【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん

文字の大きさ
5 / 38
1章 貧乏が嫌なので冷酷竜人陛下に嫁ぎます

4,冷酷皇帝陛下の花嫁になります

しおりを挟む
「私が何でも独り占めしようとしてたって?
なぜそう言われるのか全く意味がわからない」
「兄貴は存在するだけで俺から全てを奪っているんだ。
少しもそれに気がつかないとは兄貴も皆と同じで、俺にはなんの関心もないんだな。
だから俺は自分で人生を切り開いて見せる。
その為には聖獣の力が必要なんだよ」
「やっぱり知っていたのか。
お前の言う通り私にはお前の不満がよくわからない。
だがたとえどんな理由があろうとお前の考えている事は間違っているぞ」
「偉そうに説教をするのは金を返してからにしてくれ!
まあ。今の兄貴の経済状態だろうじゃ、無理だろうがな」
叔父様はそう言うと、フンと鼻をならした。
妻や娘の前で弟に罵倒されているのだ。
お父様はどんなに悔しいだろう。
私は握った拳にギュツと力をこめて唇をかむ。
「グレーさん。
お願いだから、夫を責めるのはそこまでにしてくれませんか」
ブルーのルームワンピースを着たお母様が弱弱しい声をだすと、今度はすぐに叔母様が反応した。
「責めるだなんて、心外だわ。
うちの人は事実を言っているだけでしょ。
ところでお義姉様。明後日までに借金は全額を返済してもらう事になるけど、大丈夫かしら?」
「「ええ! 明後日までに全額!?」」
意地の悪そうな笑みをうかべた叔母様にお父様とお母様は目を丸くして驚いている。
「おい兄貴。まさか忘れたのか?
万が一グレン公爵家の後ろ盾を失った時は即全額返済する契約だったのを」
「そうだったか。
実はお前を信じていたから、よく契約書を読んでいなかったんだ」
「これだからお坊ちゃまは困るんだな」
叔父様はわざとらしく深いため息をつくと、上着のポケットから契約書を取り出しお父様の目の前につきつけた。
「ほら。ここに書いてあるだろ。
ちゃんと兄貴のサインだってある」
「確かに。そうだな」
お父様は叔父様が指でおさえた箇所に視線を移すと、顔を青くする。
「貴方。どうしましょう。あんな大金。明後日までに用意できないわ」
お父様の様子を近くで見守っていたお母様がワナワナと身体を震わせた。
「兄貴はまさかキャンディがエルトン公爵令息に婚約破棄されるとは思ってもいなかったんだろうが、俺だってそうだ。
だからほんの軽い保険のつもりだったんだが、世の中何がおこるかわからないもんだな。
しかもエルトン公爵令息の次の婚約者がスエレンとは皮肉なもんだぜ」
「うちのスエレンは魅力的だから、仕方ないとはいえお義兄様とお義姉様には申し訳ないと思っているのよ」
口に扇を当てて、叔母様は自慢げな顔をする。そんな叔母様にお母様が珍しくくってかかった。
「本当に申し訳ないと思うなら、返済期日を少しのばしてくれてもいいじゃない。
口先だけの謝罪ならけっこうですわ」
「まあ。お義姉様ったら失礼ね。
もしかして私に嫉妬してるのかしら。
その気持ちもわからないことはないけれど。なにしろ私の夫はやり手だけど、そちらのはねー」
叔母様はそこで言葉を切ると、意味深に「ククク」と低く笑う。
「なんですって!」
お母様が眉をよせた時だった。
「ケンカはダメでしょ。二人とも『ごめんなさい』して仲良くしなさい」
いつのまにか現れた妹の幼い声が聞こえてきたのは。
「パンちゃん。自分のお部屋で寝てたんじゃなかったの?」
私は寝巻姿の妹を抱き上げて、小さな頭をなでる。
妹の名前はパンラビット。
私より六歳下だから現在は十歳だ。
陶磁器のように白い肌。
私と同じ薄桃色の髪とエメラルド色の瞳。
外見は私と妹はよく似ていた。
けれど妹はうまれつき身体が弱い。
少し走っただけで、心臓が爆発しそうになってしまうのだ。
だから、一日のうちのほとんどをベットで過ごしている。
本当は皇都の名医に診てもらいたいのだけれど、お金がかかりすぎて無理なのが悲しい。
「寝てたけど、お母様と叔母様のケンカで目がさめちゃったの」
「ごめんね。パンちゃん。でもお母様は叔母様とケンカなんかしてないから、安心してね」
 私はそう言って、妹のやわらかい頬をムニュとつまんだ。
「あ!お姉様は今日は丸眼鏡をかけてないのね。
パンちゃんの病気を治してくれる妖精が見つかったから?」
「ごめんね。パンちゃん。それがまだなの。
でもこの部屋には妖精はいない事がわかったから、はずしているのよ」
「なーんだ。パンちゃん。がっかり」
妹はしょんぼりと肩をおとす。
実はエルトンの嫌った丸眼鏡は魔道具なのだ。
市場へ妹のお薬を買いにいったある日、帰り道で見知らぬ行商人から呼びとめられた。
「お嬢さん。ご存知かね?
この世にはどんな病気でも治せる妖精がいるって事を?
この魔道具をかければ、その妖精が見えるようになるんだよ」
「お婆さん、本当ですか?
なら私にそれを下さい。
妹の病気を治してもらいたいんです」
腰の曲がった老婆の言葉を信じた私はお財布にしまっていたオコズカイをはたいて、黒眼鏡を買ったのだ。
それからどこへ行くにも眼鏡をかけてキョロキョロしていたけど、まだ妖精は見つかっていない。
「妖精がみえる眼鏡だって!
キャンディ。そんな物があるわけないだろう。
もしあったとしたも、魔道具博物館級の貴重な物だ。
一介の行商人が売り歩けるような品物じゃない。
そんな事もわからなかったのか。
やっぱり世間知らずの兄貴が育てただけあるな」
叔父様が私を指さしして、天井を仰いで笑い声をたてる。
それにつられたように叔母様が、
「お義兄様とお義母様の教育がなってないから、簡単にだまされるのよ」
とお母様を馬鹿にする。
「パンちゃんだって可哀そうよ。出来損ないで生まれてきたんだものね」
スエレンが妹を蔑んだ時だった。
「お借りしていたお金はすべてお返ししますから、今すぐ邸から出て行って下さい!」
気がつけば、私は部屋着のポケットにしまっていた小切手を叔父様の胸に投げつけていたのだ。
「まったくプライドだけ高いところも兄貴にそっくりだな。
キャンディに払えるわけないだろう」
薄笑いを浮かべて小切手に視線を移した瞬間、叔父様は絶叫した。
「キャンディ! 一体こんな大金どこで手にいれたんだ!」
「心配しないで。盗んだりしたわけじゃないから。
まだ誰にも言ってなかったけど、婚約破棄されてからすぐに私は皇帝陛下の花嫁に選ばれたの。
これは結納金です!」
「「「「「キャンディ! 」」」」」
私の言葉を聞いた全員がポカンとして私の名前を呼んだ。
皆、私がとうとう正気を失ったと思ったのかも
しれない。 
考えてみれば、あの時の私は普通じゃなかったの
だろう。
じゃないと、見知らぬ男からの結婚話にのらないはずたがら。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

天才すぎて追放された薬師令嬢は、番のお薬を作っちゃったようです――運命、上書きしちゃいましょ!

灯息めてら
恋愛
令嬢ミーニェの趣味は魔法薬調合。しかし、その才能に嫉妬した妹に魔法薬が危険だと摘発され、国外追放されてしまう。行き場を失ったミーニェは隣国騎士団長シュレツと出会う。妹の運命の番になることを拒否したいと言う彼に、ミーニェは告げる。――『番』上書きのお薬ですか? 作れますよ? 天才薬師ミーニェは、騎士団長シュレツと番になる薬を用意し、妹との運命を上書きする。シュレツは彼女の才能に惚れ込み、薬師かつ番として、彼女を連れ帰るのだが――待っていたのは波乱万丈、破天荒な日々!?

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...