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第8話:消えた花嫁と白無垢の謎
しおりを挟むScene1 挙式直前の失踪
都内の老舗結婚式場「縁雅苑」。
庭園から見える朱塗りの回廊を、白無垢姿の花嫁──篠宮あかりがゆっくり歩いていた。
だが、それが最後の目撃となる。
控室で着替えるために姿を消した彼女は、二度と現れなかった。
⸻
Scene2 呼び出される刑事たち
「はいはい、またロマンチックな事件ですねぇ」
和装の式場に浮いている捜査一課の霧島まどか。
ピシッとしたスーツにヒール、そして高身長が妙に目立つ。
「……似合いすぎるぞ、まどか」
小声でつぶやいた橘直哉に、彼女は即座に振り返った。
「聞こえてんのよ、そういうの」
控室の中には、丁寧に畳まれた白無垢の衣装、
そして、血がにじんだ袖の断片、
鏡台には**「この結婚はなかったことに」**という書き置き。
しかもドアは内鍵がかかっており、外部からの侵入は不可能だった。
⸻
Scene3 まどかの地雷スイッチ
「……というか私、さっき式場スタッフに“花嫁さんですか?”って聞かれたのよ」
「え、ああ、それ……まあ似合いそうではあ──」
「橘、今、地雷踏んだわよね?」
「いやいやいや、褒めてるじゃん! それにモデル体型だし!」
「ほら来た、それ。背が高い=和装似合うって、どんな偏見よ」
「すみませんすみません、背が高くて華奢で目立つまどかさん最高です」
「皮肉とヨイショが混ざってるわよ」
⸻
Scene4 容疑者たちの証言
🧍♂️矢吹圭太郎(新郎)
「……あかりがそんなことをするなんて、信じられない。いや、信じたくない」
冷静だが、目の奥に一瞬、異様な焦燥が走る。
🧍♀️久我美優(親友)
「圭太郎さんの過去の話……一応、伝えたの。ちゃんと知っておくべきだと思って」
彼女の声は震えていた。
🧍♀️高原咲(式場スタイリスト)
「白無垢の袖に血……? そんなのなかったはず……」
だが、焦りの色が明らかだった。
⸻
Scene5 トリックの解明
控室の鍵は内側からかけられたように見えた。
しかし、鏡の裏には“古いスタッフ用の隠し扉”が。
まどかがつぶやく。
「……ここ、実は昔、駆け落ちカップルが逃げたって噂があったらしいわ。
その名残ね」
さらに血痕を鑑識が調べた結果──傷は自分の指の切創で、
袖についた血は演出と判明。
「まさか……自分で切ってまで?」
「そう。きっとこれは、“自分がここにいた証”として残したかったのよ」
⸻
Scene6 まどかとあかりの対面
あかりは式場近くの旧館、かつてスタッフ用控室だった場所で発見された。
一人で、膝を抱えて座っていた。
「私は、式をやめたかった。でも黙って逃げるのは嫌で。
せめて、“私がちゃんと決断した”って形を残したくて──」
「だから血を?」
「うん。怖かったけど、やっと自分の人生を、自分で選べた気がしたの」
まどかはゆっくり、あかりの横に腰を下ろす。
「大丈夫。あなた、ちゃんと進めてるわよ」
⸻
Scene7 エピローグと恋の小波
式の片づけが進む会場の外。
まどかと橘が並んで歩く。
「白無垢って、私に似合うと思う?」
「……また地雷聞いてくるの?」
「答え方次第で、明日の私の機嫌が決まるわよ?」
「はいっ! 誰よりも似合います! 俺の寿命が縮むレベルで!」
「よろしい」
その横を、またしても現れた栗原瞬が涙ぐんで通り過ぎる。
「橘さん……どうか、どうか幸せになってください……っ!」
「……何のフラグだよ」
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