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No.1の男の末路/ホスト、輪姦
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痛む身体を引き摺って、ハヤトは『The stariest』の門を潜った。
汚れたハヤトの服を見て黒服がすぐさま駆け寄り肩を貸す。開店時間をかなり遅れていたこともあり、常連客がこちらを見て騒ぎ立てているのをハヤトは遠い目で見つめた。
好奇の目に晒されながらやっとの思いで更衣室に辿り着いたハヤトは、ソファーに身を沈め大きく溜息を吐く。最後までされなかったものの、性的に嬲られたことによるストレスと外傷のせいでまだ出勤したばかりだというのにハヤトはもう疲労困憊で今にも眠りについてしまいそうだった。静かに目を閉じたハヤトを見て黒服が焦ったようにドタバタと部屋を後にすると、すぐに数人を連れて戻ってきたのを薄目を開けたハヤトが出迎えた。
「ハヤト、お前またか」
店長の霧島が一歩前に出ると、ハヤトの胸倉を掴みそう言った。
おどけたように肩を竦めて見せるハヤトを見て、霧島の後ろにいたホスト達が声を荒げ野次を飛ばす。
「勤務外で何したって俺の勝手だろ」
ハヤトは不興顔を隠さずそう言うと霧島の手を振り払いスーツを払って軽く整えた。
店では唯我独尊を貫き通していたハヤトにとって、裏で暴力を振るわれていることは絶対に知られたくないことであった。だから店に関係する者にこのことを言ったことは一度もない。そんなハヤトの気持ちを知ってか知らずか、嫌がらせを行う者たちが店に押しかけたり密告したりすることも今まで一度もなかった。だから、ホスト達はおろか店長や黒服ですら知らないのだ。ハヤトが傷付きながらも守っていることを。
身寄りのいないハヤトを拾ってくれた霧島に、自分が唯一帰る場所である店に、迷惑が掛かることも惨めな姿を見せることも絶対にしたくない――、ハヤトにとって家族である彼等に失望されたくないという思いだけが十年という長い期間を耐え忍ぶことを可能にしてきたのだ。
その健気さもハヤトの傍若無人な態度によって、痴情の縺れだと勘違いされているのだが。
だが、そんなハヤトに一番聞きたくない言葉が霧島の口から紡がれた。
「ハヤト……もうやめよう」
「は? なにをやめるんだよ」
「もう店には来なくていい」
「え?」
「ハヤト、お前はクビだ」
思ってもみなかった言葉にハヤトは目を見張った。一番避けたかった事態にみっともなく両の手が小刻みに震える。
ハヤトが縋るように見上げた霧島は見たこともないような無表情でハヤトを見下ろしていた。絶望に顔を青くするハヤトを素知らぬ振りでホストの一人が腹を蹴り上げた。ソファーに座っていた身体は床に倒れ込み、囲むようにしてホスト達がハヤトを見下ろす。ハヤトを慕っていた後輩のシュン、ライバルとして切磋琢磨してきた二番手のマサヤ、黒服時代からの同期だったリュウジと、ハヤトが家族同然に思ってきた大切な仲間たちが親の仇でも見るような渋面をしてハヤトを睨みつけていた。
マサヤがハヤトの前髪を引き千切れることも構わずに思いきり掴んだ。うつ伏せの身体が合わせるように引き上げられると、無理矢理上げさせられた顔を苦痛に歪めてハヤトが痛みに小さく唸った。
「やめる前にちょっと付き合えよ、ハヤト。今までの鬱憤、晴らさせてもらうぜ? ……たっぷりな」
汚れたハヤトの服を見て黒服がすぐさま駆け寄り肩を貸す。開店時間をかなり遅れていたこともあり、常連客がこちらを見て騒ぎ立てているのをハヤトは遠い目で見つめた。
好奇の目に晒されながらやっとの思いで更衣室に辿り着いたハヤトは、ソファーに身を沈め大きく溜息を吐く。最後までされなかったものの、性的に嬲られたことによるストレスと外傷のせいでまだ出勤したばかりだというのにハヤトはもう疲労困憊で今にも眠りについてしまいそうだった。静かに目を閉じたハヤトを見て黒服が焦ったようにドタバタと部屋を後にすると、すぐに数人を連れて戻ってきたのを薄目を開けたハヤトが出迎えた。
「ハヤト、お前またか」
店長の霧島が一歩前に出ると、ハヤトの胸倉を掴みそう言った。
おどけたように肩を竦めて見せるハヤトを見て、霧島の後ろにいたホスト達が声を荒げ野次を飛ばす。
「勤務外で何したって俺の勝手だろ」
ハヤトは不興顔を隠さずそう言うと霧島の手を振り払いスーツを払って軽く整えた。
店では唯我独尊を貫き通していたハヤトにとって、裏で暴力を振るわれていることは絶対に知られたくないことであった。だから店に関係する者にこのことを言ったことは一度もない。そんなハヤトの気持ちを知ってか知らずか、嫌がらせを行う者たちが店に押しかけたり密告したりすることも今まで一度もなかった。だから、ホスト達はおろか店長や黒服ですら知らないのだ。ハヤトが傷付きながらも守っていることを。
身寄りのいないハヤトを拾ってくれた霧島に、自分が唯一帰る場所である店に、迷惑が掛かることも惨めな姿を見せることも絶対にしたくない――、ハヤトにとって家族である彼等に失望されたくないという思いだけが十年という長い期間を耐え忍ぶことを可能にしてきたのだ。
その健気さもハヤトの傍若無人な態度によって、痴情の縺れだと勘違いされているのだが。
だが、そんなハヤトに一番聞きたくない言葉が霧島の口から紡がれた。
「ハヤト……もうやめよう」
「は? なにをやめるんだよ」
「もう店には来なくていい」
「え?」
「ハヤト、お前はクビだ」
思ってもみなかった言葉にハヤトは目を見張った。一番避けたかった事態にみっともなく両の手が小刻みに震える。
ハヤトが縋るように見上げた霧島は見たこともないような無表情でハヤトを見下ろしていた。絶望に顔を青くするハヤトを素知らぬ振りでホストの一人が腹を蹴り上げた。ソファーに座っていた身体は床に倒れ込み、囲むようにしてホスト達がハヤトを見下ろす。ハヤトを慕っていた後輩のシュン、ライバルとして切磋琢磨してきた二番手のマサヤ、黒服時代からの同期だったリュウジと、ハヤトが家族同然に思ってきた大切な仲間たちが親の仇でも見るような渋面をしてハヤトを睨みつけていた。
マサヤがハヤトの前髪を引き千切れることも構わずに思いきり掴んだ。うつ伏せの身体が合わせるように引き上げられると、無理矢理上げさせられた顔を苦痛に歪めてハヤトが痛みに小さく唸った。
「やめる前にちょっと付き合えよ、ハヤト。今までの鬱憤、晴らさせてもらうぜ? ……たっぷりな」
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