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拗らせ初恋は厄介です(前編)
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しおりを挟む「可愛い、優さん」
努めて冷静にと思っていた矢先、可愛いと呟いた橘くんにぎょっとして目を見張った。何言ってんだコイツ。と思うより早く屈辱で怒りが沸き上がってくる。
突然押し倒されて、腹を勝手に弄られた挙句、可愛いだとぉ? このガキ、どこまで俺のこと貶したら気が済むんだよクソが!
今までのことも積もり積もって腸が煮えくり返って頭が沸騰しそうだ。怒りに任せ、取り繕っていた言葉もかなぐり捨てた。
「30のおっさん捕まえて何がっ……可愛いだ、この変態野郎!」
「それが本性なんですか? ……ふふ、解釈一致だなぁ。嬉しい」
「解釈? 訳わかんねぇこと言ってねーでっ、さっさと、離しやがれっての!」
「嫌です。俺、貴方を落とすって決めたんで」
「はぁ!? 落とすってッ、ひぃッ!」
唐突に乳首を弾かれ甲高い声が口から漏れた。橘くんは目を細めると、つーっと爪の先で乳首の周りをくるくると円を描いてなぞり始めた。
1周、2周、3周と、なぞる回数が増えていくにつれて、触られてもいない乳首が感度を増してじんじんと主張していた。見なくても分かるくらいソコはコリコリに勃ち上がって、触ってくれと言わんばかりにヒクヒクしている。
今、また乳首弄られたら、俺っ……。
やばいと、抵抗を激しくした次の瞬間には、橘くんの指先が乳首を捉えるのが見えた。
そしてついに、敏感なソコを指先が掠め、身体を甘い痺れが突き抜けた。
「ぁんっ」
一瞬誰の声だか分からなかった。それくらい高く甘えた女みたいな声だった。
それが俺の声だと気付いた瞬間、頭から湯気がでてしまいそうなくらいにカーッと火照ってしまい全身が熱くてたまらない。
――クソっ……今の俺の声かよ、恥ずぃ……。
「フッ……」
「テメェ、今笑ってッ、ン! 急に触んなっ、やめっあっ」
馬鹿にしたように橘くんが笑い、固いソレをクニクニと指先で捏ねる。乳首を弄られるとどうしても漏れ出る甘い吐息を我慢できない。もう絶対に声を出すまい、と奥歯をキツク噛み締める。
グリグリと潰すように乳首を押されて腰がズンと重く、心臓が苦しいくらいにドクドクと脈を打って息が上がった。
つま先を丸めるだけでは快感を逃すことが難しくなってきた俺は、手足を更に動かして抵抗した。それもすぐに意味を失くし、ずりずりと足裏でソファーを押すに留まった。迫りくる快感に流されないように唇を噛みしめた時、橘くんの指先が唇をなぞった。
「ダメだよ。傷付いちゃう」
「うるせぇっ! お前が離せっ、んぐッ! げほっ……ンっやめお、ぁ、ンンっ」
なぞった指を急に突っ込まれて噎せる。橘くんはそんなことお構いなしに口内を指先で蹂躙し、飲み込めなかった唾が口の端を伝い零れ落ちた。当然閉じられない口からは甘い嬌声がぽろぽろと止まらない。
――手が出せないからって、無茶苦茶しやがって……クソ!
嗚咽で涙が滲む瞳で橘くんを睨みつけた。
口から指が引き抜かれた後、乱れた息を整えていると今度は湿った感触が乳首を襲った。指先とは、比にならない。
「ぁっ、舐めんじゃねぇっ、んぅっ!」
「優さん乳首敏感なんだ」
「吸うっなぁ、くっ、ンン」
橘くんは乳首を唇で挟み込むと、ちゅっちゅと卑猥な音を立て吸った。
一際強い痺れにも似た快感が身体を突き抜け、堪らず背が弓のようにしなった。それが胸を橘くんの唇へ押し付ける形になってしまい、彼はすかさず挟むだけだった乳首を口に含んだ。
ぢゅううううう。
舌全体を使われ擦りながら吸い上げられる。
喘ぎを止められず上手く息が出来ない。頭がぼーっとし始め、キャパオーバーで思考が固まった。
下半身に熱がぎゅーっと集まって固く主張を始める。
流石に無視できない。きっと橘くんも気付いてる。恥ずかしい。
恥辱のあまり目頭が熱い。散々弄られた乳首は赤く熟れて女みたいに大きくなっているだろう。
ようやっと口を離した彼は見せつけるように舌なめずりをした。そして今度は反対側の乳首に舌を伸ばそうとしたのが見えて、慌てて彼の髪を掴んで引っ張った。
快感で震える手に力を入れて奥に押し上げる。
後ろに頭を倒された橘くんと目が合った。まるで飢えた獣のように瞳をギラつかせる彼が恐ろしく喉から引き攣った声が漏れ出る。
蛇に睨まれた蛙とは正にこのことだ。目を逸らせば捕食されてしまいそうで、体は緊張で竦み指先1つも動かすことが出来ない。
髪を掴んでいた手を橘くんが優しく剥がした。嘲笑うようにゆっくりと彼の顔が近付いてくる。
橘くんの手が左耳の淵を掠めて後頭部へ、もう片方は頬に添えられると、焦らすように接近する彼の鼻先がゆっくりと俺の鼻先に触れた。
俺は未だその瞳から視線を逸らせずにいて、何故か吸い込まれてしまったかのようにただ見返すことしか出来ない。
ついに彼の吐息が唇に掛かった。
そして、囚われた瞳と見つめ合ったまま静かに唇が重なる。
「優さん……」
「ンっ……はぁっ……」
優しく甘い声で橘くんが俺の名前を呼んだ。
食むようにちゅっちゅっと角度を変えて触れ合うだけの、恋人同士のためにある甘い口付けが俺の思考を溶かし蕩けさせていく。
浅かったキスの間隔は次第に早まっていき、唇の潤いが増してちゅぱちゅぱとリップ音が響き俺の羞恥心を更に煽った。
****
後編に続きます!
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