恋した殿下、愛のない婚約は今日で終わりです

百門一新

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1巻

1-1

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   プロローグ 十歳の王子様と、七歳の私


 その時、七歳だった私は痛すぎて、何がどう苦しいのかも分からなかったが、土を掴み、血を吐きながら誰かに声を届けようと必死だった。

「お願い……処刑は、だめ……私が……私が魔法を、使えないせいなの……」

 どうか、誰か聞いて、と私は血まみれになった幼い手を伸ばした。
 あれほど無力感に包まれたことはない。

「いやああぁあぁ!」
「血がっ、公爵令嬢がたくさん血を……っ」

 同じ年頃の令嬢たちが集められた王宮の華やかな茶会の場は、一人の侵入者による魔法攻撃と地面に仰向けに倒れた私によって、悲鳴に包まれた。
 パニックになって泣き叫ぶ令嬢たち。
 その中の、いったいどこの家がこんなことをしでかしたのか、当時の私は推測できなかった。
 ただ、脅すだけだと聞いたのにびっくりしただろうな、とは思った。
 ――王子様との婚約を辞退しろという、どこかの貴族からの脅し。
 この国で唯一の王子様にしてすでに上級魔法を習得し、十歳で部隊を与えられたアンドレア・レイシー・ティファニエル殿下。想定外だったのは、その婚約者である私が、魔法を使えなかったこと。
 私は、その暗殺者を憐れんだ。

「……お願い、傷つけないで……」

 護衛たちが令嬢を保護する騒がしさの中、私は必死に犯人を擁護する。
 聞いてくれるかは分からないが、頭と口元を黒い布で隠した侵入者に騎士の誰かが斬りかかることだけは阻止したかった。

「私が魔法を使えないせいなの……ごほっ、私が……」

 私を見据える男の目は、そんな、嘘だと絶望に染まっていた。
 まばたきも、動くことすら忘れているようだった。
 ――彼に子供はいるのだろうか?
 ――弟は? もしくは自分と同じ年頃の妹は?
 侵入者の攻撃魔法を受けて大怪我を負った私が思ったことは、『私のせいで暴漢が死罪になってしまう』ということだった。

「誰か……聞いて……殺しては、だめ……」

 私はあまりの出血量に今にも意識を失いそうになりながら、懇願した。
 小さくて何もできない自分の手に、絶望した。
 だがその時、そんな私の手を掴んだのは、私のことを嫌っている三歳年上の婚約者、アンドレアだったのだ。

「エステル」

 どうして、ここに、と私は驚きを隠せなかった。
 王子様が膝をついているところを見たのも初めてだっだ。
 けれど彼に救われたような気持ちになったのは、私の勘違いだったのだ。

「だめだ。は、殺す」

 アンドレアは、無情な一言を放った。
 騎士たちがだめですと反応した。情報を聞き出さなければなりませんと大人たちが止める声が聞こえ、居合わせていた令嬢たちの泣き声が私の鼓膜を叩く。
 アンドレアが、どんな顔で私を見ていたのかは分からなかった。
 薄れていく視界の中、私の血がどんどん彼の白い服に移るのは鮮明に映った。

「私は平気だから……お願い、彼を……彼を助けて……」

 貴族の抗争に巻き込まれて、きっと『ただ脅せばいいだけだから』と仕事を押し付けられたのだろう。
 私が魔法を使えないせいだ、私が悪いのだ。
 私は痛みと熱で朦朧もうろうとしながら懺悔するように涙を流していた。私が泣くような令嬢だとは思わなかったのか、周りの大人達も茶会の出席者たちも動揺している空気は感じていた。
 それでも男を救いたくて私はアンドレアに懇願した。

「……だめだ」


 意識が薄れる中、彼が私の手を強く握る。

「君が初めて必死になって泣いた男……生き残ったら君にとって特別な男になる……俺が……生かしておけるはずがないだろう……」

 アンドレアの声が遠ざかって、うまく聞こえない。
 ただ、彼が私の希望なんて聞いてくれないのは分かった。
 ああ、いつか彼は私のことも平気で切り捨てるのでしょうね……
 私はただ魔力量だけでここにいて、アンドレアが王太子になるための道具でしかなくて――
 無情に殺された名前も知らない男を見て、私はそこに、抗おうにもこの冷酷な王子様への恋心を止められない自分の憐れな未来を予感したのだった。




   第一章 恋した殿下、あなたに捨てられることにしました


 ティファニエル王国で、もっとも生まれや立場に恵まれたエステル・ベルンディ公爵令嬢は、国一番の女性になるだろうと言われた。
 彼女には持って生まれた国内第二位の魔力量のおかげで、素晴らしい未来が待っている。
 ――そう、今でも勘違いしている者は多い。
 この国では聖女と呼ばれる、属性のない純白のとても強い魔力を持った女児がたびたび生まれる。
 生まれるのは名誉なことなので、少しでもその可能性に期待して、貴族はもっぱら魔力量で結婚相手を決めた。
 その次の条件として、容姿もすぐれていれば尚いい、と――
 エステルはそんな文化を冷めた目で見つめていた。

(魔力があっても、魔法を使う才能がなければ宝の持ち腐れだわ)

 それはエステルが何度も陰で言われた言葉であり、なんとも正しい感想だと思っている。
 エステルは国内第二位という魔力量を持ちながら、魔法が使えない公爵令嬢だった。
 そのせいで七歳の茶会デビューで大怪我をし、身体に大きな傷跡が残った。
 しかし、十一年経った今も、魔力量の多さゆえに引き続き王太子の婚約者であり続けている。

「お嬢様も十八歳におなりなのですね。無事に成年をお迎えになり嬉しく思います。このまま健やかにお過ごしいただきたいと使用人一同、思っているのですが……」
「……」

 私室の化粧台の前に腰かけるエステルは、何も答えなかった。
 今日は、させてほしいと言って久しぶりに乳母が、ミルクティー色の髪を丁寧にいてくれた。だが言葉は続かず、静かに泣き出してしまう。
 エステルが鏡越しに、深い紫の瞳を向けてその姿を目に映すと、若いメイドがその役目を代わる。

「どうしても、おやりになるのですか」
「ええ」

 エステルは答えた。もう、覚悟は決まったことだ。
 今日は健康体で目覚める最後の朝だった。倒れることを考えて髪飾りはせず、人目を集めないようドレスも普段より控えめなものにした。
 家族は説得した。屋敷の者たちにも理解を得た。

(……私が恋した殿下、ことを、お許しください)

 逃げることを、どうか許してほしい。
 エステルは窓の向こうの晴れた朝の空を見た。
 もしかしたら、この目に映る最後の景色かもしれない。
 そんな覚悟をして、生まれると同時に決まった結婚相手のことを思い返す――


       ∞・∞・∞・∞・∞


 ティファニエル王国の国民は、生まれた時に必ず魔力量の検査を受ける。
 エステルは貴族だから貴族のことしか分からないが、貴族の子は成長段階でも定期的に確認する。それも魔力を重視するこの国らしいやり方だろう。
 エステルは、国内第二位の魔力量を持っていた。
 魔力量ランキングにより未来の王妃になることが決まった。
 ちなみに第二位と第三位の間には随分と開きがある。
 もちろん王太子アンドレア・レイシー・ティファニエルは、堂々の魔力量ランキング第一位であるが、使える魔法の種類である魔法数ランキングにおいても右に出るものはいなかった。
 幼い頃に決まった、エステルの未来の結婚相手である。
 誰もが「エステル・ベルンディ公爵令嬢を羨ましい」と言ったが――エステルは、恋をしてからずっと惨めな思いで過ごしている。


 アンドレアは、ろくな魔法を使えないエステルを嫌っていた。七歳で正式にアンドレアの婚約者となったあと、魔法学の授業を受けたものの、どんな簡単な魔法も反応しない。

『凄まじい魔力量なのに、魔法が使えないのか?』
『いや、さすがにそれはないだろう』

 貴族たちのみならず庶民も噂したが、それが事実なのだと知られる、ある事件が起こった。
 それは、エステルが魔力を持て余し、後ろめたく感じていた頃のことだ。
 王宮での茶会で、エステルは暴漢に襲われて怪我をした。
 相手もまさか、とは思わなかったのだろう。
 魔力量で政略結婚をする貴族にとって、できて当然の〝防壁の盾〟と言われている防御魔法さえも使えず、エステルは暴漢が放った攻撃魔法により肩から胸、そして腹まで大きくのだ。

(――ああ、ごめんなさい)

 崩れ落ちる刹那せつな、暴漢の目に絶望と動揺を見てエステルは涙をこぼした。
 目の前で少女が飛沫しぶきを上げて倒れる光景は、彼にとって想定外だったのだ。
 魔法が使えない分、エステルは妃教育を頑張っていた。
 暴漢の乱入は、どこかの貴族の差し金だろうとは、ピンときた。公爵家を妬んだ者だろう。
 エステルが魔法を使えないことを指摘し、魔法を使える別の令嬢を婚約者にしてはどうかと言う声も相次いでいた。

(貴族なら誰もが使えるはずの簡単な防御魔法、それさえも使えなかった……)

 エステルは国に『魔力量を持った子を産む』という貢献しかできないがために、アンドレアに疎まれているのは感じていた。
 でも、婚約者として彼に懇願した。

「殺さないで、お願い」

 だが、アンドレアは迷いもせず暴漢をその場で処刑した。
 彼はまだ十歳だった。
 エステルは七歳にして、自分の婚約者となったアンドレアがその年齢で次期国王として尊敬され、そしておそれられている理由を知った。
 そのままエステルは意識を失った。
 次に目が覚めた時、彼女はアンドレアから睨まれ、絶望することになる。

「でん、か……」

 高熱に悩まされた彼女がようやく目覚めて診察を受けていた時、彼はやってきた。
 アンドレアは言葉もかけず去っていった。
 エステルは自分の言葉を聞きたくないと言わんばかりに拒絶する背に、『未来の王妃が、聞いて呆れる』という言葉を想像させられた。
 怪我の痛みが大きくて、敏感になっていたことも理由にあるだろう。
 ただただショックで、涙さえ出なかった。

(……私が、魔法さえ使えたら、こんな事態になっていなかった)

 彼は自分に嫌悪感を抱き、失望したのだとエステルは考えた。
 彼女はすでに、あの王子様に恋をしてしまっていたから。


 エステルには、肩から腹にかけて消えない裂傷痕が残った。

『こちらでやっておく、君は気にしないでいい』

 見舞いだという建前でやってきた二度目の訪問で、アンドレアは痛々しく包帯が巻かれた彼女の傷については触れず、そう告げた。
 そして、すぐに花束を置いてきびすを返した。
 彼にとって、婚約者というだけで事態の収拾に巻き込まれてしまったこともわずらわしかったのかもしれない。幼いエステルはそう思った。

(手間のかかる女と、彼に思われたかもしれない……)

 ――私が結婚相手になったことを、後悔している。
 エステルは怖くなった。
 だから、できるかぎりアンドレアに迷惑をかけないよう揉め事を起こさず、陰口を叩かれても聞こえないふりをしようと決めた。
 アンドレアは、その後エステルが療養している一ヶ月半、訪れなかった。
 誰が見ても二人の仲は冷めきっていた。
 お飾りの王妃になる可能性が高いと見たのか、貴族たちも取り入るのをやめて、療養中のエステルを放っておいてくれた。
 怪我のことをあれやこれやと好奇心で聞き出されるのを想像するだけで辛かったエステルはほっとしたけれど。
 次の社交シーズン、エステルはようやく怪我が癒えて社交界に復帰した。


「そもそもあの二人が結婚するのかどうか分からないぞ」


 あの事件から徐々にそんな噂が広がり始めた。
 妃教育を立派にこなす公爵令嬢。しかしアンドレアがそんな婚約者を公務に同伴させるのは最低限の行事のみ。
 二人で話す様子を見た者はいないとまで囁かれた。
 やはりアンドレアは彼女と結婚する意思がないのではないか。
 そんな噂が強まったのは、アンドレアの成年を祝う、二十歳の生誕式を迎えた時のことだ。

「傷跡は見えないようにしたほうがよいでしょう」
「はい……」

 十七歳、妃教育も残すところ少しとなったエステルは、王宮で国王の側近の一人に注意を受けた。
 王妃が付けてくれていた侍女は侮辱であると怒っていたが、エステルは事実だと受け止めた。
 みにくい傷を見た国民が同情で胸を痛めるのは、祝いの場に相応しくない。
 その前に行われた自分の十七歳の誕生祝いでは、少し無理をして体調を崩していたが、そんな貴族たちの嫌味にも冷静に対応した。

(当日は、倒れないようにしないと)

 魔法が使えないエステルには、魔法による回復があまり効かないという欠点があった。
 治療期間が一ヶ月を越えたのも、傷跡が大きく残ってしまったのも、そのためだ。
 彼女の魔力属性が医療系に特化していたため、エステルは一命を取りとめた。
 彼女の膨大な魔力量は身体を健康的でいさせてくれるのと、傷の治癒能力を早めてはくれたが、一方でもっとも効果がある魔法療法が行えない。
 なんとも皮肉だ、なんとも可哀そうに、と一部の者はエステルに同情した。
 身体は健康だから幸運だとエステルは思うようにしていた。
 妃教育のせいで、兄に便乗して身体を鍛える計画は実行できなかったが、魔法のかかっていない薬やハーブ療法の活用は上達した。

(パレードには出ないと)

 今年も工夫をこらして傷跡を隠し、アンドレアの生誕を祝う式典とパレードに出席する覚悟をしていたのだが――

『参加しなくていい』

 アンドレアから届いたのは、予想外の内容の手紙だった。
 エステルは、自分など不要なのだと突きつけられた気持ちになった。
 彼はエステルがパレードに出なくていい理由を、かなりの日差しと暑さがあるため、と簡潔に書いていた。
 彼の誕生日は夏で、大きな傷跡を完璧に隠すとしたらやや厚着になる。
 父は有り難がりつつも戸惑い、本当に大丈夫なのかと返事を送ったが、王室からきたのはアンドレアも同意したという返信だった。

『国内で王族に次ぐ強い魔力を持った女性だ。慎重に扱った方がいいだろう』

 体調不良のことは把握していると国王の手紙にはあったが、エステルはアンドレアがそんなことを考えたとは思えなかった。
 彼のことだからエステルの体調なんて考慮も配慮もしないだろう。
 嫌っているのだから『婚約者なら務めを果たせ』と考えるはず。

(大事な二十歳のタイミング……これは何かの意思表示ではないの?)

 何か意味があるのだろうかと考え込み、体調がおもわしくないまま当日を迎え、エステルは式典やパレードには出席しなかった。
 日が暮れた夜の舞踏会にだけ出席した。

「公爵令嬢が成年を迎えるまで、あと一年。なのに欠席させたのは、殿下が公爵令嬢を妻にしたくないと考えているからではないか――」

 翌日からそんな噂が一気に広まった。
 エステルは女性の成人である十八歳になるまでの一年、さらに絶望の日々を過ごすことになる。
 アンドレアが噂に対して何もしなかったからだ。
 結婚をこのまま進めるのか、解消するのかさえ口にしない。そうするとあやふやなままエステルは、彼の婚約者として過ごさなければならなくなる。
 それが、つらかった。
 いつ、終わりを突きつけられるのだろうと嫌でも考えてしまう。

(明日、急に婚約破棄されるのか、それとも明後日か――)

 エステルは疲弊した。彼のことを考えるのが、つらい。
 けれどエステルが彼のことを考えざるをえなかったのは、美しい彼に見惚れ、数回の交流と会話で恋に落ちてしまったから。
 そして十年が過ぎても恋心は深くなるばかりだった。
 ――だからこそ、もう無理だと思った。
 翌年、雪がまだ少しだけ残っていた日、エステルは十八歳を迎えた。
 何も希望は抱かなかった。
 結婚の話はない。現状は、変わらずだ。
 恋焦がれ、想いすぎて、自分を明確に拒絶してくれないアンドレアに、エステルは疲れ果てていた。
 ただ、彼が自分をいらないと言ってくれるのを待つ日々。


 成人となった日から一週間が過ぎ、一ヶ月が過ぎ――
 やはり彼は自分と結婚する気がないのだろうとエステルが感じた頃、その話は、最悪なタイミングで出てきたのだ。


       ∞・∞・∞・∞・∞


 魔法数第一位のアンドレアに続き、突如、第二位となった伯爵令嬢が登場した。
 アレス伯爵家の、ユーニ・アレス。ピンクブラウンの髪をした可愛い令嬢だという。
 エステルが成年を迎えてすぐに、ユーニの魔法の才能が開花したことが話題になったのだ。
 それは王太子の婚約者であるエステルが成人したことを、皆が忘れてしまったのではないかと思うほどの盛り上がりだった。
 魔力量も申し分ないうえ、突然の魔法の才能開花。
【聖女】を産める令嬢がもう一人突如現れたと、貴族たちの注目が一気に集まった。
 アレス伯爵家は、我が娘は優秀な子を産めるだろうと大々的に触れ回っているようだ。
 そこで王と謁見する機会を掴んだ彼は、続いてユーニを王太子と引き合わせることに成功する。
 それはよくある話だったが、そこから意外な流れになる。
 アンドレアがその伯爵令嬢といい感じだという噂が、あっと言う間に広まっていったのだ。

(引き合わされたあとも彼が引き続き会っているのね……魔法数が自分に続く彼女の才能を、気に入ったのかもしれない)

 エステルは、疲れ果てていた。

「そう」

 その話を社交の場で振られても公爵令嬢としての涼しげな微笑を崩さなかったが、気分は沈んでいった。
 ずっとつかえてきたメイドたちが、心配してくれた。これまでまったく結婚の気配を匂わせなかった彼だから、女性と交流をしているというだけでかなりの注目を集めた。
 アレス伯爵が娘を連れ、王宮でアンドレアも交えて茶会をしたという話もエステルの耳にまで入った。

(……私とは、社交以外では会ってくださらないのに)

 エステルは、醜い感情で苦しくなった。

「うまくやっているんだろう? お忙しいのだろうか」

 父が、心配そうに様子をうかがってきたのも、エステルの心に重くのしかかった。
 嘘を吐くのが、苦痛だった。
 社交も、必要な公務への同行もきちんとしている。
 でも、いつまで?
 アンドレアが必要としていたベルンディ公爵家の名前は、今や剣術も魔法もまつりごとでも強く支持される彼には必要ない。

(――全部、この魔力のせい)

 ユーニと親しくしているアンドレアに、会いたくない。
 結婚したくないのならエステルを切り捨てればいい。
 社交の場でも、ユーニを連れ歩けばいい――
 それでもエステルを連れるのは、魔力量のせいか。そのせいでまだ彼の婚約者であるせいか。
 ユーニの噂話で、日々神経がすり減っていく。
 エステルはこんなに自分の魔力を嫌だと思ったのは、初めてだった。

(こんな、役に立たないモノ……)

 これがあるせいで、アンドレアをエステルとの結婚に縛りつけてしまっている。

(これさえなかったら私は、彼と出会わずに済んだ。彼も私に縛りつけられることはなかった)


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