4 / 7
宝石魔術
しおりを挟む
「今のはいったい……」
「あれは宝石魔術さ。色によってその強さが変わってね、サファイアなら“打撃”ほどの力。エメラルドなら“斬撃”と同等……ルビーなら“大砲”となる。
ダイヤモンドなら計り知れない力を発揮するよ。あと黄金もね」
あの衝撃は、剣の斬撃に匹敵するんだ。
だから、あんな衝撃で伯爵を吹き飛ばしたんだ。嵐のような凄い威力だった。
お店の中へ戻り、エゼル様は気を使って椅子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「安静にするんだ、ファウスティナ。君の足の捻挫はまだ治っていないのだから」
「はい、大人しくしています。……ところで、エゼル様はどうしてこのようなお店を? 失礼ですが、公爵様ならわざわざお店を開く必要はないのでは」
「魔術師の家系に生まれた僕は、不自由なく生活を送れた。でも、それは与えられたものだ。自分で得たものではない。
だからね、僕は自分の力で何かを成し遂げたかったんだ」
なんて素晴らしい。
帝国の上流貴族は裕福すぎるが故に、一生安泰と言われているほどなのに。
なにもしなくとも自由な生活を送れる。
なのに、彼は違った。
公爵という爵位をお持ちなのに、身分に囚われない生活をしていた。そんな彼が少し遠く感じた。
……わたしは貧しい環境から、あの栄光のような日々を手に入れた。黄金が全てを変えてしまった。
権力、欲望……。
腐敗していく身の回り。
うんざりだった。
わたしは、誰かの“道具”ではない。
意思を持ち、己の幸せを願うただの少女。
なのに。
――なら、わたしは自分で自分の道を決める。
「エゼル様、わたしも何かをしてみたい」
「ファウスティナ……」
「微力ながら、お店を手伝わせて欲しいのです。お願いです。一生懸命働きますから」
「……分かった」
「本当ですか!」
「君のその真っ直ぐな視線に負けたよ。よろしく」
微笑んで握手を求めてくるエゼル様。
わたしはドキドキしながらも手を重ねた。
大きくてたくましい右手。
ちょっと顔が熱くなった。
「よろしくお願いします」
「ファウスティナ、顔が赤いよ?」
「……ッッ! だ、だ、大丈夫です。ちょっと疲れているのかもしれません」
「そうか。なら、二階のベッドまで運んであげるよ」
「ちょ、ちょぉ……」
またお姫様抱っこされてしまった。
エゼル様の包容力には……負ける。
丁寧に、
繊細に、
僅かな揺れもなく、わたしを運んでくれる。
時折見せてくれる熱い眼差し。
この人と一緒にいたい……そう思えてきた。
わたし、どうしたの……?
この感じたことのない胸の高鳴りは何なの。
「あれは宝石魔術さ。色によってその強さが変わってね、サファイアなら“打撃”ほどの力。エメラルドなら“斬撃”と同等……ルビーなら“大砲”となる。
ダイヤモンドなら計り知れない力を発揮するよ。あと黄金もね」
あの衝撃は、剣の斬撃に匹敵するんだ。
だから、あんな衝撃で伯爵を吹き飛ばしたんだ。嵐のような凄い威力だった。
お店の中へ戻り、エゼル様は気を使って椅子を出してくれた。
「ありがとうございます」
「安静にするんだ、ファウスティナ。君の足の捻挫はまだ治っていないのだから」
「はい、大人しくしています。……ところで、エゼル様はどうしてこのようなお店を? 失礼ですが、公爵様ならわざわざお店を開く必要はないのでは」
「魔術師の家系に生まれた僕は、不自由なく生活を送れた。でも、それは与えられたものだ。自分で得たものではない。
だからね、僕は自分の力で何かを成し遂げたかったんだ」
なんて素晴らしい。
帝国の上流貴族は裕福すぎるが故に、一生安泰と言われているほどなのに。
なにもしなくとも自由な生活を送れる。
なのに、彼は違った。
公爵という爵位をお持ちなのに、身分に囚われない生活をしていた。そんな彼が少し遠く感じた。
……わたしは貧しい環境から、あの栄光のような日々を手に入れた。黄金が全てを変えてしまった。
権力、欲望……。
腐敗していく身の回り。
うんざりだった。
わたしは、誰かの“道具”ではない。
意思を持ち、己の幸せを願うただの少女。
なのに。
――なら、わたしは自分で自分の道を決める。
「エゼル様、わたしも何かをしてみたい」
「ファウスティナ……」
「微力ながら、お店を手伝わせて欲しいのです。お願いです。一生懸命働きますから」
「……分かった」
「本当ですか!」
「君のその真っ直ぐな視線に負けたよ。よろしく」
微笑んで握手を求めてくるエゼル様。
わたしはドキドキしながらも手を重ねた。
大きくてたくましい右手。
ちょっと顔が熱くなった。
「よろしくお願いします」
「ファウスティナ、顔が赤いよ?」
「……ッッ! だ、だ、大丈夫です。ちょっと疲れているのかもしれません」
「そうか。なら、二階のベッドまで運んであげるよ」
「ちょ、ちょぉ……」
またお姫様抱っこされてしまった。
エゼル様の包容力には……負ける。
丁寧に、
繊細に、
僅かな揺れもなく、わたしを運んでくれる。
時折見せてくれる熱い眼差し。
この人と一緒にいたい……そう思えてきた。
わたし、どうしたの……?
この感じたことのない胸の高鳴りは何なの。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
164
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる