少年と神獣と悪魔

くもがくれ

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過去

かみのけもの

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『哀れな人の子…』
風に乗せられてそんな声が聞こえたと思うと、ふわりと身体が浮いた

「あ、あなた様は…」
さっきまで乗っていた大きな馬車を見下ろしている。従者の人も僕よりずっと大きかったのに今は僕の方が高い

ぴたりと上昇が止まると、冷たい腕に抱き寄せられた

『…こんな幼い子どもを森に捨てていこうとは…人間も腐ったものよ』

冷たい。冷たい言葉が背筋を通っていく。
僕は、僕は捨てられたの?

「…ぅ、うぇ…ひっぐ…」
『…人の子…いや、ユートピアルよ。泣くな、我はお前を"青薔薇の守り人"として求めていたのだ…ずっと待っていたのだ』

優しい声と綺麗な白銀の髪が僕を包む
ぐにゃりと景色が歪んだと思うと、目の前に綺麗なお屋敷が現れた

「…僕を、必要?…」
『そうだ、ユート。我はこの屋敷の主をずっと待っていた。…我の名はフロラシオン。…さぁ、願いを』

「願い…?」
ゆっくりと地面に下ろされる。
見渡す限り青薔薇が咲き乱れている。

『そうだ、守り人とは闇を払う大変な役職だ。…命の危険もある。…だから我は守り人にひとつ願いを叶えてやっているのだ…』

願い。なんだろう、赤目じゃなくなりたいって願ったら青目になれるんだろうか…。

「…か、ぞく…家族がほしい…仲良しで、僕を愛してくれる家族がほしい…」

風は僕の小さな声を届けてくれただろうか。
この美しい神獣に…僕のちっぽけで私欲にまみれた願いなど却下されるだろうか。

『…そうか、その願い聞き届けたぞ。本来認められないことだが、この屋敷に住人を増やすことを許可する。 …それに今日から我も家族だぞユート』

にこりと笑うと頭を撫でてくれた
やさしいやさしい手だった
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