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第4章 勇者の剣と剣の巫女
第215話 無慈悲・無軌道・無秩序
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「コイツをダシに一旦仕切り直すぜ。どうせ勇者をブチ殺すなら、もっと派手に戦いてえからよ。こんなとこじゃ、狭っ苦しくてたまんねえからな。」
「どうするつもりだ?」
仕切り直す?派手に戦う?場所を変えるのか?コイツの狙いは一体どこにあるのか?
「この町の近くに小高い丘がある。そこに勇者、お前一人で来い!時限は今日の日没までだ。」
一人でだと?やっぱり俺達全員を相手にするのは不利だと思っているのだろうか?
「時限に遅れたり、他の奴等を連れてきたら、どうなるかわかってるよな?」
子猫を前に掲げて脅迫している。その意味はもちろん、子猫の命を奪うという事だろう。
「コイツだけで済むとは思うなよ。ここら一帯から人気がなくなっちまうかもしれないぜ?勇者王の剣もブッ壊れちまったことだしよ。ついでに町もなかったことにしたら、おもしれえとは思わねえか?」
「ぐうっ!?」
悪魔的な発想だ!えげつないことを思いつきやがる。これじゃ、ヤツの言うとおりにするしかないじゃないか。
「じゃあ、一旦俺様はずらかるぜ。わかったか?約束は破るんじゃねえぞ?」
魔王は瞬時に姿を消した。転移魔法を使ったのだろう。この場からいなくなったとはいえ、まだ体が強ばっていた。この後、どうするのか?子猫をどうやって救うのか?どうやってアイツを倒すのか?そんな思いで頭がいっぱいだったからだ。
「大変なことになってしまった……。」
俺はうなだれた。霽月八刃を使ったとき、躊躇わずに絶空八刃を使っていれば、勝負はついていたのかもしれない。
「勇者様、あまり自分を責めないでください。みんな精一杯戦ったんです。それでも、勝てなかっただけなんです。」
「……。」
エルちゃんは励ましてくれているが、全力が出し切れなかったことが悔しくてしょうがない。
「エル坊の言うとおりじゃ。そなたが悪いわけではない。」
周囲の人々を逃がすために外へ出ていたサヨちゃんが戻ってきた。魔王は短時間で去ってしまったが、人々を逃がしてくれたおかげで被害者は出さずに済んだ。
「そなたが本来の剣を手に入れておれば、こんなことにはならなかったのかもしれぬな。本領が発揮できない故、最悪の事態を招いてしもうた。」
そう言うサヨちゃんの視線の先には遊び人がいた。アイツはまだ、父の遺体の側で茫然自失としていた。無理もない。父の死を知った上、その殺害の疑いまでかけられているんだから。
「改めて言おう。ミヤコ、そなたが責任を果たさなかった故、このような事態を招いたのじゃ!」
「サヨちゃん!やめるんだ!」
「そなたは黙っておれ!今はこの痴れ者と話しておるのじゃ。」
サヨちゃんは意地でも遊び人…ミヤコを糾弾するつもりのようだ。責められている当人は怯えきった顔でサヨちゃんを見ている。普段の本人からは想像できない姿をさらしている。見ているこっちが悲しくなってくる。
「知らない……知らないよ。ウチは自分が正しいと思ったことをしただけだもん!」
「そのような言い訳が通用するとでも思うか!そなたの無責任な行動で多くの人々を巻き込む結果になったのじゃぞ!」
「言い過ぎだ!やめるんだ!」
過剰な物言いになってきたサヨちゃんを制止する。それでも彼女の火の勢いは収まる気配がなかった。
「みんないつもそうだった。昔から。ウチが、ウチがって。でも、気付いちゃったんだ。ウチの心じゃなくて、ウチの能力が必要なだけなんじゃないかって。」
彼女は涙を流しながら、凍り付いた様な表情で話している。その目はどこにも焦点が合っていない様子だった。
「みんな、ウチが何を思ってるか、何をしたいかなんて興味ないんだよ。ウチをウチとして誰も見てくれない。剣の巫女だなんてワケのわかんないモノとしてしか見てくれないんだ。」
「知ったことか!そなたはそなたの責務を果たすことが最優先事項じゃ!」
「知らない!もう、知らないよ、あんたたちのことなんか!みんな死んじゃえ!みんないなくなればいいんだ!」
ミヤコは立ち上がり、神殿の外へと駆け出していった。
「この大馬鹿ものがぁ!」
その背中に向かってサヨちゃんが怒号を浴びせた。
「もういい、もういいから。」
俺は止めることは出来なかった。ミヤコもサヨちゃんも。でも、なんとかしてやらないといけない。俺は逃げるわけにはいけないから。
「どうするつもりだ?」
仕切り直す?派手に戦う?場所を変えるのか?コイツの狙いは一体どこにあるのか?
「この町の近くに小高い丘がある。そこに勇者、お前一人で来い!時限は今日の日没までだ。」
一人でだと?やっぱり俺達全員を相手にするのは不利だと思っているのだろうか?
「時限に遅れたり、他の奴等を連れてきたら、どうなるかわかってるよな?」
子猫を前に掲げて脅迫している。その意味はもちろん、子猫の命を奪うという事だろう。
「コイツだけで済むとは思うなよ。ここら一帯から人気がなくなっちまうかもしれないぜ?勇者王の剣もブッ壊れちまったことだしよ。ついでに町もなかったことにしたら、おもしれえとは思わねえか?」
「ぐうっ!?」
悪魔的な発想だ!えげつないことを思いつきやがる。これじゃ、ヤツの言うとおりにするしかないじゃないか。
「じゃあ、一旦俺様はずらかるぜ。わかったか?約束は破るんじゃねえぞ?」
魔王は瞬時に姿を消した。転移魔法を使ったのだろう。この場からいなくなったとはいえ、まだ体が強ばっていた。この後、どうするのか?子猫をどうやって救うのか?どうやってアイツを倒すのか?そんな思いで頭がいっぱいだったからだ。
「大変なことになってしまった……。」
俺はうなだれた。霽月八刃を使ったとき、躊躇わずに絶空八刃を使っていれば、勝負はついていたのかもしれない。
「勇者様、あまり自分を責めないでください。みんな精一杯戦ったんです。それでも、勝てなかっただけなんです。」
「……。」
エルちゃんは励ましてくれているが、全力が出し切れなかったことが悔しくてしょうがない。
「エル坊の言うとおりじゃ。そなたが悪いわけではない。」
周囲の人々を逃がすために外へ出ていたサヨちゃんが戻ってきた。魔王は短時間で去ってしまったが、人々を逃がしてくれたおかげで被害者は出さずに済んだ。
「そなたが本来の剣を手に入れておれば、こんなことにはならなかったのかもしれぬな。本領が発揮できない故、最悪の事態を招いてしもうた。」
そう言うサヨちゃんの視線の先には遊び人がいた。アイツはまだ、父の遺体の側で茫然自失としていた。無理もない。父の死を知った上、その殺害の疑いまでかけられているんだから。
「改めて言おう。ミヤコ、そなたが責任を果たさなかった故、このような事態を招いたのじゃ!」
「サヨちゃん!やめるんだ!」
「そなたは黙っておれ!今はこの痴れ者と話しておるのじゃ。」
サヨちゃんは意地でも遊び人…ミヤコを糾弾するつもりのようだ。責められている当人は怯えきった顔でサヨちゃんを見ている。普段の本人からは想像できない姿をさらしている。見ているこっちが悲しくなってくる。
「知らない……知らないよ。ウチは自分が正しいと思ったことをしただけだもん!」
「そのような言い訳が通用するとでも思うか!そなたの無責任な行動で多くの人々を巻き込む結果になったのじゃぞ!」
「言い過ぎだ!やめるんだ!」
過剰な物言いになってきたサヨちゃんを制止する。それでも彼女の火の勢いは収まる気配がなかった。
「みんないつもそうだった。昔から。ウチが、ウチがって。でも、気付いちゃったんだ。ウチの心じゃなくて、ウチの能力が必要なだけなんじゃないかって。」
彼女は涙を流しながら、凍り付いた様な表情で話している。その目はどこにも焦点が合っていない様子だった。
「みんな、ウチが何を思ってるか、何をしたいかなんて興味ないんだよ。ウチをウチとして誰も見てくれない。剣の巫女だなんてワケのわかんないモノとしてしか見てくれないんだ。」
「知ったことか!そなたはそなたの責務を果たすことが最優先事項じゃ!」
「知らない!もう、知らないよ、あんたたちのことなんか!みんな死んじゃえ!みんないなくなればいいんだ!」
ミヤコは立ち上がり、神殿の外へと駆け出していった。
「この大馬鹿ものがぁ!」
その背中に向かってサヨちゃんが怒号を浴びせた。
「もういい、もういいから。」
俺は止めることは出来なかった。ミヤコもサヨちゃんも。でも、なんとかしてやらないといけない。俺は逃げるわけにはいけないから。
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