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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第286話 雷光が閃くとき

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「勝ったようだな。……いや、そうでなくては困る。拙者がこの大会に参加した意義がなくなってしまう。」


 闘技場中央へ向かう侍と端の壁際まで向かおうとする途中ですれ違った。この言葉はそのときに発せられたものだ。


「明日の対戦を楽しみにしてる。アンタも勝てよ。」


 侍が負けるとは思ってないが、挨拶代わりにエールを送る。


「先程は面白い物を見せてもらった。礼代わりに拙者も切り札を披露させてもらう。とくと見るがよい。」


 侍は意味深なことを言った。それは誰のどの技のことを言っているのかはわからなかったが、とにかく技を見せるということなのだろう。フェアプレー精神の現れだろうか?それとも自分の技に対して絶対の自信を持っているからなのか?見てみるまではわからない。


「続きまして第二試合!謎多き東洋の戦士、チーム地雷也の登場です!」

「グロロロローッ!!」


 侍は闘技場に登場済みだが、巨体の鎧男が後で遅れて出てきた。ヤツの相棒、ブドーマスターだ。相変わらず鳴き声なのかよくわからない、奇声を上げながらズンズンと足音を響かせる。


「一回戦はブドーマスター選手の怪力によって相手を瞬く間に瞬殺!その恐るべき実力の片鱗が垣間見えました!果たして今試合では二人の実力の全貌は明かされるのでしょうか?」


 一回戦は侍自身が戦う価値なしと判断したのか、相棒の砂人形に処理させていた。侍自身が「人形とはいえ実力は同程度」と言っていたので、相当に強いのは間違いない。


「侍チームの相手を務めるのは、フルメタル・マジシャンズです。魔術師でありながら、鉄壁の守りを持つ異色の魔術師コンビなのです!」


 相手の二人はいつの間にか登場していた。ブドーの速度がゆっくりだったので、痺れを切らして出てきていたのかもしれない。小柄な全身鎧の男と大きな盾を持つ大男の二人組だった。マジシャンズというコンビ名だが全然魔術師っぽくなかった。盾の男はガンツと比べても遜色ない体格だ。違うのは鎧を着てないところぐらいか?


「アイツらアストラル・アーマーとシールドの使い手のようだな。だから魔術師でも重装備が平気で出来るんだ。」


 ファルちゃんの解説が入った。魔力で作った防具だから軽いのか。体の一部みたいなモンなのだろう。


「オイ、司会!さっさと試合を始めろ!あっちのウスノロのせいでイライラしっぱなしなんだよ、こっちは!」

「すまんな、司会の人。うちの弟者はせっかちなんだ。」


 小さな鎧男がまくし立てるように文句を言う。弟者と言っているのでもしかしたら二人は兄弟なのかもしれない。


「良かろう。拙者も貴殿らの希望にお応えしよう。司会殿、頼めるか?」


 一触即発!試合開始、待ったなしの模様!早くも両者は戦闘準備に入った。侍も刀を出している。今回はヤツ自身も手を出すようだ。宣言もあったしな。


「し、試合開始!!」


 開始直後、侍とブドーは相手を挟む様な位置取りをした。ブドーは片腕を掲げ、侍は刀を上段に構えている。今気付いたけど、両者とも腕には鎖が巻かれている。前にダンジョンにいたときはこんなものは付けてなかったはずだ。小手の代わりか?それにしては妙だった。


「雷光引力波!」


 そのかけ声と共に両者の間、対戦相手を巻き込んで電光の帯が発生した。何をするつもりなんだ?


「ま、まさか!あれはマグネット・エナジー!」

「な、なんそれ!?」


 ファルちゃんが驚きの声を上げている。専門用語で言われても、俺にはわからんのだが。ちゃんと説明してよ!


「兄者!み、身動きがとれんぞ!」

「お、落ち着け、弟者!魔力を集中して逃れるんだ!」


 魔術師兄弟は電光から逃れようと必死にもがこうとしている。しかし、もがくことすらできないようだ。わずかにしか体を動かせていない。


「無駄だ。我が術中に嵌まった以上、逃れることは出来ぬ。心せよ!」

「ヤバイ!アイツら一撃で決めるつもりらしいぞ!」


 ファルちゃんの驚きはさらに増す一方だった。何が起きるというのか?


「雷光一刀閃!!!」


 その瞬間、おびただしい閃光が闘技場を埋め尽くした。
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