ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗

文字の大きさ
25 / 64

第25話 皇剣

しおりを挟む
「へえ、経験値クリスタルの商売をね」


 エドウィンは、俺の話にずっと耳を傾けていた。興味深そうに相槌を打っては、ご満悦の様子だった。


「というわけで、金銭面の補助はこちらで何とかなる。あんまり、お世話になるわけにもいかないからな」


「素晴らしい心がけだよ。そうやって自ら稼ぐ、それは悪くない事だし、ちゃんとした労働の対価だ。レイジ、これからはどうする?」


 そう聞かれ、俺はやっぱりこれしかないと思った。


「不穏分子の排除かな」
「いいねえ、そうしてくれるとこちらも有難い。もうすぐ戦いも始まるだろうしね。ルシア様、彼をよろしく」


「お任せください、エドウィン様。ひとまず、サンダーボルト家に注意すればよろしいですね」


「その通り。あとは頼むよ二人共」


 相変わらず多忙の身らしく、エドウィンは爽やかな笑顔で去った。本当に毎度毎度、忙しいヤツだなぁ。



「ところで、ルシア、サンダーボルト家について詳しいの?」


「ええ、たまにエドウィン様のお手伝いをしていましたから。だから、ある程度は熟知しているんです。サンダーボルト家は、三大騎士の中でも特に秀でている存在です。当主の名はシャロンです」


「シャロン? 女性か」

「ええ、少女です。わたしと同じくらいの」

「マジかよ。凄いな……」


 少女で三大騎士とか、どんな女の子なんだか。今のところはイメージがまったく湧かないけど、そのうち遭遇する機会もあるのだろうか。


 ◆


 身体を鈍らせるワケにはいかないと、俺は庭に出て素振りを続けた。庭が広いからランニングもしたり、少しずつメニューも強化していった。


 それを見守るルシアの姿。
 ちょっと淋しそうだ。


「ルシア、無理に俺なんかに付き合う事ないよ。見ていてもつまらないだろう」
「そんな事ありません。レイジさんを癒すのも、わたしのお仕事です」


 ヒールと、癒しの力で俺を回復してくれる。
 おかげで体力も戻り、疲れも取れた。

 けれど、やっぱりルシアは切なそうだった。


「そんな顔するなって」

 頭を撫でようとすると、ルシア自ら抱きついて来た。


「淋しいです」
「……ルシア」
「ご、ごめんなさい。レイジさんの邪魔をするつもりはなかったのに……わたし」


 ルシアは俺から離れて背を向けて、屋敷に戻った。


「…………」


 そっか、淋しい思いをさせちゃったか。


 トレーニングを中断し、屋敷内へ戻ると執事のカールさんが渋い顔で通路を指さしていた。そっちにルシアが行ったのか。


 ありがたい。


 ◆


 ルシアの部屋の前。
 ノックして失礼した。


「入るぞ」


 中へ入ると、女の子が着替え中だった。



「あれ……」
「え……誰?」



 ん!?
 おかしい、ここはルシアの部屋だったはず。別の誰かがいた。しかも女の子。見たことも無い桃色髪の。

 というか、このままはマズイ。


「し、失礼しましたッ!」


 扉を閉めて出て行こうとしたが、首襟を掴まれた。


「うわ!?」
「ふぅん、お主が噂のレイジか」
「――な、ちょ、下着姿でっ!」


「これくらいで喚くな。そうか、ルシアの自慢の男がコイツとはな」
「なっ、ルシアを知っているのか」


「当たり前だ、彼女はある界隈でも有名でね。ルシアが入れ込む理由も分かるな。レイジ、お主は三大騎士になりたのかい」

「それは違う。俺は……」


 俺はそうだ、何になりたいんだ?

 騎士団を追放され、行く当てもなかった。

 今はライトニング家でなんとなくお世話になって、なんとなく上を目指している状況だった。本当にこれでいいのか。


「迷いがあるようだな」
「迷い……俺が?」
「ルシアの事、これからの事、不安要素が沢山あるようだな」


「な、なぜ分かる」


「フン、そういうスキルだよ。あたしはある程度の心を読める。完全ではないがね」


 心を読む……すげぇな。
 ていうか、この子は何者だよ。


「俺はどうすれば」
「お前は帝国最強の皇剣を目指すがいい。それがルシアにとっての救いともなろう。彼女は言っていたのではないか……連れていってくれと」


 ――――。


 そうだ、あの病室で……
 ルシアはそう言っていた。
 俺は今やっと思い出した。


 そして、最近のルシアの『淋しい』という感情。
 思えばあれは、なにか俺に伝えたかったのかもしれない。口では、言葉では現せない何かがあるのかも。だから、ああやって行動で示していたのかも。


「皇剣……それになれば、ルシアはどうなる?」

「言ったろう、救われると。彼女はある呪いに蝕まれているのだよ。いいか、レイジ、お前はその呪いを解く為に、これから奮闘するがいい」



 呪い、呪いって何だ。
 なんの事だ。
 俺は何も聞かされちゃいないぞ。



 俺の横を通り過ぎる桃色髪の少女。


「なあ、キミ――あれ、いない」


 気づけば、少女の姿はなかった。


 ……皇剣。
 俺はルシアの為なら、なんだって……出来る。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...