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第4幕 高校入学編
第14話 白澤×ショートケーキ
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翌日の月曜日。
春休み中なので、オレはこの時間を使って菓子作りに打ち込むことにした。ひゃっふー。中学時代は部活、部活、パティシエの時間──の毎日だった。
もちろん、体力を落とすわけにはいかないので、早朝のランニングをするようにしている。爺ちゃん曰く、パティシエは体力と精神力が物をいうらしい。
朝六時過ぎ、オレは駅とは逆方向の中央公園で毎朝走り込みをしている。今日も天気が良く青空が広がっている。桜は散って、青葉が芽吹いていた。
あと一週間もすれば高校生活が始まる。学校は爺ちゃん家から通えばいいので、寮生活をしなくて済むのはありがたい。
「新しい学校生活に、パティシエ! 頑張るぞ!!」
「わー! わー!」
「おう! 応援ありがとうな!」
木漏れ日でのびのびしていた木霊たちが、オレの真似をして声を上げた。ぷるぷると饅頭ほどの大きさの綿がゆらゆら揺れている。綿は透けており、朝露のようにプルプルとした表面をしていて、水ようかん──いや、白玉のような弾力がありそうだ。
***
雨月高等学校。
関東県内でアヤカシとの共学と、部活に力を入れている学校の一つだ。そのため新たな入学生となる少年少女たちは、春休み期間中に部活動の見学や体験を受けることが出来る。
春休み期間の早朝は、学校付近の中央公園の走り込みに生徒たちが利用することが多い。
村田蓮もまた野球部に仮入部した新入生だ。背は百七十六と高めで、練習に次ぐ練習を経て、がっしりとした体、日に焼けた肌、三白眼。そして少し気難しい少年だった。寮生でもある彼は、部活の先輩と一緒に走り込みをしていた。
「新しい学校生活に、パティシエ! 頑張るぞ!!」
ふと村田は聞き覚えのある声に足を止めた。振り返るとそこには見知った同級生──旭孝太郎の姿を見つける。
オレンジ色の短髪、中学三年にしては低い背丈。いつも明るく元気で、同じ部活のメンバーであり、ライバルだった。
「……旭?」
「ん? どうした」
先輩である白澤の血筋である鈴木が村田に声をかけた。鈴木はひょろ長い背丈で、目が細くいつもニコニコしている面倒見のいい先輩だ。額の三つ目がなければ普通の人間と何ら変わらない。
「あ、いえ。ちょっと知り合いが居たんで……」
「そうなの? ああ、もしかしてあのオレンジの頭の子?」
「先輩は旭の事知っているんですか!?」
村田は思わず前のめりになって先輩に尋ねた。彼は額から流れ落ちる汗を乱暴にタオルで拭うと頷いた。
「ああ。すっごく有名だからね、彼」
「え?」
「彼の《隠し球》は見事だった。父も言っていたが、ああ、でもショートも凄かった。土曜に彼が代理として出ると聞いたときは喜んだね。彼の祖父もまた優秀で本当に今後も期待できるよ」
その一言が村田の心に重く突き刺さったのだった。
***
Eudaemonics・千葉店。
七時前にオレはコックコートを着て銀色の戦場に足を踏み入れる。
「おはよう、孝太郎くん」
「あ、おはようッス……です!」
始さんが厨房に訪れると、土曜日に行われた真夜中販売の話してくれた。
「大盛況だったよ。開店一時間で完売。これでキミへの期待は大きいってことの証明になったね」
「アザッス。……でも、半分は爺ちゃんや白蛇様の話を聞いて、興味本位かもしれないんで、一カ月ぐらいまでは様子を見させてください!」
オレの姿勢に始さんは、呆気にとられたのかしばし言葉を失っていた。……というか、固まっている?
「……あ、あの始さん?」
「ああ、ごめんね。いやー、なんというか思った以上にしっかりしていたから、びっくりしちゃって」
──なんか涙ぐんでいるんですけど、始さんの中でオレの印象って一体……。そーいえば、シュークリームの一件とは別で始さん監修の元、洋菓子作りのテストを受けた時も似たような反応をしていたような。
「そんなにオレの考えって変ッスか?」
「ん? ああ、いや。違うよ。ボクも弟がいるんだけどね、何というか孝太郎くんよりも年上なのに、フラフラしているのを見ているから……」
「から?」
「すっごく助かる。本当に放っておくと問題ばかりだからね」
「始さんの弟って──」
「ところで来月には高校生活が始まるけど、部活動はどうするんだい?」
「部活?」とオレは小首を傾げた。
「学校が終わったら、早く帰って店の手伝いをしようって考えているっスけど? ……です」
始さんの笑みがやや曇った。
「あー、雨月高校の生徒は、全員なにかしらの部活に入らないといけないらしいって聞いたけど?」
「え。ええええ!?」
春休み中なので、オレはこの時間を使って菓子作りに打ち込むことにした。ひゃっふー。中学時代は部活、部活、パティシエの時間──の毎日だった。
もちろん、体力を落とすわけにはいかないので、早朝のランニングをするようにしている。爺ちゃん曰く、パティシエは体力と精神力が物をいうらしい。
朝六時過ぎ、オレは駅とは逆方向の中央公園で毎朝走り込みをしている。今日も天気が良く青空が広がっている。桜は散って、青葉が芽吹いていた。
あと一週間もすれば高校生活が始まる。学校は爺ちゃん家から通えばいいので、寮生活をしなくて済むのはありがたい。
「新しい学校生活に、パティシエ! 頑張るぞ!!」
「わー! わー!」
「おう! 応援ありがとうな!」
木漏れ日でのびのびしていた木霊たちが、オレの真似をして声を上げた。ぷるぷると饅頭ほどの大きさの綿がゆらゆら揺れている。綿は透けており、朝露のようにプルプルとした表面をしていて、水ようかん──いや、白玉のような弾力がありそうだ。
***
雨月高等学校。
関東県内でアヤカシとの共学と、部活に力を入れている学校の一つだ。そのため新たな入学生となる少年少女たちは、春休み期間中に部活動の見学や体験を受けることが出来る。
春休み期間の早朝は、学校付近の中央公園の走り込みに生徒たちが利用することが多い。
村田蓮もまた野球部に仮入部した新入生だ。背は百七十六と高めで、練習に次ぐ練習を経て、がっしりとした体、日に焼けた肌、三白眼。そして少し気難しい少年だった。寮生でもある彼は、部活の先輩と一緒に走り込みをしていた。
「新しい学校生活に、パティシエ! 頑張るぞ!!」
ふと村田は聞き覚えのある声に足を止めた。振り返るとそこには見知った同級生──旭孝太郎の姿を見つける。
オレンジ色の短髪、中学三年にしては低い背丈。いつも明るく元気で、同じ部活のメンバーであり、ライバルだった。
「……旭?」
「ん? どうした」
先輩である白澤の血筋である鈴木が村田に声をかけた。鈴木はひょろ長い背丈で、目が細くいつもニコニコしている面倒見のいい先輩だ。額の三つ目がなければ普通の人間と何ら変わらない。
「あ、いえ。ちょっと知り合いが居たんで……」
「そうなの? ああ、もしかしてあのオレンジの頭の子?」
「先輩は旭の事知っているんですか!?」
村田は思わず前のめりになって先輩に尋ねた。彼は額から流れ落ちる汗を乱暴にタオルで拭うと頷いた。
「ああ。すっごく有名だからね、彼」
「え?」
「彼の《隠し球》は見事だった。父も言っていたが、ああ、でもショートも凄かった。土曜に彼が代理として出ると聞いたときは喜んだね。彼の祖父もまた優秀で本当に今後も期待できるよ」
その一言が村田の心に重く突き刺さったのだった。
***
Eudaemonics・千葉店。
七時前にオレはコックコートを着て銀色の戦場に足を踏み入れる。
「おはよう、孝太郎くん」
「あ、おはようッス……です!」
始さんが厨房に訪れると、土曜日に行われた真夜中販売の話してくれた。
「大盛況だったよ。開店一時間で完売。これでキミへの期待は大きいってことの証明になったね」
「アザッス。……でも、半分は爺ちゃんや白蛇様の話を聞いて、興味本位かもしれないんで、一カ月ぐらいまでは様子を見させてください!」
オレの姿勢に始さんは、呆気にとられたのかしばし言葉を失っていた。……というか、固まっている?
「……あ、あの始さん?」
「ああ、ごめんね。いやー、なんというか思った以上にしっかりしていたから、びっくりしちゃって」
──なんか涙ぐんでいるんですけど、始さんの中でオレの印象って一体……。そーいえば、シュークリームの一件とは別で始さん監修の元、洋菓子作りのテストを受けた時も似たような反応をしていたような。
「そんなにオレの考えって変ッスか?」
「ん? ああ、いや。違うよ。ボクも弟がいるんだけどね、何というか孝太郎くんよりも年上なのに、フラフラしているのを見ているから……」
「から?」
「すっごく助かる。本当に放っておくと問題ばかりだからね」
「始さんの弟って──」
「ところで来月には高校生活が始まるけど、部活動はどうするんだい?」
「部活?」とオレは小首を傾げた。
「学校が終わったら、早く帰って店の手伝いをしようって考えているっスけど? ……です」
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「え。ええええ!?」
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