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90.もうひとり!
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キープ部屋に着き鍵を開け、水城を先に中に入ってもらってから俺も中に入る。
中に入ると少しムワッとした空気が肌に絡み付く。
季節は初夏のだし、大分暑くなったなと思いながら窓へ歩み寄る。
「水城、座って待ってて。お茶淹れるから」
部屋を見渡していた水城に部屋の熱気を逃がすために窓を開けながら声をかけてから、簡易キッチンに向かう。
卒業パーティーの夜会の時の控え室の一室である部屋でもあり、窓際には大きなソファーがあり、壁に大きな姿見鏡や簡易キッチンもある。
簡易キッチンには戸棚も付いていて、ティーセット一式が揃っている。
ティーセットは、ほぼ全部屋に備わってるらしいから恐ろしい。
俺達みたいに放課後に集まったり、お茶会をする生徒に普段貸し出している部屋には、多目にカップが置かれている。
国からの援助以外に貴族達からも寄付金があるので、食器を充実させられるのだろうか。
戸棚からポットとカップを取り出しながら簡易キッチンで水を沸かす。
ガスなんて便利な物はこの世界に無いし、薪を燃やして使う竈が主流だが、こういう簡易キッチンとかに置かれているのは、お茶を飲む為のお湯を沸かす程度なので、アルコールランプみたいなやつにマッチで火を付ける。
ちょっと理科の実験をしてる気分になる。
少し懐かしく感じてると水城が傍に寄ってきた。
「谷口くん、僕にやらせてくれませんか?」
「え?でも王子に給仕の真似事させるのは流石に……」
「そう言って皆、殆どやらせてくれないんです。淹れるのも好きなのですが……」
しょんぼりする水城にウッと詰まって、ナイショだからねと場所を譲る。
嬉しそうに破顔した水城に苦笑いを返し、隣で持参した茶菓子を取り出してお皿に乗せてテーブルに運んだ。
水城はウキウキと二人分淹れるとテーブルに運び、俺と水城は向い合わせの席に座った。
せっかく淹れてくれたので、ありがたく口をつける。
やべぇ!めっちゃうまい!
俺が淹れるのとは比べ物にならなくね?
これがリアル女子力!?
最近上達した方だったけど、まだまだだと思い知らされ、少しへこみながらお菓子のアーモンドがたっぷり入ったクッキーを頬張った。
水城も一口お茶を口に含んで満足そうに微笑んだ。
俺は少し談笑してから、此所に来るときに考えてた事を水城に提案してみることにした。
「なあ、水城もし良かったらなんだけど、また此所に来てお茶しにこないか?」
「え?」
水城は少し目をぱちくりしながら小首を傾げた。
「ほら、女の子に囲まれて少し疲れてたみたいだし……避難所にどうかなって。あ、でも、この部屋には俺の友達が来るから女の子多いのは変わらないんだけどさ。でも俺抜いて四人中二人以外は婚約者いるし、残りの二人の内一人はシアだし、もう一人はきっと水城を困らせたりはしないと思うんだ」
シアは勿論だが、ミシェルも王家に害することはないだろう。
シアは筆頭貴族オーウェンス侯爵家の令嬢でそのことに誇りを持っている。
母親が王の姉であることからも角が立たないように立ち振る舞いも常に気を使っている。
ミシェルは父親が断罪された時、無関係との事で見逃された身の上だ。
次に王家に害をなせば今度こそ立場が危うい。
それに根回ししてくれたジョセフにも恩を仇で返すことになる。
彼女自身は本来は人を害したいタイプじゃないし、ジョセフにとても感謝していたから大丈夫なはずだ。
人目を気にしなくていいこの部屋は俺とシアだけでなくミシェルにも落ち着く場所となっていた。
「此所に来る令嬢達は、水城を害する奴はいない。俺が保証する」
ハッキリと言い切った俺に水城は困惑した顔になった。
これは…迷惑だったのだろうか?
「ご、ごめん。迷惑だった?」
「いえ……少し驚きましたが、嬉しいです……ありがとう谷口くん。でも女性ばかりの此所に来るのは……」
「男ならラノフがいるけど」
「首席と言えど彼は……その……せめてもう一人いらっしゃれば……」
つまり平民の豊だと立場が少し弱いから、周りにとやかく言われたりする可能性があるということだろうか?
今まで豊一人だけが此所に来ることは、豊が俺の従者的なポジションに収まってると思われているからましだが、多少はやっかみを受けているのは知ってた。
豊自身は問題ないと気にしてなかったけど、シアとどうにかしようと話し合ってた。
水城が来てくれるなら解決するかなーと軽く考えてたが水城は水城で問題が発生するのか。
でも水城は王族だから、立場は強いからやっかみは受けないだろうけど、女性陣の中に婚約者がいるわけでは無いし外聞が悪いのかもしれない。
もう一人男を増やせばと思うが、此所に誘っても問題の無い男の知り合い等いない……と言うか婚約者がいる身で他の男と仲良くするわけにはいかないから、男の友達なんて豊しかいないよ……
どうしたら丸く収まるかなと腕をくんで唸ってると軽くノック音が響いた。
返事をするとゆっくり開いた扉の向こうから入って来たのはシアだった。
中に入ると少しムワッとした空気が肌に絡み付く。
季節は初夏のだし、大分暑くなったなと思いながら窓へ歩み寄る。
「水城、座って待ってて。お茶淹れるから」
部屋を見渡していた水城に部屋の熱気を逃がすために窓を開けながら声をかけてから、簡易キッチンに向かう。
卒業パーティーの夜会の時の控え室の一室である部屋でもあり、窓際には大きなソファーがあり、壁に大きな姿見鏡や簡易キッチンもある。
簡易キッチンには戸棚も付いていて、ティーセット一式が揃っている。
ティーセットは、ほぼ全部屋に備わってるらしいから恐ろしい。
俺達みたいに放課後に集まったり、お茶会をする生徒に普段貸し出している部屋には、多目にカップが置かれている。
国からの援助以外に貴族達からも寄付金があるので、食器を充実させられるのだろうか。
戸棚からポットとカップを取り出しながら簡易キッチンで水を沸かす。
ガスなんて便利な物はこの世界に無いし、薪を燃やして使う竈が主流だが、こういう簡易キッチンとかに置かれているのは、お茶を飲む為のお湯を沸かす程度なので、アルコールランプみたいなやつにマッチで火を付ける。
ちょっと理科の実験をしてる気分になる。
少し懐かしく感じてると水城が傍に寄ってきた。
「谷口くん、僕にやらせてくれませんか?」
「え?でも王子に給仕の真似事させるのは流石に……」
「そう言って皆、殆どやらせてくれないんです。淹れるのも好きなのですが……」
しょんぼりする水城にウッと詰まって、ナイショだからねと場所を譲る。
嬉しそうに破顔した水城に苦笑いを返し、隣で持参した茶菓子を取り出してお皿に乗せてテーブルに運んだ。
水城はウキウキと二人分淹れるとテーブルに運び、俺と水城は向い合わせの席に座った。
せっかく淹れてくれたので、ありがたく口をつける。
やべぇ!めっちゃうまい!
俺が淹れるのとは比べ物にならなくね?
これがリアル女子力!?
最近上達した方だったけど、まだまだだと思い知らされ、少しへこみながらお菓子のアーモンドがたっぷり入ったクッキーを頬張った。
水城も一口お茶を口に含んで満足そうに微笑んだ。
俺は少し談笑してから、此所に来るときに考えてた事を水城に提案してみることにした。
「なあ、水城もし良かったらなんだけど、また此所に来てお茶しにこないか?」
「え?」
水城は少し目をぱちくりしながら小首を傾げた。
「ほら、女の子に囲まれて少し疲れてたみたいだし……避難所にどうかなって。あ、でも、この部屋には俺の友達が来るから女の子多いのは変わらないんだけどさ。でも俺抜いて四人中二人以外は婚約者いるし、残りの二人の内一人はシアだし、もう一人はきっと水城を困らせたりはしないと思うんだ」
シアは勿論だが、ミシェルも王家に害することはないだろう。
シアは筆頭貴族オーウェンス侯爵家の令嬢でそのことに誇りを持っている。
母親が王の姉であることからも角が立たないように立ち振る舞いも常に気を使っている。
ミシェルは父親が断罪された時、無関係との事で見逃された身の上だ。
次に王家に害をなせば今度こそ立場が危うい。
それに根回ししてくれたジョセフにも恩を仇で返すことになる。
彼女自身は本来は人を害したいタイプじゃないし、ジョセフにとても感謝していたから大丈夫なはずだ。
人目を気にしなくていいこの部屋は俺とシアだけでなくミシェルにも落ち着く場所となっていた。
「此所に来る令嬢達は、水城を害する奴はいない。俺が保証する」
ハッキリと言い切った俺に水城は困惑した顔になった。
これは…迷惑だったのだろうか?
「ご、ごめん。迷惑だった?」
「いえ……少し驚きましたが、嬉しいです……ありがとう谷口くん。でも女性ばかりの此所に来るのは……」
「男ならラノフがいるけど」
「首席と言えど彼は……その……せめてもう一人いらっしゃれば……」
つまり平民の豊だと立場が少し弱いから、周りにとやかく言われたりする可能性があるということだろうか?
今まで豊一人だけが此所に来ることは、豊が俺の従者的なポジションに収まってると思われているからましだが、多少はやっかみを受けているのは知ってた。
豊自身は問題ないと気にしてなかったけど、シアとどうにかしようと話し合ってた。
水城が来てくれるなら解決するかなーと軽く考えてたが水城は水城で問題が発生するのか。
でも水城は王族だから、立場は強いからやっかみは受けないだろうけど、女性陣の中に婚約者がいるわけでは無いし外聞が悪いのかもしれない。
もう一人男を増やせばと思うが、此所に誘っても問題の無い男の知り合い等いない……と言うか婚約者がいる身で他の男と仲良くするわけにはいかないから、男の友達なんて豊しかいないよ……
どうしたら丸く収まるかなと腕をくんで唸ってると軽くノック音が響いた。
返事をするとゆっくり開いた扉の向こうから入って来たのはシアだった。
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