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84.クローバーとハナミズキ
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暫く歩いて、裏庭にたどり着いた。
裏手にもダンスホールを囲う庭があり、控室──普段は貸し出されて、お茶会をしたり勉強会をしたりする部屋──からはこの庭を眺められるので、裏庭を歩いたのは初めてだけど見慣れた場所だ。
正面玄関前の庭は中央が並木道のようになっていて、回りに色とりどりの花が咲き誇っていて学院の顔だからか、とても華やかで人気もある。
しかし裏庭も正面の庭に負けず劣らず花が咲き乱れているが、正面の庭に比べれば少し落ち着いた雰囲気があり裏手にあるからか、あんまり人は来ない。
穴場スポットと言うやつだろう。
暫く二人で散策する。
庭の花を眺めるレオナルド殿下は幸せそうな顔をしていて、本当に花が好きなんだなって思う。
見すぎたのか、レオナルド殿下が此方を見て視線が合ってしまった。
「不躾に見てしまい、申し訳御座いません」
「いえ、男の癖に花ばかり愛でて可笑しいですよね」
「そんな事ないです!お……私だって女の癖に花に詳しくなくて……」
暫く沈黙が続いて、どちらともなく吹き出し笑った。
ひとしきり笑った後にレオナルド殿下は花壇の前で膝を折り淡い桃色の花に触れ愛でながら言葉を紡ぐ。
「兄上から聞いてます。花に詳しくなりたいのですよね?あと僕のハーブを使ったお菓子にもご興味があるとも」
「ジョセフィード殿下からお聞きになられたのですね……花より食い気なんてお恥ずかしい限りです」
もう少し暈していっておいてほしかったと少し恥ずかしく頬を染めながら言うと、レオナルド殿下はまた少し笑った。
「ふふ、大丈夫ですよ。女性とは甘いお菓子とお話が何よりもお好きなのでしょう?今度ハーブのお菓子、持ってきますね」
「あ……ありがとうございます」
甘すぎるのは好みじゃないが、確かに女子は太るーと言いながら甘ったるい物を食べる傾向にある。
この世界でも皆とお茶会をした時に甘ーいお菓子を食べながらずっと喋り続けていて逆に感心したものだ。
つまりお菓子に目がなくても大丈夫なのだな。良かったー。
ホッと胸を撫で下ろし、何気なく花壇に目を向ける。
「あ!」
「どうしました!?」
急に声を上げてしゃがみこんだ俺にレオナルド殿下は驚き振り向き、心配そうに側に駆け寄ってきた。
「殿下!見てください!四つ葉のクローバーです!」
「わあ、本当ですね!」
四つ葉のクローバーを摘んで見上げて見せるとレオナルド殿下は顔を綻ばせた。
「花言葉とかよく分かりませんが、この花言葉は知ってます。幸運ですよね!」
自慢げに言うと少し笑われたが、直ぐに「そうです」と肯定してもらった。
まあ、四つ葉のクローバーは有名だからな。あともう1つ花言葉があると昔教えて貰ったけどなんだったかな……。
「僕の好きな花です。クローバーはありふれた花ですけど。花は色によって花言葉も変わるんですよ。白い花のクローバーのシロツメクサは幸運だけじゃなく、私を思って、約束、復讐などがあって、桃色の花のアカツメクサは勤勉です!それから四つ葉のクローバーが……って!ごめんなさい。つい好きな花だったので長々と……」
そこまで頬を赤くしてアワアワと慌てながら謝ってくる姿は実に初々しく可愛らしい。
「大丈夫です。良ければこの四つ葉クローバー差し上げます」
「いえ、見つけたのはアンジェリカ嬢ですから」
「好きな方が持ってる方が良いですから」
「あ、ありがとうございます。嬉しいです」
レオナルド殿下は、はにかむように微笑んで、四つ葉のクローバーを受けとった。
嬉しそうに眺めるのを見て、小さく可愛らしい小さな花は前に似合うだろうと思っていたけど、やっぱりレオナルド殿下のイメージにピッタリだと思う。
「ふふ、本当にお好きなんですね」
レオナルド殿下は頷いてから少し回りを見回した。
「前世では四つ葉のクローバーに何度か勇気を貰いましたし、実は前世の誕生花がシロツメクサだったんです。それも相まって凄く好きで……」
「…そ…そうなんですか」
なんか似た言葉を聞いたことがある気がして、少し引っ掛かりながら相槌を打つ。
どこだったかなと記憶を辿っていると
「あとはここに無いですけど、親近感があって、ハナミズキも好きで……」
「……みずき……?」
「はい!ミズキ科の花で桜みたいに木に咲くんですよ!」
─────桜みたいに木に咲いて可愛らしいんです!谷口くんにも見て貰いたいな──────
「アンジェリカ嬢?」
「……水城?」
前世で俺の隣の席の奴は大人しくて、あんまり喋らなくて、いつも静かに植物に関する本を読んでた。
興味なんてないのに、何となく何読んでるんだと聞いてみたら水を得た魚のように話し出してびっくりした事を覚えてる。
からかわれる事もあるけど、名前が同じだから親近感が湧くハナミズキとクローバーが好きだと言いながら、はにかむように笑った。
水城 花
花の事になると滑舌になる素朴なシロツメクサが似合う女の子だった。
裏手にもダンスホールを囲う庭があり、控室──普段は貸し出されて、お茶会をしたり勉強会をしたりする部屋──からはこの庭を眺められるので、裏庭を歩いたのは初めてだけど見慣れた場所だ。
正面玄関前の庭は中央が並木道のようになっていて、回りに色とりどりの花が咲き誇っていて学院の顔だからか、とても華やかで人気もある。
しかし裏庭も正面の庭に負けず劣らず花が咲き乱れているが、正面の庭に比べれば少し落ち着いた雰囲気があり裏手にあるからか、あんまり人は来ない。
穴場スポットと言うやつだろう。
暫く二人で散策する。
庭の花を眺めるレオナルド殿下は幸せそうな顔をしていて、本当に花が好きなんだなって思う。
見すぎたのか、レオナルド殿下が此方を見て視線が合ってしまった。
「不躾に見てしまい、申し訳御座いません」
「いえ、男の癖に花ばかり愛でて可笑しいですよね」
「そんな事ないです!お……私だって女の癖に花に詳しくなくて……」
暫く沈黙が続いて、どちらともなく吹き出し笑った。
ひとしきり笑った後にレオナルド殿下は花壇の前で膝を折り淡い桃色の花に触れ愛でながら言葉を紡ぐ。
「兄上から聞いてます。花に詳しくなりたいのですよね?あと僕のハーブを使ったお菓子にもご興味があるとも」
「ジョセフィード殿下からお聞きになられたのですね……花より食い気なんてお恥ずかしい限りです」
もう少し暈していっておいてほしかったと少し恥ずかしく頬を染めながら言うと、レオナルド殿下はまた少し笑った。
「ふふ、大丈夫ですよ。女性とは甘いお菓子とお話が何よりもお好きなのでしょう?今度ハーブのお菓子、持ってきますね」
「あ……ありがとうございます」
甘すぎるのは好みじゃないが、確かに女子は太るーと言いながら甘ったるい物を食べる傾向にある。
この世界でも皆とお茶会をした時に甘ーいお菓子を食べながらずっと喋り続けていて逆に感心したものだ。
つまりお菓子に目がなくても大丈夫なのだな。良かったー。
ホッと胸を撫で下ろし、何気なく花壇に目を向ける。
「あ!」
「どうしました!?」
急に声を上げてしゃがみこんだ俺にレオナルド殿下は驚き振り向き、心配そうに側に駆け寄ってきた。
「殿下!見てください!四つ葉のクローバーです!」
「わあ、本当ですね!」
四つ葉のクローバーを摘んで見上げて見せるとレオナルド殿下は顔を綻ばせた。
「花言葉とかよく分かりませんが、この花言葉は知ってます。幸運ですよね!」
自慢げに言うと少し笑われたが、直ぐに「そうです」と肯定してもらった。
まあ、四つ葉のクローバーは有名だからな。あともう1つ花言葉があると昔教えて貰ったけどなんだったかな……。
「僕の好きな花です。クローバーはありふれた花ですけど。花は色によって花言葉も変わるんですよ。白い花のクローバーのシロツメクサは幸運だけじゃなく、私を思って、約束、復讐などがあって、桃色の花のアカツメクサは勤勉です!それから四つ葉のクローバーが……って!ごめんなさい。つい好きな花だったので長々と……」
そこまで頬を赤くしてアワアワと慌てながら謝ってくる姿は実に初々しく可愛らしい。
「大丈夫です。良ければこの四つ葉クローバー差し上げます」
「いえ、見つけたのはアンジェリカ嬢ですから」
「好きな方が持ってる方が良いですから」
「あ、ありがとうございます。嬉しいです」
レオナルド殿下は、はにかむように微笑んで、四つ葉のクローバーを受けとった。
嬉しそうに眺めるのを見て、小さく可愛らしい小さな花は前に似合うだろうと思っていたけど、やっぱりレオナルド殿下のイメージにピッタリだと思う。
「ふふ、本当にお好きなんですね」
レオナルド殿下は頷いてから少し回りを見回した。
「前世では四つ葉のクローバーに何度か勇気を貰いましたし、実は前世の誕生花がシロツメクサだったんです。それも相まって凄く好きで……」
「…そ…そうなんですか」
なんか似た言葉を聞いたことがある気がして、少し引っ掛かりながら相槌を打つ。
どこだったかなと記憶を辿っていると
「あとはここに無いですけど、親近感があって、ハナミズキも好きで……」
「……みずき……?」
「はい!ミズキ科の花で桜みたいに木に咲くんですよ!」
─────桜みたいに木に咲いて可愛らしいんです!谷口くんにも見て貰いたいな──────
「アンジェリカ嬢?」
「……水城?」
前世で俺の隣の席の奴は大人しくて、あんまり喋らなくて、いつも静かに植物に関する本を読んでた。
興味なんてないのに、何となく何読んでるんだと聞いてみたら水を得た魚のように話し出してびっくりした事を覚えてる。
からかわれる事もあるけど、名前が同じだから親近感が湧くハナミズキとクローバーが好きだと言いながら、はにかむように笑った。
水城 花
花の事になると滑舌になる素朴なシロツメクサが似合う女の子だった。
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