詐欺るシリーズ「冤罪！幾重にも塗り替えられた真実」

純真の決意

風呂から上がった純真は何かを決意した様に携帯を取り出した。
そして新谷からこの前交換した名刺を取り出して、新谷にその携帯から連絡を取った。
「トゥルルル、トゥルルル…」
二度のコールで新谷の声が聞こえた。
「はい、新谷です」
新谷は小比類巻警視正からの電話である事は携帯番号を見た時に察した。
小比類巻があの手紙を読んでどの様な助け舟を出してくれるのかを期待と不安半々で待っていたのだ。
もう連絡を入れた以上、この人に隠し事はできない。
この時には自分と自分の家族の事しか考えることが出来なかったのである。
まさか警視正の身に何かあるだなんて考える余裕は全くなかったのだ。
「もう大丈夫だ。
君は何も心配しなくてもいい。
君の知っている事、全てを包み隠さず私に話してくれ。
もちろん君の家族のことは私が責任を持ってお守りする！」
小比類巻は新谷の家族の安全を約束して、ジェーン斎藤を捕まえることに協力する様に新谷に伝えたのだった。
新谷にしてみれば、警視正である小比類巻純真が守ってくれるのであれば、ジェーン斎藤とて恐れることはない。
その時はそう思っていた。
いや、信じていたのだ、日本の警察の力を…。
そう信じていたからこそ、純真に今までの全ての事実を話したのだった。
その話を聞いた純真は、新谷と新谷の元妻と娘の警護をするように部下に指示した。
そして新谷にジェーン斎藤との接触を試みることを指示したのだった。
その指示通りに新谷は動くことにした。
まずはジェーン斎藤からの連絡があればすぐに連絡することだったが、それからしばらくはジェーンが渡した携帯が鳴ることはなかった。
新谷や新谷の家族に警備がついていることをジェーンがわからないわけはなかった。
新谷にしてみればそれは当然のことだったが、もう後戻りはできない。
新谷は久々にドロンに行くことにした。
もちろんそのことは純真には話した。
わからない様に警備をつけてくれることも話はついていた。
新谷は二週間ぶりにドロンのドアを開けた。
そこに見た光景は新谷にとって信じられないことだった。