ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗

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第26話 狂人

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 思えば、淋しいってそういう意味だったのかもしれない。とにかく、今はルシアを探さなきゃ――。


 屋敷中を探し回ったけど、姿はなかった。


「……くそっ、ラティに聞いても分からなかった」


 どこへ行ってしまった。
 外か……?


 俺は気になって屋敷の外へ出た。
 夜の帝国は危険だ。
 治安も良いとは言えない。
 油断すれば、ゴロツキに絡まれるなんて日常茶飯事。金品を奪われるなんて、当たり前にある。


「……暗いな」


 ショートカットの為、裏路地を進んでいく。目指すはケラウノス騎士団。まずは、そこの病室だ。あそこに戻っている可能性はある。


「……ルシア、どうして俺の前から居なくなる。気にする必要なんてないのに」


 焦っていると、三人の男が進路を塞いだ。


「……ククク」
「兄ちゃん金を出して貰おうか」
「抵抗すりゃあ、死ぬぜ」


「うるせええええええッ!!」


 俺は容赦なく三人組をブン殴り、対処した。


「ぎょえええええええ!!」
「ぐぉぉぉおぉぉぉぉお!!」
「はぶぁわぁぁぁああ!!」


 邪魔をするヤツは誰であろうと許さん。


 ◆


 ケラウノス騎士団に到着。
 門を飛び越え、一気に病室へ向かった。

「ここだ」

 ノックせず扉を開けていく。


「ルシア、ここに戻っているのか?」
「…………」

 そこには――



「フフフフフ……よくぞ来てくれた」

「なっ、お前……」


 驚いた。
 病室の中には、まるで別人の姿となった半狂乱のカイルがいた。ルシアを人質に取り、こちらを充血した眼で睨む。


「……お前、カイルなのか」

「あぁ、精神病棟から抜け出して来た。騎士団に戻ってみれば、ちょうどこのクソチビ銀髪女がいたのでな。レイジ、お前はこの薄気味悪ィ、枢機卿カーディナル様を随分と気にっているようだな。ずっと見ていたぞ」


「てめぇ……! ルシア、ケガは!?」
「……ごめんなさい。ごめんなさい。わたし、レイジさんにご迷惑を」
「そんなのいい! 俺はキミが無事ならそれで!」


 そうだ、ルシアの身が何よりも大事だ。
 俺がもっと構ってあげられていれば――。


「さあ、復讐の始まりだ!! レイジ、まずはお前の手足をへし折手やる! それから目玉をくり抜き、内臓をぶちまけてやる! ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


 イカれてやがる。
 あの決闘後、相当イカれちまったようだな。


「俺はどうなってもいい。その子だけは放せ」
「いいだろう。では、まずは自分で自分を刺せ! それでまずは第一歩だ」

「分かった」

「レイジさん! 馬鹿な真似は止めて! 自分を大切にしてください! わたしなんて、わたしなんてどうでもいいんです!」

「どうでもいいわけないだろ! ルシアが誰よりも大切だ。ルシアが世界一大切だ。ルシアがいたおかげで俺は今がある。お前がいないとダメなんだ!!」


 だからこそ――!


「うあぁぁぁぁああ!」


 刀を抜き、刃を腹へ――。


「――――…、これで満足か」


 いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、くっそいてぇ……。血が滴っている。床が血塗れになっている。エグほどの激痛。
 意識がぼうっとなっていく。


「…………あぁ、くそ」


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! すげぇ、すげぇ、すげ、すげぇ、すげぇよお前!! レイジ! レイジお前はすげぇ! 雑兵だったお前に、そんな覚悟があったとは!! 褒めてやらないとなぁ、褒めてやらないとなァ!! お前はスゲェよ!!」


 ザクザクザクッと左腕が斬られていく。


「…………くぁっ!?」


 まず、腕が斬り落とされる。



 ――――本当にこれでいいのか?



 彼女は今、悲しんでる。
 大粒の涙を流し、叫んでいる。


 ――ダメだ。


 悲しませちゃダメだ。


「カイル……左腕くらいくれてやる!! うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「――なっ、お前……お前ェ、左ないのに! ないのに!! ウヒャアアアアアア!!」


 既に左腕は無くなっちまった。
 でも、まだ右腕がある。

 刀を握って、俺はカイルの左肩に――!


「たぁぁぁぁ!」


「ぐうおおおおおおおおおぁぁぁ……! ぁぁあ、いでえ、いでええ、いでえええええ、血がブシューブシュブシュー!!」


「これで――」


「でも実は痛くなぁぁぁぁぁあぃ!!」


 コイツ、狂っちまった影響で痛みがないのか!


「レイジ、この銀髪の女をお前の目の前で殺す!」


 剣をルシアに向けるカイル。
 あとほんの数センチのところで刃が心臓に達する寸前――俺は刀を思いっきりブン投げた。


「――――なっ、ぐおぉぁぁぁあぁあああ!」


 今度は腹部に命中。
 壁に激突して、そのまま釘付けになった。


「終わった、か」
「……レイジさん、レイジさん!」

「ルシア、無事で良かった」
「……レイジさん左腕が……今、ヒールで。いえ、グロリアスヒールで繋ぎます」

 最上級の治癒魔法か。
 どんな傷でも癒すという聖女の奇跡だと聞いたことがある。それを目の当たりにできるとはな……。そして、俺の腕は本当に繋がって、傷も癒えた。

「こんな回復力があるだなんて……助かったよ、ルシア」
「レイジさん」

 泣きながら抱きついてくるルシアを、俺は優しく包み込んだ。ああ、ずっとこうしたかった。

 油断していると、


「…………ぐ、ぐぐぐぐ、ぐぐぐぐぐぐ! レイ、レイ、レイジィ……俺はまだ死んでねえええぞぉぉぉぉ!」


 嘘だろ……。
 そのまま抜け出して来やがった。

 ヤツの腹部は完全に穴が開いていたのだが、それでも生きていた。……普通、死ぬだろ。どうなってんだよ。


「くそっ、良いところだったってのに! ひとまず逃げるぞ、ルシア!」
「……はいっ」


 あれは普通には倒せない。
 あの精神異常といい、きっともう彼は、カイルは人間ではないのだ。……誰だ、誰がカイルをバケモノにしたんだ――?
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