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警視総監からの手紙
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綾香が木村警視総監に手紙を送ってから一週間が経った頃、木村警視総監から速達が届いた。
わざわざ速達で送ってくれるなんて思っても見なかった綾香は、すぐに封を開けてその文を貪るように読み始めた。
その文はこのように記されていた。
お手紙拝見いたしました。
忌まわしい事件から二年もの間恐怖に慄かれていた心境、察するに余りあります。
小比類巻警視正の死は、私たち警察官にとってもあまりにも痛ましく悲しい事件であった為、脳裏に焼き付いて離れません。
手紙にあった内容ですが、受け取った瞬間から行動に移す事に致しました。
先ずは私の絶対的な部下二名を其方につけさせる事に致します。
その二名は私の直属の部下ですので内部機密を漏らすような事はしないはずです。
それと同時に、あなたが疑問に持たれている件も内密に捜査いたします。
もちろん他の部下には一切知られる事なくやらせる事をお約束します。
この手紙がついた頃には、あなたの家に向かわせて詳細な事柄を全てお聞きして対処できるように指示を出しております。
何としてもこの件が解決出来るよう、最善の努力を致すつもりでいます。
それとジェーン斎藤という人物の事ですが、こちらで詳しく調べ上げて必ず捕まえてみせますのでどうか安心して生活を続けてください。
と言ってもまだ盗聴器はあるわけですからなかなか安心まではできないでしょうが、その件もすぐに解決出来るはずです。
では二人が其方に伺うまで、しばらくお待ちいただくようお願い申し上げます。
警視総監木村泰治
綾香がその手紙を読み終わると同時くらいに小比類巻家のチャイムが鳴った。
おそらく文に書いてあった二人だろうが、ジェーン斎藤とやらが刺客を送っている可能性は否定できない。
綾香は恐る恐る玄関の前に立ち「何方さんですか?」
と門の向こう側にいる人物に尋ねた。
小比類巻家は門の外側にワイヤレスチャイムがついており「木村から依頼されて参りました坂本と申します」
という返事が返ってきた。
綾香が手紙を受け取ったのを見計らったかのようなタイミングだったが、実はその通りだったのだ。
坂本と木村大地二人は小比類巻家の近くで綾香がポストから手紙を取って家の中に入るのを見て、それを読んだくらいの時間を見計らってチャイムを鳴らしたのだった。
つまり小比類巻家の前で数時間前から警備を兼ねて娘二人の何方かが、速達を受け取ってから手紙を読んだ頃まで待っていたのだった。
もちろんそれは木村警視総監からの指示であった。
出来るだけ早めに連絡をして綾香らを少しでも恐怖から救いたいと願う木村だったのだ。
別に手紙でなくとも電話で連絡を取れば早かったのだが、わざわざ手紙を送ってくれたので文で返そうという思いがあったのだ。
門から玄関に入り綾香が出迎えると「初めてお目にかかります。
坂本と申します。」
「私は木村大地といいます。警視総監からの命令で小比類巻さんのお宅の捜査と警備を任されましたのできた次第であります」
綾香は大地のあまりに硬い話し方に思わずにや笑いをした。
そういえばここ二年間ほとんど笑ったことがないの事を思い出した。
よく見れば坂本はともかく、木村は若くて背が高く見た目には爽やかそうに見える。
髪も今風のチャラい感じではなく、短く清潔感の漂う好青年に見えた。
父の死以来年頃の男性と話をしたことがほとんどなかった綾香は、久しぶりの若い男性の来客に少しだけ胸がときめいた。
本来ならそういった感情を持つ事自体不謹慎というか、あるべきものではないのかも知れない。
ただ現実には綾香も疲れ切っていたのは事実だった。
二十一歳といえば、世間では恋愛くらいするのが当たり前であったが、今の綾香は見えない敵との戦いと父の死の真相を明らかにすることが先決だった為、そんな事は全く考えたことさえなかったのだ。
杏里は平日の午前中ということもあって、高校に行っていた。
小比類巻家の玄関から入った二人は綾香の話していた電話のコンセントの前で立ち止まり、「このコンセントに間違い無いですよね?」
と坂本が綾香に尋ねた。
「はい、それに間違いありません!」
綾香ははっきりとその問いに答えた。
「少し離れていてください。
万一の事も考えなくてはいけませんから…」
坂本の万一の事とは触った瞬間に爆発とかしないかという事だった。
綾香を少し離れさせて大地が持ってきた黒い鞄の中からドライバーを取り出して分解し始めた。
ネジを全て取ってから上蓋を外すとそこに見た状況に綾香はハッとするのだった。
わざわざ速達で送ってくれるなんて思っても見なかった綾香は、すぐに封を開けてその文を貪るように読み始めた。
その文はこのように記されていた。
お手紙拝見いたしました。
忌まわしい事件から二年もの間恐怖に慄かれていた心境、察するに余りあります。
小比類巻警視正の死は、私たち警察官にとってもあまりにも痛ましく悲しい事件であった為、脳裏に焼き付いて離れません。
手紙にあった内容ですが、受け取った瞬間から行動に移す事に致しました。
先ずは私の絶対的な部下二名を其方につけさせる事に致します。
その二名は私の直属の部下ですので内部機密を漏らすような事はしないはずです。
それと同時に、あなたが疑問に持たれている件も内密に捜査いたします。
もちろん他の部下には一切知られる事なくやらせる事をお約束します。
この手紙がついた頃には、あなたの家に向かわせて詳細な事柄を全てお聞きして対処できるように指示を出しております。
何としてもこの件が解決出来るよう、最善の努力を致すつもりでいます。
それとジェーン斎藤という人物の事ですが、こちらで詳しく調べ上げて必ず捕まえてみせますのでどうか安心して生活を続けてください。
と言ってもまだ盗聴器はあるわけですからなかなか安心まではできないでしょうが、その件もすぐに解決出来るはずです。
では二人が其方に伺うまで、しばらくお待ちいただくようお願い申し上げます。
警視総監木村泰治
綾香がその手紙を読み終わると同時くらいに小比類巻家のチャイムが鳴った。
おそらく文に書いてあった二人だろうが、ジェーン斎藤とやらが刺客を送っている可能性は否定できない。
綾香は恐る恐る玄関の前に立ち「何方さんですか?」
と門の向こう側にいる人物に尋ねた。
小比類巻家は門の外側にワイヤレスチャイムがついており「木村から依頼されて参りました坂本と申します」
という返事が返ってきた。
綾香が手紙を受け取ったのを見計らったかのようなタイミングだったが、実はその通りだったのだ。
坂本と木村大地二人は小比類巻家の近くで綾香がポストから手紙を取って家の中に入るのを見て、それを読んだくらいの時間を見計らってチャイムを鳴らしたのだった。
つまり小比類巻家の前で数時間前から警備を兼ねて娘二人の何方かが、速達を受け取ってから手紙を読んだ頃まで待っていたのだった。
もちろんそれは木村警視総監からの指示であった。
出来るだけ早めに連絡をして綾香らを少しでも恐怖から救いたいと願う木村だったのだ。
別に手紙でなくとも電話で連絡を取れば早かったのだが、わざわざ手紙を送ってくれたので文で返そうという思いがあったのだ。
門から玄関に入り綾香が出迎えると「初めてお目にかかります。
坂本と申します。」
「私は木村大地といいます。警視総監からの命令で小比類巻さんのお宅の捜査と警備を任されましたのできた次第であります」
綾香は大地のあまりに硬い話し方に思わずにや笑いをした。
そういえばここ二年間ほとんど笑ったことがないの事を思い出した。
よく見れば坂本はともかく、木村は若くて背が高く見た目には爽やかそうに見える。
髪も今風のチャラい感じではなく、短く清潔感の漂う好青年に見えた。
父の死以来年頃の男性と話をしたことがほとんどなかった綾香は、久しぶりの若い男性の来客に少しだけ胸がときめいた。
本来ならそういった感情を持つ事自体不謹慎というか、あるべきものではないのかも知れない。
ただ現実には綾香も疲れ切っていたのは事実だった。
二十一歳といえば、世間では恋愛くらいするのが当たり前であったが、今の綾香は見えない敵との戦いと父の死の真相を明らかにすることが先決だった為、そんな事は全く考えたことさえなかったのだ。
杏里は平日の午前中ということもあって、高校に行っていた。
小比類巻家の玄関から入った二人は綾香の話していた電話のコンセントの前で立ち止まり、「このコンセントに間違い無いですよね?」
と坂本が綾香に尋ねた。
「はい、それに間違いありません!」
綾香ははっきりとその問いに答えた。
「少し離れていてください。
万一の事も考えなくてはいけませんから…」
坂本の万一の事とは触った瞬間に爆発とかしないかという事だった。
綾香を少し離れさせて大地が持ってきた黒い鞄の中からドライバーを取り出して分解し始めた。
ネジを全て取ってから上蓋を外すとそこに見た状況に綾香はハッとするのだった。
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