏡で一緒にのぞいてみましょう」

 今日の話し相手はローラリーフ嬢である。

 人間界では女伯爵だったローラは身も心もとても美しい女性たったから、ワタクシは彼女に最高のギフトをあたえた。

 幻の花と言われていたゴールデンローズを咲かす力よ。

「ワタクシがあなたに余計な力をあたえたばかりに、あなたたち親子には苦労をかけるわね」

「とんでもないです。
 女神様は何も悪くありません。
 悪いのは、せっかくいただいた力を上手にいかせなかった私ですわ」

 ローラは深々と頭を下げると、長いため息をつく。

 ワタクシたちは猫足の丸テーブルをはさんで、向かいあって座っている。

 テーブルの中央に置かれた鏡は人間界をリアルタイムでうつす。

 それぞれの前には可愛いカップが置かれていた。

 カップの中では、朝露の精霊が入れてくれたレモン色のお茶が湯気をたてている。

「悪いのはローラじゃなくってよ。
 コンプレックス丸出しの妹カーラと、そんな女にうつつをぬかせたパインだわ」

 ワタクシはカップに口をつけて、甘酸っぱいお茶を一口飲むと、カップをテーブルに戻して言葉を続けた。

「主人と妹の事にショックをうけたあなたは、事故で死んでしまったのね」

「そうです。
 けど、残されたアイリーンのことがとても気がかりでこの世界に召された時、女神様にお願いしたのです」

 そう言うとローラはテーブルの上で重ねた両手にギュッと力をいれる。

「そうだったわね。
 たしか『娘に私のギフトを引き継がせないで下さい』でしたよね。
 あんなお願いは初めてだったから、今でもあの時のあなたの様子はよく覚えているわ」

「こわかったのです。
 妹達にアイリーンのギフトを悪用されるのが」

「わかってるわ。
 だからワタクシがアイリーンに魔法をかけたのよね。
 アイリーンが真実の愛に出会った時、初めてギフトの力が開花するようにとね」

 ワタクシの言葉に無言でうなずいたローラは、すぐに目を丸くして驚きの声をあげた。

「女神様。 
 とうとうアイリーンが邸をでました」
と。

「まあ、本当なの」

 ワタクシはローラの視線の先にある鏡に視線を落とす。


「女神様。
 アイリーンは邸を出たのはいいけど、行き先がなくて宙に浮かんだままですわ」

 ローラが心細い声をだした。

「大丈夫ですよ。
 ワタクシがヘルプしますから」

 ドンと拳で胸をたたき、鏡にむかって人差し指を優雅にふる。

 女神であるワタクシは、呪文を唱えずとも魔法を発動させれるのだ。

「たった今、ブランチに栞を送りましたよ」

 口角をあげて、少し自慢げに微笑む。

「栞? ですか」

 ローラは不思議そうな顔をして首を傾けた。

「そうよ。
 裏に、『邸を出たアイリーンが、行き場を失って空を漂っている』って魔法で書きこんだ栞なの」

「まあ。ありがとうございます」

 やっとローラの表情がホッとしたようにゆるんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~

星名柚花
恋愛
聖女となって三年、リーリエは人々のために必死で頑張ってきた。 しかし、力の使い過ぎで《聖紋》を失うなり、用済みとばかりに婚約破棄され、国外追放を言い渡されてしまう。 これで私の人生も終わり…かと思いきや。 「ちょっと待った!!」 剣聖(剣の達人)と大魔導師(魔法の達人)が声を上げた。 え、二人とも国を捨ててついてきてくれるんですか? 国防の要である二人がいなくなったら大変だろうけれど、まあそんなこと追放される身としては知ったことではないわけで。 虐げられた日々はもう終わり! 私は二人と精霊たちとハッピーライフを目指します!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

処理中です...