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43.もう逃げないから
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迎えが到着するまでジョセフが付き添ってくれることになり、シアとお兄様はそれぞれ授業に戻っていった。
二人きりになってから俺は気になってることを聞くことにした。
「なあ、ジョセフ……急に過剰になったのは豊……ラノフが関係してる?」
「…………」
「何度も言うけどさラノフは親友だから……傍に居てやりたいとは思ってるけど……それは……前世で置いてきた事でアイツに寂しい思いをさせたからであって……」
俺はジョセフに前世での俺と豊の関係を話した。
両親は健在していたものの、仕事で忙しく幼少時代から一緒にいる時間は少なく我が儘を言えず甘えることが出来なかった豊は幼なじみの俺にだけは本音をぶつけてくれていた事。小さい頃の口約束だけど不安で寂しがっていた豊を一人にしないと誓った事。なのに事故で自分の意思では無いにしても一人にしてしまい、苦しんでるときに傍に居てやれなかった事。そして転生した後も一人で苦しんでいた事。だからあの日そのすべてを包み込んで抱き締めてしまった事。
話してる間、ジョセフは黙って聞いてくれた。
あの日のように嫉妬で顔を歪めはしなかった。
「前世での俺達は一緒にいるのが当たり前だったんだ。それがあっさりと永遠に会えなくなって、でもまた再会できた事が凄く嬉しかった。だから今度こそ前世で果たせなかった約束を叶えなきゃって思った……でもさ……それは家族や友に対する感情でお前が思ってるような……その……恋とかそんなんじゃないんだ……俺が……彰が傍に居て欲しいのは……ジョセフだから……」
「アキラ……」
俺は何を言ってんでしょうね!?
もう今なら顔で湯でも沸かせるぐらい熱いですよ!
俺は真っ赤になった顔でジョセフを睨み付けた。
「…………っわかったか!?」
「……あぁ」
ジョセフは目を伏せて頷いた。
伏せる直前に見えた瞳は潤んでいたと思う。一瞬しか見えなかったけど……
長い睫毛が震えて紫色の宝石……そうアメジストのような瞳が俺を見据えた。
「人にここまで執着するのは初めてで何が正解かも分からなかった……それでも……お前に俺だけを見ていて欲しかったんだ……馬鹿な嫉妬心だとお前は嗤うだろうか」
「ばっかだなーお前は」
あっさり言った俺にジョセフは憂い顔を歪め辛そうな顔になった。
そんなジョセフにため息をつきながら、俺は思った。
俺だけではなくジョセフも恋愛初心者だったのだと。いつも余裕たっぷりでなんでも流れるようにこなすから慣れてると思っていたけど、すべてを手探りだったのかー。言われてみれば所々危ういところもあった気もしなくはない?
本当に馬鹿だな。馬鹿すぎて可愛いと思えるほどに。
俺のジョセフに対する感情はアンジェリカの物だと思っていた。そう思って俺は逃げていた。
そうしないと俺が彰で無くなるんじゃないかと思っていたのだ。
俺もジョセフもそっちの気は無い。だからジョセフが見てるのは彰じゃなくアンジェリカなのだと……何度もアキラと呼んでくれたのに。
「ごめんな……」
覚悟は決めた。俺も男だ。逃げてるのはカッコ悪い。俺はちゃんと向き合うよ。
「アキラ……」
「抱き締められるのもキスも恥ずかしいけど……お前が安心するなら頑張って慣れるから……でも人前だけは勘弁してくれよ。また熱でるかも」
「……あぁ、それは困るな」
最後におどけて言った言葉にジョセフは微笑んだ。
その時のジョセフの顔は穏やかで凄く嬉しそうで、今まで見た中で一番綺麗な笑顔だった。
そんな顔に見惚れながら、沢山喋って慣れないことして疲れたのか瞼が重くなってきた。
「ありがとうアキラ。愛してる」
恥ずかしいからヤメロヨって心で思いながら、熱で弱った俺の体は自由が効かなくて完全に瞼が開かなくなった。
薄れ行く意識の中でジョセフが手を握り締めて伝わる温もりに安心した俺は意識を手放した。
二人きりになってから俺は気になってることを聞くことにした。
「なあ、ジョセフ……急に過剰になったのは豊……ラノフが関係してる?」
「…………」
「何度も言うけどさラノフは親友だから……傍に居てやりたいとは思ってるけど……それは……前世で置いてきた事でアイツに寂しい思いをさせたからであって……」
俺はジョセフに前世での俺と豊の関係を話した。
両親は健在していたものの、仕事で忙しく幼少時代から一緒にいる時間は少なく我が儘を言えず甘えることが出来なかった豊は幼なじみの俺にだけは本音をぶつけてくれていた事。小さい頃の口約束だけど不安で寂しがっていた豊を一人にしないと誓った事。なのに事故で自分の意思では無いにしても一人にしてしまい、苦しんでるときに傍に居てやれなかった事。そして転生した後も一人で苦しんでいた事。だからあの日そのすべてを包み込んで抱き締めてしまった事。
話してる間、ジョセフは黙って聞いてくれた。
あの日のように嫉妬で顔を歪めはしなかった。
「前世での俺達は一緒にいるのが当たり前だったんだ。それがあっさりと永遠に会えなくなって、でもまた再会できた事が凄く嬉しかった。だから今度こそ前世で果たせなかった約束を叶えなきゃって思った……でもさ……それは家族や友に対する感情でお前が思ってるような……その……恋とかそんなんじゃないんだ……俺が……彰が傍に居て欲しいのは……ジョセフだから……」
「アキラ……」
俺は何を言ってんでしょうね!?
もう今なら顔で湯でも沸かせるぐらい熱いですよ!
俺は真っ赤になった顔でジョセフを睨み付けた。
「…………っわかったか!?」
「……あぁ」
ジョセフは目を伏せて頷いた。
伏せる直前に見えた瞳は潤んでいたと思う。一瞬しか見えなかったけど……
長い睫毛が震えて紫色の宝石……そうアメジストのような瞳が俺を見据えた。
「人にここまで執着するのは初めてで何が正解かも分からなかった……それでも……お前に俺だけを見ていて欲しかったんだ……馬鹿な嫉妬心だとお前は嗤うだろうか」
「ばっかだなーお前は」
あっさり言った俺にジョセフは憂い顔を歪め辛そうな顔になった。
そんなジョセフにため息をつきながら、俺は思った。
俺だけではなくジョセフも恋愛初心者だったのだと。いつも余裕たっぷりでなんでも流れるようにこなすから慣れてると思っていたけど、すべてを手探りだったのかー。言われてみれば所々危ういところもあった気もしなくはない?
本当に馬鹿だな。馬鹿すぎて可愛いと思えるほどに。
俺のジョセフに対する感情はアンジェリカの物だと思っていた。そう思って俺は逃げていた。
そうしないと俺が彰で無くなるんじゃないかと思っていたのだ。
俺もジョセフもそっちの気は無い。だからジョセフが見てるのは彰じゃなくアンジェリカなのだと……何度もアキラと呼んでくれたのに。
「ごめんな……」
覚悟は決めた。俺も男だ。逃げてるのはカッコ悪い。俺はちゃんと向き合うよ。
「アキラ……」
「抱き締められるのもキスも恥ずかしいけど……お前が安心するなら頑張って慣れるから……でも人前だけは勘弁してくれよ。また熱でるかも」
「……あぁ、それは困るな」
最後におどけて言った言葉にジョセフは微笑んだ。
その時のジョセフの顔は穏やかで凄く嬉しそうで、今まで見た中で一番綺麗な笑顔だった。
そんな顔に見惚れながら、沢山喋って慣れないことして疲れたのか瞼が重くなってきた。
「ありがとうアキラ。愛してる」
恥ずかしいからヤメロヨって心で思いながら、熱で弱った俺の体は自由が効かなくて完全に瞼が開かなくなった。
薄れ行く意識の中でジョセフが手を握り締めて伝わる温もりに安心した俺は意識を手放した。
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