少年と神獣と悪魔

くもがくれ

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過去

あおばらのかご

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『さぁ、紅茶を入れてやろう。…もしかして紅茶を飲むのは初めてか?』
綺麗な模様の白いカップに注がれる赤い液体。ゆらゆらと立つ香りが母上が飲んでいたものよりいい匂いな気がした

「…うん。母上はよく飲んでいました。…僕は味のついた飲み物は飲んだことがなくて…」
ピシッと神獣様の紅茶の持ち手にヒビが入った。
『…そうか、まさか神獣の守り人をそこまで無下に扱っていたとは…あぁお前に言ってるわけではない。熱いものが苦手なら冷まして飲め……苦いか?…砂糖を入れよう』

初めて口にする紅茶という飲み物は甘い香りがするのに反してほんのり苦味があった
僕が一口で止まっていると、神獣様が綺麗なガラス瓶に入っていた角砂糖をひとつ入れてくれた

「…おいしい…美味しいです!神獣様!」
『そうか、そうか…お前が嬉しそうで我も嬉しいぞ……それでその"神獣様"というのはやめんか…お前と我は家族になったのだ他人行儀すぎんか?』

神獣様はだって国を守る神様で…そんな神様を名前で呼んでいいのだろうか

「…フロラシオン様」
『長くて呼びにくいだろう。我もユートピアルのことをユートと呼ぶことにする…さあ』

名前を呼ばれるなんてあまり無かったからくすぐったい。しかも優しい声で…心がポカポカする。神獣様も心がポカポカしたいのかもしれない

「シオン様!僕も今日からシオン様とお呼びします!」
『…敬称など…まぁよい。そうだなシオンと呼ぶが良い』


シオン様は色々な話を教えてくれた
例えば、守り人の仕事内容とか、これからシオン様から貰う加護の話など…


『…本当にいいんだな?…瞳に加護をかけてしまって』
「片目だけでお願いします。赤目は今までの僕、シオン様から貰う青目はこれからの僕です!…過去の自分は捨ててしまいたいけど過去があるから今の僕がいる…から」

ポン…またシオン様が頭を撫でてくれた
今度はちょっと強めに

『…なんと美しいことか…ここまで心が清い人間など長らく生きてきたが初めて見たぞ……さあ、少し痛むかもしれないが我慢してくれ』

すっと伸ばされたシオン様の綺麗な手が僕の左目を包む
僅かに青い光が視界に満ちたかと思うと…
「っつ!!」

左目が焼けるような痛みに襲われて
僕は意識を手放した――
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