71 / 331
第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第71話 やって来ました、勇者のターン!!
しおりを挟む力士は二種類の料理を出していた。串に三個刺して焼いた物と具だくさんなスープのような物だ。ライセンス試験のときのような鍋料理に酷似している。そんなのありか、と思ったが、よく見ると同じハンバーグを使っているようだ。だがどちらも小さめなのでハンバーグというより肉団子に近い。
「ムウっ!? こ、これはっ!?」
「う、う、う……、」
「おおっ!?」
「なんやこれ? 一つ一つがエラいちっちゃいやんけ?」
「ハンバーグを二種類の方法で調理したでゴワス。極東で修行していた時に憶えたツクネという料理をアレンジしてみたでゴワス。」
力士の料理を一口食べた審査員の面々は驚きのリアクションを取っていた。約一名文句を言っているが、口だけだ。明らかに表情が嬉しそうな感じになっている。態度は嘘つかない。
「素晴らしい! やるではないか! 貴様には8点をやろう!」
この大会で初めて、至高帝が素直に褒める言葉を聞いた気がする。
「うーーーーーーまーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーっー!!!!!!!!!!!!!!! 9点!」
うるさい! いつにも増してうるさい。いい加減にしろ!
「うまいね。これは“サケ”が進むね! 9点!」
結局、酒。今度は力士の作った物に合わせて極東の国の酒を出してきている。前に侍が持っていたヤツに似てる。ビンのラベルには漢字で“両面宿儺”と書かれている。どういう意味?でも、なんかほのかに寒気がするのは気のせいだろうか?
「うまいやんけぇ!! くやしいわぁ! “アホまぶし!”使うた方がウマイはずやのに、これには勝たれへんわ! しゃーないけど、10点付けたるわ!」
「おおーっと!! ここにきて圧倒的高得点を叩き出しました! 合計36点です!」
ぬう! ヤツめ、トップに躍り出やがった!これはわからなくなってきた! 俺のハンバーグはイケるとは思うが、力士に勝てるかどうかは不透明だ。だが、作った後だからこれ以上は何も出来ない。あとは結果を待つだけだ。
「さて次はビッグなゲスト出場者の登場です! なんと勇者様です! あの大武会を制した勇者様です! 今大会でも優勝して見事V2を獲得することになるのでしょうか!」
よしきた! 俺のターンが回ってきた! 俺のハンバーグをとくと喰らえ、審査員達!
「さあ、いっちょ、おあがりよっ!!」
料理の皿を審査員席にそれぞれ配る。見るがいい、驚愕するがいい! 俺のびっくりハンバーグを食べてくれ!
「ふむ、勇者と聞いて王道の料理が出てくると思っていたが、変わり種で来るとはな。」
「まさか、食材そのものを器とするとは!」
「ぱっと見、ハンバーグじゃないよね? でも、俺、こういうユニークさは好き。」
「はっ、なんやねん、タマネギ丸ごとやないかい。肉料理とちゃうがな!」
そうだ、見た目はな! 俺が考えた最強のハンバーグの正体はこれだ!
「その上の部分を開けてみてくれ!」
タマネギの上の部分を切り蓋代わりにしてある。茶色い皮はそのままだが、ちゃんと火を通してあるので、剥けばそのまま食べることが出来る。
「何っ! 肉詰め方式だと!?」
「タマネギの中身をくり抜いて、ハンバーグを詰めるとは、素晴らしいアイデアだ!」
「面白いね! タマネギの器だ!」
「はんっ、こんなんでちゃんと火ぃ通るんかいな? けったいなモン作りおるわ。」
フフフ、どうだ? 度肝を抜かれただろう?俺の特製“タマネギ・ハンバーグ”だ! ただタマネギ野郎がタマネギーグなんてシロモノを出しやがったせいで、少しモヤモヤするのは言うまでもない。さて、採点はどうなる?
「フム、タマネギのうまみが良く引き出されている。奇をてらってはいるが、見た目だけに頼らず、味も極上で申し分ない。9点をやろう。」
な、何ぃ! 至高帝が珍しく素直に褒めている! 快挙だ! やったぜ!
「これぞ、タマネギが持つ潜在的なうまさを見事に昇華している! うーーーーーーーーーーまーーーーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーーーーーぞーーーーーーー!!!!!
9点!!」
はいはい、相変わらずうるさいですねえ。
「ウマイね! ワインとよく合うよ! さっきの子と味はどっこいどっこいだね。いい勝負。新しい戦前な予感? 9点! ところで話は変わるけど、髪切った?」
切ってねえよ! また聞くのか! 前回も無意味に聞いたよな。そんなに俺の髪型が気になるんか? ていうか、“新しい戦前”というキーワードが気になる。それは何?
「せやから、“アホたれ♪”を使うた方が絶対にうまなんねん! アホタレ! ワイ的にはさっきのヤツの方が好きやから、9点。」
くっ!? ゲス王からマイナスをもらっちまった! しかも好みがどうとか、理不尽すぎる! しかも、また“アホ”シリーズ押しか!いい加減にしろ!
「勇者様の得点が確定しました! なんと先程のヴォルフさんと同率の36点です! こうなると多数決で決められることになりますが……、あと一人、出場者が残っていますので、そちらの採点が終わってからの判断となります!」
あと一人残っているとはいえ、そこまで採点に差が出るとは思えない。もしかしたら、多数決での判定にもつれ込むかもしれない。
「フフフ。」
ハンバーグ仮面は不適に笑う。この後、俺ら二人の採点に勝つのは難しいはずだし、トリなのでプレッシャーも半端ないはず。何をそんなに余裕ぶってるんだ! その自信の根拠は何なんだ?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる