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第2幕 白蛇様×シュークリーム
第5話 卒業式とシュークリーム作り
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──オレが白蛇様の満足するシュークリームを作る! 期限は二週間後まで。それまでに納得できなかったら、土地を明け渡す──
そう啖呵を切ったのは、二日前のことだ。なんというか、穴があったら入りたい。あの後、従業員の二人に平謝りしたけれど、一つ目入道の始さんは笑って許してくれた。店長代理で、今年の一月からこの店を手伝ってくれているという。
始さんは、パティシエ十年目でEudaemonicsの都内本店に勤務していたベテランさんだ。
元は人間の姿をしていたけど、高校卒業の頃に祖先の血を色濃く引いていたからか、容姿が変わったという。そういう人たちを《先祖返り》というらしい。
──なので僕は白蛇様の望む洋菓子は作れないと思う。それにあのシュークリームは、君の祖父だけの特別なレシピだと思うよ──
そう言ってどこか寂しそうに笑っていた。
現在に戻る。
あの出来事から二日後、今日はオレたち中学三年生の卒業式だ。
ヒラヒラとサクラの花びらが体育館に入り込んでいた。小人サイズの木霊が、「そつぎょう、おめでとー」と言っている。
ふと気づけば、オレの周りでは鳴き声や嗚咽が漏れていた。
『卒業生代表──』
マイク越しに聞こえる同級生の声は、震えていた。卒業のテーマ曲に切り替わり──さらに涙ぐむ声が多くなった。
二日前ならオレも泣いていたと思う。中学三年は人生で一度きりだ。部活は楽しかったし、クラスメイトも、いい奴がたくさんいた。
だがあの店の猶予はあと十二日。
時間はあるようでない。
オレは卒業式が終わるとその足で、爺ちゃんの店に向かった。クラスメイトのみんなと、夕飯を食べる誘いを断るのは心苦しかったが、致し方ない。
***
店に到着すると、オレは白い半そでのTシャツと、黒のズボンに着替えて藍色のエプロンをかける。よく手を洗ってから、調理場に足を踏み入れた。
「ふぁあ!」
いつ入っても身がピリリと引き締まる。充満する甘い香り、清潔感ある白と銀色の部屋。家のキッチンとは一線をひいた業務用厨房機器、オーブン、冷蔵庫、流し台エトセトラ。爺ちゃんが言っていた《銀色の戦場》。
「おはようございます。今日も一日よろしくお願いします!」
オレは頭を下げて、元気いっぱいに挨拶する。
「ああ、孝太郎くん。卒業式は終わったんだね」
オーブンの様子を見ていた一つ目入道の始さんが、オレに気付いて声をかける。
「はい。今日も調理場を貸して──いただき……あの、アザッス! じゃない、ありがとうございます!」
「そんなに畏まらなくていいよ。それに時間もないから、せめて環境ぐらいはちゃんとしないとね」
「はい!」
始さんの心意気に改めて感謝を述べてから、オレはシュークリーム作りを開始する。まずは生地を作るところからだ。腕がなる。
そう啖呵を切ったのは、二日前のことだ。なんというか、穴があったら入りたい。あの後、従業員の二人に平謝りしたけれど、一つ目入道の始さんは笑って許してくれた。店長代理で、今年の一月からこの店を手伝ってくれているという。
始さんは、パティシエ十年目でEudaemonicsの都内本店に勤務していたベテランさんだ。
元は人間の姿をしていたけど、高校卒業の頃に祖先の血を色濃く引いていたからか、容姿が変わったという。そういう人たちを《先祖返り》というらしい。
──なので僕は白蛇様の望む洋菓子は作れないと思う。それにあのシュークリームは、君の祖父だけの特別なレシピだと思うよ──
そう言ってどこか寂しそうに笑っていた。
現在に戻る。
あの出来事から二日後、今日はオレたち中学三年生の卒業式だ。
ヒラヒラとサクラの花びらが体育館に入り込んでいた。小人サイズの木霊が、「そつぎょう、おめでとー」と言っている。
ふと気づけば、オレの周りでは鳴き声や嗚咽が漏れていた。
『卒業生代表──』
マイク越しに聞こえる同級生の声は、震えていた。卒業のテーマ曲に切り替わり──さらに涙ぐむ声が多くなった。
二日前ならオレも泣いていたと思う。中学三年は人生で一度きりだ。部活は楽しかったし、クラスメイトも、いい奴がたくさんいた。
だがあの店の猶予はあと十二日。
時間はあるようでない。
オレは卒業式が終わるとその足で、爺ちゃんの店に向かった。クラスメイトのみんなと、夕飯を食べる誘いを断るのは心苦しかったが、致し方ない。
***
店に到着すると、オレは白い半そでのTシャツと、黒のズボンに着替えて藍色のエプロンをかける。よく手を洗ってから、調理場に足を踏み入れた。
「ふぁあ!」
いつ入っても身がピリリと引き締まる。充満する甘い香り、清潔感ある白と銀色の部屋。家のキッチンとは一線をひいた業務用厨房機器、オーブン、冷蔵庫、流し台エトセトラ。爺ちゃんが言っていた《銀色の戦場》。
「おはようございます。今日も一日よろしくお願いします!」
オレは頭を下げて、元気いっぱいに挨拶する。
「ああ、孝太郎くん。卒業式は終わったんだね」
オーブンの様子を見ていた一つ目入道の始さんが、オレに気付いて声をかける。
「はい。今日も調理場を貸して──いただき……あの、アザッス! じゃない、ありがとうございます!」
「そんなに畏まらなくていいよ。それに時間もないから、せめて環境ぐらいはちゃんとしないとね」
「はい!」
始さんの心意気に改めて感謝を述べてから、オレはシュークリーム作りを開始する。まずは生地を作るところからだ。腕がなる。
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