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第11話 今日の終わり

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3人が獣の如く去って行った後、俺はゆっくり部室に向かって歩いていた。
時間はすでに午後6時を回ろうとしていた。
窓からは夕陽が差し込み、廊下が夕陽色に染っている。

「はぁ、今日も疲れた」

俺は独り言をつぶやいた。
周りには誰もいない。

「お疲れのようですね」

「ふわぁ!?」

突然1人っきりの廊下で女が話しかけてきた。
俺は驚きのあまり、変な声を上げてしまった。恥ずかしいことこの上ない。

というか誰?

俺は初めて聞く声の主を見た。
この短い学校生活で初めてみる女の子だった。
服装は白衣姿に、何ともダサめな大きな丸メガネをかけ、髪は腰近くまで伸びた女の子。その特徴に加えて、目の前の女の子の身長は紅羽ちゃんと変わらないくらい低かった。まるで中学生の様な見た目をしていた。

「えっと……」

俺は言葉に詰まる。なぜなら、目の前の女の子は中学生の様な身なりなのに、あるものが白衣の胸元に付けられていたからだ。

「……先生ですか?」

「そうですよ、よく分かりましたね!」

少し笑顔になった様に見えた。
その身なりでは完全に子供にしか見えな。

「その胸」

俺は目の前の先生の胸元に付いたバッジを指差した。

「あぁ、このバッジで分かったんですね」

先生はそう言いながら納得した顔をした。
そうそのバッジは教師バッジと言われるものだ。この学校でだけ実施されている教師を証明する証のようなもので、教師は全員バッジを持っている。しかしながらバッジを付けずとも教師かどうかは判断できるため普段教師バッジを付けている教師は少ない。
逆に知らない生徒も多いのかもしれない。俺は学人から教えてもらったので、知っていたわけだが。

「ええ、教師バッジ付けてたら流石に分かります」

「そっか、そうだよね」

先生は少し残念そうに言った。
さっきからよく顔にでる先生だ。だが、残念がる理由はさっぱりわからない。

「それでどうしてそんなに疲れていたのですか?」

先生は俺の顔を下から覗きながら本題に戻った。

「ちょっと世話がやける奴らが居まして、色々あって疲れただけです」

「そうだったのですか……貴方は優しいのですね」

そういうと先生は俺の頭に手を乗せ、頭をなでなでし始めた。
俺は恥ずかしくなったが、目の前の先生が背伸びをして頑張ってなでなでしている姿が可愛くて微笑ましかった。

「ありがとうございます」

俺は感謝を伝えた。なでなでが終了するのを待ってから。

「元気になりましたか?」

「えぇ、先生のおかげで元気出ました」

「それは良かったです」

先生に感謝しながら、俺はその場を後にした。先生は微笑みながら、手を振ってくれた。
あんなにいい先生が居たんだな。
俺は部室に向かって歩きながら、先生の名前を聞き忘れたことを後悔した。
まぁ、どうせこの学校の先生ならまた会えるだろう。俺はそう思いながら、帰路を急いだ。
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