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見えない敵
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犯人が捕まってから判決が出るまで、約一年がかかった。
刑が確定してからも林は依然、犯行を否認し続けた。
新谷は今も行方不明で、元妻や新谷の両親から捜索願が提出されていた。
結局、新谷の安否は分からずじまいで、父の話も聞く事はできなかった。
綾香はどうしてもその事が頭から離れず、果たしてこのままルポライターの仕事をやり出していいのか疑問を抱いた。
そして綾香の一番の疑問が犯行を一切否認し続けている林の事だった。
逮捕から判決まで一貫して否認を続けている。
その間林に会って話を聞きたいと思ったが、接見禁止となっていた為、一度も会う事はもちろん話すら聞くことはできないでいたのだ。
綾香は判決が下りるまでただ黙って待ってるわけにはいかなかった。
毎回裁判の傍聴はもちろんだが、その間殺人に関する勉強は怠らなかった。
父の書斎にある書物や日記帳にも時間を気にすることなく読み漁った。
盗聴器は依然そのままにしておいた。
目に見えない敵がどこで見ているかが分からない。
もし外してしまえば、杏里や自分の身も危険である事は容易に理解できた。
杏里には、盗聴器である事は家の外で話をしていた。
誰がつけたものかの見当はつかないが、命の危険もある為、つけておく事にしたのだと言い聞かせた。
何が危険なのか…?という事について杏里から質問があるかとも綾香は思ったが、父親が殺された後だけに杏里も姉の言う事に黙って従った。
それと、家の中では犯罪に関する話はしない様に杏里には口を酸っぱくするほど言い聞かせた。
盗聴器の他にも隠しカメラとかを付けていないかを入念に探してみたが、それらしき物は見つけられずにいたのだ。
どこで聞いているか分からないので、そういった話は家の中ではしたくはない。故に、そういった話は必ず外でしかも誰もいない場所でするようになった。
杏里も高校生になり、父の死を乗り越えようと必死で姉と力を合わせて暮らしていこうとしていた。
少しくらいはどんな状況下にいるのかは分かっていた。
父親が殺された事。
盗聴器が今現在も付けられている事。
それによって父の死に関する事は家の中では話せない事。
どれをとっても普通の家庭であることではない。
かといって変に行動を起こしたり、悩んでいる顔を姉に見せるとひどく心配するに決まっている。
杏里は妹なりに姉の心配をしていたのだ。
ルポライターとしての勉強は大学に入る前よりも遥かに頑張った。
大学入試の勉強を怠っていたということではない。
大学に入るための勉強は高校生としては当たり前のように頑張って第一志望に合格した。
自分でも頑張ったと自負していた。
だが、全く経験やコネもない状態で一から学ばなくてはならなかった。
ルポライターは一時期ブームになった職種で、多くの人材がそのブームに乗ってなろうとしたり、実際に携わった人も多かった。
だが現実は、余程新聞社や雑誌社で働いて実績と信頼がない限り成功する例は少ないのだった。
今現在は、大学や専門学校に行って勉強するのが王道だが、綾香にはそうする時間がなかった。
いや、あったのかもしれないが、そうする時間がない気がしたのだ。
どうしてもやらなくてはならない事が綾香にはあった。
それは父の無念を晴らす事に他ならなかった。
何故、父は殺されなければならなかったのか?
それには犯人とされる林とコンタクトを取る必要があった。
犯行を最初から頑なに否認するのだから、何処かにそれを証明するものがあるはずである。
それと綾香がルポライターになろうとした理由の一つに行方不明の新谷の存在があった。
行方不明になる前の日に初めて会った私たちに、危険を承知で何かを伝えようとしていたのだ。
それが一体なんであるかを自分は調べる義務があると思ったのだった。
ただし、新谷の事についてはなかなか解明は難しいものであった。
真実を解明するには莫大な労力と時間が必要だった。
刑が確定してからも林は依然、犯行を否認し続けた。
新谷は今も行方不明で、元妻や新谷の両親から捜索願が提出されていた。
結局、新谷の安否は分からずじまいで、父の話も聞く事はできなかった。
綾香はどうしてもその事が頭から離れず、果たしてこのままルポライターの仕事をやり出していいのか疑問を抱いた。
そして綾香の一番の疑問が犯行を一切否認し続けている林の事だった。
逮捕から判決まで一貫して否認を続けている。
その間林に会って話を聞きたいと思ったが、接見禁止となっていた為、一度も会う事はもちろん話すら聞くことはできないでいたのだ。
綾香は判決が下りるまでただ黙って待ってるわけにはいかなかった。
毎回裁判の傍聴はもちろんだが、その間殺人に関する勉強は怠らなかった。
父の書斎にある書物や日記帳にも時間を気にすることなく読み漁った。
盗聴器は依然そのままにしておいた。
目に見えない敵がどこで見ているかが分からない。
もし外してしまえば、杏里や自分の身も危険である事は容易に理解できた。
杏里には、盗聴器である事は家の外で話をしていた。
誰がつけたものかの見当はつかないが、命の危険もある為、つけておく事にしたのだと言い聞かせた。
何が危険なのか…?という事について杏里から質問があるかとも綾香は思ったが、父親が殺された後だけに杏里も姉の言う事に黙って従った。
それと、家の中では犯罪に関する話はしない様に杏里には口を酸っぱくするほど言い聞かせた。
盗聴器の他にも隠しカメラとかを付けていないかを入念に探してみたが、それらしき物は見つけられずにいたのだ。
どこで聞いているか分からないので、そういった話は家の中ではしたくはない。故に、そういった話は必ず外でしかも誰もいない場所でするようになった。
杏里も高校生になり、父の死を乗り越えようと必死で姉と力を合わせて暮らしていこうとしていた。
少しくらいはどんな状況下にいるのかは分かっていた。
父親が殺された事。
盗聴器が今現在も付けられている事。
それによって父の死に関する事は家の中では話せない事。
どれをとっても普通の家庭であることではない。
かといって変に行動を起こしたり、悩んでいる顔を姉に見せるとひどく心配するに決まっている。
杏里は妹なりに姉の心配をしていたのだ。
ルポライターとしての勉強は大学に入る前よりも遥かに頑張った。
大学入試の勉強を怠っていたということではない。
大学に入るための勉強は高校生としては当たり前のように頑張って第一志望に合格した。
自分でも頑張ったと自負していた。
だが、全く経験やコネもない状態で一から学ばなくてはならなかった。
ルポライターは一時期ブームになった職種で、多くの人材がそのブームに乗ってなろうとしたり、実際に携わった人も多かった。
だが現実は、余程新聞社や雑誌社で働いて実績と信頼がない限り成功する例は少ないのだった。
今現在は、大学や専門学校に行って勉強するのが王道だが、綾香にはそうする時間がなかった。
いや、あったのかもしれないが、そうする時間がない気がしたのだ。
どうしてもやらなくてはならない事が綾香にはあった。
それは父の無念を晴らす事に他ならなかった。
何故、父は殺されなければならなかったのか?
それには犯人とされる林とコンタクトを取る必要があった。
犯行を最初から頑なに否認するのだから、何処かにそれを証明するものがあるはずである。
それと綾香がルポライターになろうとした理由の一つに行方不明の新谷の存在があった。
行方不明になる前の日に初めて会った私たちに、危険を承知で何かを伝えようとしていたのだ。
それが一体なんであるかを自分は調べる義務があると思ったのだった。
ただし、新谷の事についてはなかなか解明は難しいものであった。
真実を解明するには莫大な労力と時間が必要だった。
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