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第八章 貴賓館訪問
2 から騒ぎ
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2 から騒ぎ
「僕が君に会いたかったんだ」
ケイトは僕の目をまっすぐに見つめてそう言った。嬉しい気持ちが、僕の身体中を満たした。
僕も、会いたかった。そう言いたかったけれど。言葉に詰まった。
ジュンや皇女様、王様や王妃様の顔が脳裏にチラついて、僕は領主様を見つめることしかできなかった。
すると領主様は、あわてたように言った。
「ほら、ジュンの親戚の子なら、僕の親戚みたいなものだし!会ってみたいと思うだろ」
僕はきょとんとしてしまう。直後、猛烈な恥ずかしさが襲ってきた。僕は「会いたかった」の意味を、勝手に恋愛の意味で解釈してた。
「な、なるほど!」
「困らせるようなこと言ってごめん」
などと謝られてしまう。僕の動揺は見透かされていたらしい。ますます顔が熱くなった。
「さて、流石にもう行かないとね」
領主様は立ち上がって僕に手を差し出した。僕は領主様の手を取った。
領主様は湖の方に歩き出した。もう行かないとって言ったくせに、白馬を置き去りにして、また寄り道してる。
「夜になると、北極星が映るんだよ」
水際の柳の下に立って、領主様は湖を指差した。僕は夜空を反射した鏡のような湖面を想像した。
「わあ。それは、綺麗だろうな……」
「見たいと思う?」
「うん!」
領主様は、ため息をついた。
「ねえアリオト。僕はこれから毎晩、ここに来てしまうかもしれない」
「どうして?」
「君が来るかもしれないって思うから」
「何それ?」
僕は笑った。領主様は僕の指の間に指を絡めてぎゅっと握った。
「君が来る可能性があるってだけで、僕は夜通しここに立っていられる。意味わかる?」
僕は一生懸命考えるふりをした。ドキドキしていた。
僕にはケイトがわからない、とため息をつくジュンの顔が浮かぶ。
本当に、僕にもケイトの気持ちがわからないよ。
一昨日の晩はアリスに夢中だったくせに、次の日の夜にはさっさと皇女様に乗り換えていちゃいちゃしてさ。
僕のことはてんで子ども扱い。意識してるのは僕だけみたい。……と思ったのに、今、また、期待させるようなことを言う。
「……わかんない」
わかるって答えたらいけないという気だけはした。
「そっか」
「そんなことするなら、最初から一緒に見に行く日を決めとけば良いと思うんだけど。違う?」
あえて明るくとぼけると、領主様は笑いながら歩き出した。
「じゃあ……毎晩」
繋いだ手を振りながら、領主様は言った。
「毎晩! 寝不足になっちゃうよ」
僕は笑った。そんな話をしていると、正午の鐘が鳴った。
領主様は、馬の手綱を引く僕の傍に立って、ゆっくりと歩いた。肩が触れそう。
やがて、貴賓館が見えてきた。門扉に栗色の馬と、従者らしき人が立っている。領主様の肩は、ふっと離れていった。
***********
貴賓館の前で、トーマという侍従と合流した。昨日はもっぱら王様の給仕をしていた人で、ジュンの従兄弟ということだ。
三人揃って応接間に通される。トーマは明るい人で、ジュンの従兄弟とはとても信じられない。僕はトーマのおしゃべりに笑い転げてしまって、皇女様が入ってきたのにも気が付かなかった。領主様が立ち上がったのにハッとして、僕とトーマも威儀を正して立ち上がった。
その後のことは、あんまり思い出したくない。
ジュンにせっかくならったのに、挨拶の礼儀作法は役に立たなかった。詳細は省くけど、皇女様はのっけから僕の見た目を褒め倒してきた。珍しい毛色の猫でも手に入れたかのように興奮している。
皇女様は僕を自分の隣に座らせて、話の最中も、僕の手とか膝とかをずっと撫で回しているのだ。酔っ払ってるのかと思ったけどそうじゃなさそう。綺麗なお姫様にいちゃつかれるのは、正直嫌な気はしないのだけれども、トーマの可笑しそうなまなざしと、何より、潔癖な領主様の軽蔑のまなざしが辛い。
「なんてきめ細やかな肌なの……領主様も触ってみて!」
僕の頬を撫でながら、領主様にまで触らせようとするので、気まずいことこの上なかった。僕は完全に、ペットかおもちゃとして呼ばれたんだ。僕の気持ちとか、意見とか、そんなものは全く関係なかった。それなのに僕は、ここにくるまで一丁前に、何を話そうかと考えたり、ジュンにマナーを習ったりとか、緊張して過ごしたんだ。なんだか少し悲しくなる。
「少しだけ、ボタンを外してみせてくださらないかしら」
「えっ?」
そんな要求をされて、流石にびっくりしてしまった。
「ボタンって、シャツのですか?」
僕が口を聞いたと言って皇女様は大はしゃぎする。僕はもう心を無にして、シャツのボタンに手をかけた。
「オト!」
領主様が鋭い声で僕を止めた。
「冗談でおっしゃってるんだよ。そんなことしなくていい」
優しい声に、なんだか泣きたくなった。
「あら、領主様ったらご機嫌ななめね」
「皇女様、どうか、それ以上はお控えください」
ケイトは柔和な笑顔を浮かべているが、静かな声から、明らかに怒っているのが伝わってきた。僕はヒヤリとする。皇女様は空気を読むということを知らないのか、控えるどころか、逆に僕にしなだれかかってきた。
「領主様はどうやら、ヤキモチを焼いておられるみたい」
皇女様は僕にだけ聞こえるようにささやいた。僕は思わず、皇女様の顔を見た。
そうか、ケイトにしてみれば、大事な婚約者が僕みたいな小姓とイチャイチャしているのを見て面白いはずがなかった。
「だったら、そうね……トーマの膝に乗ってみてくださらない?」
皇女様はにっこり微笑まれた。「だったら」の意味がわからない。
僕はこれも冗談なのだろうと思って動かなかったが、トーマはニヤニヤしながら僕の隣に移動してきた。
「皇女様の頼みとあらば、いかで拒めましょう」
トーマの芝居がかった台詞に、皇女様は拍手する。何が始まろうとしているのか、僕には全くついていけない。僕がトーマの膝に乗ったらなんだというのだ?
「さ、おいで、オト」
トーマはぱんぱんと自分の腿を叩いて僕を招いた。どうするのが正解なのかわからない。僕は救いを求めるようにして領主様を見た。
「おいトーマ……」
驚くほどドスの利いた領主様の低い声に、トーマは固まった。けれど、皇女様の声がそのヒヤリとした空気をぶち壊してしまった。
「と……尊すぎる! お願い、続けてトーマ!」
皇女様は何やら興奮した様子でトーマを促す。トーマが僕の腕を引っ張って膝の上に座らせると、皇女様は大喜びで、トーマと僕にいろんなことをさせようとした。自分は身を引く代わりに、トーマに僕をいじらせたいらしい。トーマは僕のシャツをまくりあげ、直に肌に触れてきた。
「いい加減にしろ!」
とうとう、ケイトが怒鳴った。僕たちはしんとして固まってしまった。ケイトはつかつかとこちらに歩み寄ると、ぐいと僕の腕を引いた。僕はケイトの胸の中に転がり込むような体勢になってしまった。
なんだかものすごく険悪な空気。喧嘩にだけはなってほしくなかった。
「領主様ったらそんなにムキになって……」
皇女様は苦悩するように眉間を指で押さえて、ぶんぶんと首を左右に振った。困っているのかと思いきや、口元は笑いをたたえている。
僕はゾッとした。この人はもしや、領主様を怒らせて、喜んでいる……?
考えてみれば、昨日の晩餐の席で、二人はあんなに睦み合っていらっしゃった。その皇女様が、小姓と侍従相手に真っ昼間かららんちき騒ぎをし出したら、怒りたくもなるだろう。
つまり、領主様の怒りは皇女様への愛情の裏返し。皇女様は領主様をあえて怒らせて、自分への愛情を試したのかも……。
僕とトーマはたぶん、妙な駆け引きに巻き込まれたのだ。僕はげんなりした。
「領主様がお怒りよ。トーマ、あなたは退がりなさい」
「えっ?」
僕とトーマは、同時に声を出してしまった。
「俺だけが怒られたわけではないと思うのですが……」
僕も同感だった。だが、皇女様はしれっとした顔で、トーマを部屋から追い出してしまった。僕もその後について出て行こうとしたのに、領主様が腕をぎゅっとつかんだので動けなかった。
「悪ふざけが過ぎました。ごめんなさいね、オト」
「い、いえ……」
僕は首を振るが、ケイトは無言である。怖い。普段優しい分、余計に怖い……。
「トーマがいなくなると、途端に静かねえ。王様が彼を珍重なさるのも分かるわ」
誰も反応しないので、皇女様の独り言みたいになってしまった。僕は心からトーマが戻ってくれることを願った。
「そうですね……」
僕がケイトに代わって返事をする。
「お茶が冷めてしまったわね。淹れ直させましょう」
「結構です」
僕は頷きかけたが、領主様が速攻で断ってしまった。
「そうお?」
あんな冷たい反応をされて、皇女様はどうして平気なんだろう。皇女様は、怒っている領主様をチラと見やると僕に目配せして、やれやれというように肩をすくめた。
「本題に入りましょう、姫君。私に相談があるとおっしゃっていましたね」
領主様が言った。すっかり冷めてしまった紅茶を一口飲むと、皇女様はポンと手を打った。
「そうそう、例の手紙を持ってくるのを忘れていましたわ。いま少し、ここでお待ちください」
そう言って立ち上がった皇女様は、楽しげに僕とケイトの肩を叩いた。
この空気の中でも、あんなにご機嫌でいられる心が羨ましい。皇女様は、くるりとドレスを翻して、大きな歩幅で颯爽と部屋を出ていった。
僕はピリついた領主様と二人きりで広い応接間に取り残された。
「僕が君に会いたかったんだ」
ケイトは僕の目をまっすぐに見つめてそう言った。嬉しい気持ちが、僕の身体中を満たした。
僕も、会いたかった。そう言いたかったけれど。言葉に詰まった。
ジュンや皇女様、王様や王妃様の顔が脳裏にチラついて、僕は領主様を見つめることしかできなかった。
すると領主様は、あわてたように言った。
「ほら、ジュンの親戚の子なら、僕の親戚みたいなものだし!会ってみたいと思うだろ」
僕はきょとんとしてしまう。直後、猛烈な恥ずかしさが襲ってきた。僕は「会いたかった」の意味を、勝手に恋愛の意味で解釈してた。
「な、なるほど!」
「困らせるようなこと言ってごめん」
などと謝られてしまう。僕の動揺は見透かされていたらしい。ますます顔が熱くなった。
「さて、流石にもう行かないとね」
領主様は立ち上がって僕に手を差し出した。僕は領主様の手を取った。
領主様は湖の方に歩き出した。もう行かないとって言ったくせに、白馬を置き去りにして、また寄り道してる。
「夜になると、北極星が映るんだよ」
水際の柳の下に立って、領主様は湖を指差した。僕は夜空を反射した鏡のような湖面を想像した。
「わあ。それは、綺麗だろうな……」
「見たいと思う?」
「うん!」
領主様は、ため息をついた。
「ねえアリオト。僕はこれから毎晩、ここに来てしまうかもしれない」
「どうして?」
「君が来るかもしれないって思うから」
「何それ?」
僕は笑った。領主様は僕の指の間に指を絡めてぎゅっと握った。
「君が来る可能性があるってだけで、僕は夜通しここに立っていられる。意味わかる?」
僕は一生懸命考えるふりをした。ドキドキしていた。
僕にはケイトがわからない、とため息をつくジュンの顔が浮かぶ。
本当に、僕にもケイトの気持ちがわからないよ。
一昨日の晩はアリスに夢中だったくせに、次の日の夜にはさっさと皇女様に乗り換えていちゃいちゃしてさ。
僕のことはてんで子ども扱い。意識してるのは僕だけみたい。……と思ったのに、今、また、期待させるようなことを言う。
「……わかんない」
わかるって答えたらいけないという気だけはした。
「そっか」
「そんなことするなら、最初から一緒に見に行く日を決めとけば良いと思うんだけど。違う?」
あえて明るくとぼけると、領主様は笑いながら歩き出した。
「じゃあ……毎晩」
繋いだ手を振りながら、領主様は言った。
「毎晩! 寝不足になっちゃうよ」
僕は笑った。そんな話をしていると、正午の鐘が鳴った。
領主様は、馬の手綱を引く僕の傍に立って、ゆっくりと歩いた。肩が触れそう。
やがて、貴賓館が見えてきた。門扉に栗色の馬と、従者らしき人が立っている。領主様の肩は、ふっと離れていった。
***********
貴賓館の前で、トーマという侍従と合流した。昨日はもっぱら王様の給仕をしていた人で、ジュンの従兄弟ということだ。
三人揃って応接間に通される。トーマは明るい人で、ジュンの従兄弟とはとても信じられない。僕はトーマのおしゃべりに笑い転げてしまって、皇女様が入ってきたのにも気が付かなかった。領主様が立ち上がったのにハッとして、僕とトーマも威儀を正して立ち上がった。
その後のことは、あんまり思い出したくない。
ジュンにせっかくならったのに、挨拶の礼儀作法は役に立たなかった。詳細は省くけど、皇女様はのっけから僕の見た目を褒め倒してきた。珍しい毛色の猫でも手に入れたかのように興奮している。
皇女様は僕を自分の隣に座らせて、話の最中も、僕の手とか膝とかをずっと撫で回しているのだ。酔っ払ってるのかと思ったけどそうじゃなさそう。綺麗なお姫様にいちゃつかれるのは、正直嫌な気はしないのだけれども、トーマの可笑しそうなまなざしと、何より、潔癖な領主様の軽蔑のまなざしが辛い。
「なんてきめ細やかな肌なの……領主様も触ってみて!」
僕の頬を撫でながら、領主様にまで触らせようとするので、気まずいことこの上なかった。僕は完全に、ペットかおもちゃとして呼ばれたんだ。僕の気持ちとか、意見とか、そんなものは全く関係なかった。それなのに僕は、ここにくるまで一丁前に、何を話そうかと考えたり、ジュンにマナーを習ったりとか、緊張して過ごしたんだ。なんだか少し悲しくなる。
「少しだけ、ボタンを外してみせてくださらないかしら」
「えっ?」
そんな要求をされて、流石にびっくりしてしまった。
「ボタンって、シャツのですか?」
僕が口を聞いたと言って皇女様は大はしゃぎする。僕はもう心を無にして、シャツのボタンに手をかけた。
「オト!」
領主様が鋭い声で僕を止めた。
「冗談でおっしゃってるんだよ。そんなことしなくていい」
優しい声に、なんだか泣きたくなった。
「あら、領主様ったらご機嫌ななめね」
「皇女様、どうか、それ以上はお控えください」
ケイトは柔和な笑顔を浮かべているが、静かな声から、明らかに怒っているのが伝わってきた。僕はヒヤリとする。皇女様は空気を読むということを知らないのか、控えるどころか、逆に僕にしなだれかかってきた。
「領主様はどうやら、ヤキモチを焼いておられるみたい」
皇女様は僕にだけ聞こえるようにささやいた。僕は思わず、皇女様の顔を見た。
そうか、ケイトにしてみれば、大事な婚約者が僕みたいな小姓とイチャイチャしているのを見て面白いはずがなかった。
「だったら、そうね……トーマの膝に乗ってみてくださらない?」
皇女様はにっこり微笑まれた。「だったら」の意味がわからない。
僕はこれも冗談なのだろうと思って動かなかったが、トーマはニヤニヤしながら僕の隣に移動してきた。
「皇女様の頼みとあらば、いかで拒めましょう」
トーマの芝居がかった台詞に、皇女様は拍手する。何が始まろうとしているのか、僕には全くついていけない。僕がトーマの膝に乗ったらなんだというのだ?
「さ、おいで、オト」
トーマはぱんぱんと自分の腿を叩いて僕を招いた。どうするのが正解なのかわからない。僕は救いを求めるようにして領主様を見た。
「おいトーマ……」
驚くほどドスの利いた領主様の低い声に、トーマは固まった。けれど、皇女様の声がそのヒヤリとした空気をぶち壊してしまった。
「と……尊すぎる! お願い、続けてトーマ!」
皇女様は何やら興奮した様子でトーマを促す。トーマが僕の腕を引っ張って膝の上に座らせると、皇女様は大喜びで、トーマと僕にいろんなことをさせようとした。自分は身を引く代わりに、トーマに僕をいじらせたいらしい。トーマは僕のシャツをまくりあげ、直に肌に触れてきた。
「いい加減にしろ!」
とうとう、ケイトが怒鳴った。僕たちはしんとして固まってしまった。ケイトはつかつかとこちらに歩み寄ると、ぐいと僕の腕を引いた。僕はケイトの胸の中に転がり込むような体勢になってしまった。
なんだかものすごく険悪な空気。喧嘩にだけはなってほしくなかった。
「領主様ったらそんなにムキになって……」
皇女様は苦悩するように眉間を指で押さえて、ぶんぶんと首を左右に振った。困っているのかと思いきや、口元は笑いをたたえている。
僕はゾッとした。この人はもしや、領主様を怒らせて、喜んでいる……?
考えてみれば、昨日の晩餐の席で、二人はあんなに睦み合っていらっしゃった。その皇女様が、小姓と侍従相手に真っ昼間かららんちき騒ぎをし出したら、怒りたくもなるだろう。
つまり、領主様の怒りは皇女様への愛情の裏返し。皇女様は領主様をあえて怒らせて、自分への愛情を試したのかも……。
僕とトーマはたぶん、妙な駆け引きに巻き込まれたのだ。僕はげんなりした。
「領主様がお怒りよ。トーマ、あなたは退がりなさい」
「えっ?」
僕とトーマは、同時に声を出してしまった。
「俺だけが怒られたわけではないと思うのですが……」
僕も同感だった。だが、皇女様はしれっとした顔で、トーマを部屋から追い出してしまった。僕もその後について出て行こうとしたのに、領主様が腕をぎゅっとつかんだので動けなかった。
「悪ふざけが過ぎました。ごめんなさいね、オト」
「い、いえ……」
僕は首を振るが、ケイトは無言である。怖い。普段優しい分、余計に怖い……。
「トーマがいなくなると、途端に静かねえ。王様が彼を珍重なさるのも分かるわ」
誰も反応しないので、皇女様の独り言みたいになってしまった。僕は心からトーマが戻ってくれることを願った。
「そうですね……」
僕がケイトに代わって返事をする。
「お茶が冷めてしまったわね。淹れ直させましょう」
「結構です」
僕は頷きかけたが、領主様が速攻で断ってしまった。
「そうお?」
あんな冷たい反応をされて、皇女様はどうして平気なんだろう。皇女様は、怒っている領主様をチラと見やると僕に目配せして、やれやれというように肩をすくめた。
「本題に入りましょう、姫君。私に相談があるとおっしゃっていましたね」
領主様が言った。すっかり冷めてしまった紅茶を一口飲むと、皇女様はポンと手を打った。
「そうそう、例の手紙を持ってくるのを忘れていましたわ。いま少し、ここでお待ちください」
そう言って立ち上がった皇女様は、楽しげに僕とケイトの肩を叩いた。
この空気の中でも、あんなにご機嫌でいられる心が羨ましい。皇女様は、くるりとドレスを翻して、大きな歩幅で颯爽と部屋を出ていった。
僕はピリついた領主様と二人きりで広い応接間に取り残された。
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