詐欺るシリーズ「冤罪!幾重にも塗り替えられた真実」

黒崎伸一郎

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新しいドロン

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「いらっしゃいませ」
店のドアを開けると同時に店内から声が聞こえた。
新谷は店に入った瞬間「ハッ!」と思った。
全く店内の内装が全く変わっている。
改装したのは間違いない。
だが、店名はドロンのままだ。
まず最初にカウンターの中を見てマスターを探した。
「マスターは…?」
カウンターの中にいた三十代であろうオタクっぽい髪型をした男性に聞いた。
「マスターは私ですけど…」
その男性は新谷を見るなりそう答えた。
ドアの前で立っていた新谷は少し頭を傾げながらカウンターに座った。
辺りを見渡すと見慣れない客が三人ほどすわっている。
店員とみられる二十代前半であろう女性と何やら話し込んでいる。
「ビールをください…」
カウンターに座ったからには何か注文しなくてはならない。
とりあえず新谷はビールを注文した。
カウンターの上に出されたビールを一口口にした途端、コップをすぐに置いた。
(なんなんだ…このビールは? 全く冷えてないじゃないか!)
思わず口に出してしまおうかと思った新谷だったが、それより先に聞くことがあった。
「この店の前のマスターは…?」
まず先に聞かなくてはならなかったのはこの事だった。
「あ~、前のマスターは突然田舎の家族の不幸があったらしく、十日前に私が格安の値段で譲ってもらったんです」
嬉しそうに答えるマスターに「じゃぁ、マスターも一杯なんか飲んでください」
いろいろ聞かなくてはならないことがある。
一杯ぐらい飲ましてあげるのがこういった店の常識だろうと、新谷はマスターに一杯飲んでもらうことにした。
「御地になります。私は下戸なんでトマトジュースをいただきます」
と言ってカウンターの下からトマトジュースの缶を出して棚からグラスを置いてそれに注いだ。
「じゃぁ初めまして、乾杯」
とグラスを合わせた。
飲み屋のマスターなのに下戸なのか?
今の時代の店は一体どうなっているんだ…?
と思いながらも、そんなことはどうでもいいから聞かなくてはならないことを聞いてすぐに帰るつもりだった。
何故ならこの店はコスプレの店らしく、カウンターの女性も漫画の主人公の様な格好をしている。
新谷にはそういった趣味はなく、この場所にいても違和感しか湧かなかった。
「前の常連さんとかは知りませんよね…?」
「ああ、開店して三日めくらいに前に前の常連さんらしき人がカップルで来てくれました。
男の人は少し年配の方でアルマーニのスーツを着られていて、女の人は鮮やかな服装をされていたのでこの人も誰かのコスプレなのかなと思いましたが、全く関係ないとの事でした」
恐らくジェーンとゼロとかいう怜子だろう、まず間違いない。
それ以来、来ていないというから自分が小比類巻警視正と連絡を取ってからすぐにこの店を処分したんだと察した。
(何て行動の早い奴なんだ!)
新谷はジェーンの余りにも早い行動力に驚くとともに、やはり尋常な奴ではないことを改めて知らされた気がした。
もうこの店にいる意味がないと思いお愛想をしようとしている時に思わぬ事が起きた。
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