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壱 ルーナの魔女薬店
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注文された商品を用意して、ルーナはそれぞれに手渡した。アークとリジェルは笑顔で受け取り、次にラスへと手渡す時、彼女の指が彼に触れる。
するとラスは顔を顰めて、苛立たしそうな様子でルーナの手から魔法薬を奪い取るように受け取った。まるで、彼女と触れ合ってしまったことが、不本意で心底嫌だと言わんばかりの態度だった。
(彼女達の噂話通り…この人は筋金入りの女嫌いなんだなぁ)
ルーナはぼんやりとそんな事を思って、すぐに思い直す。
(いや、違うな。特に私を嫌っているんだ)
ラスは普段、女性に話しかけられても無反応な態度を貫くだけなのに、ルーナに対してはこうしてよく睨んだり不機嫌そうな表情を向けたりする。ルーナはこの数ヶ月間で、ラスの自分に対する嫌悪感を的確に察知していた。
言っておくが、ルーナは特にラスを不快にするような失態は犯していない。むしろ、そんな隙もないほどに、彼には初めから距離を置かれている。
まぁ、聖騎士のような聖職者からすれば、魔女という『聖』とは正反対の存在は嫌悪の対象だろうから、彼のこの態度も仕方がないのかもしれない。実際に、ルーナは神なんて信じていないしね。
しかし、ルーナはラスのそんな失礼な態度に気を止めることなくニコリと笑ってみせる。
別にルーナはラスに興味ないし…自分が興味あるのは魔女薬とお金稼ぎだけ。きちんとお金を払って商品を買ってくれるなら、どんなに嫌な態度でも大切なお客様だ。
商品の購入も済んだ事だし、三人はすぐに店から立ち去るだろうと思っていたルーナの予想に反して、彼らはすぐにその場から離れようとはしなかった。
「…まだ何か?」
ルーナがぱちくりと目を瞬かせながら尋ねると、アークが「いや…」と、少し言葉を濁しながら相槌を打つ。
「俺たち、今から飯に行くんだけど…一緒にどう?」
アークのお誘いの言葉に、まだ店内に残っていた女性冒険者達は騒ついた。何故なら、アークは普段女性に誘われたら相手にするが、自分からは誘うことがないからだ。
「えぇっと…」
ルーナは何かを考えるように視線を右上に向けた。これはルーナの癖だった。
「ごめんなさい。今日は満月だから、今開発中の新しい魔女薬に必要な材料を集めておきたいの」
そしてニコリと笑って当たり前に断るルーナに、またもや女性冒険者達は騒ついた。
「何なの、あの女! せっかくアーク様がお誘いしてくれたのに!」
「誘われたのも腹立つけど、断るのも腹立つ!」
「いい気になってんじゃないわよ!」
と、遠慮なく野次が飛んでくるのでルーナは疲れた表情で笑った。
「アーク様! お食事なら私達と行きませんか!?」
すぐに女性冒険者達が彼らを囲むように押し寄せてきた。
「いや、俺はルーナちゃんと…」
女性を無下に扱えず、たじろぐアークがチラリとルーナを見ると、ルーナは変わらず笑顔のままで「はーい。では、本日はこれで閉店だよ。速やかにお帰りくださいね」と、言ってさっさと店の奥に姿を消してしまった。
「アーク、諦めろ。君は振られたんだよ…」
ショックの表情を浮かべるアークに、リジェルは慰めなのか傷口を抉っているのか、優しい声で彼に真実を教えてあげた。
「うぅ……よし、皆で飯に行くか!」
ルーナの淡白な態度に悲しそうではあったが、アークは切り替えるとニカッと笑って言った。すると、女性たちの嬉しそうな黄色い声が上がる。
リジェルはそんなアークを見つめて、やれやれと言った表情で笑った後、隣に立つラスへと目を向けた。
「君はどうする?」
「俺は行かない」
即答する友に、リジェルは『やっぱりね』と、思った。
(女性が来るなら、ラスは来ないだろう。全く…潔癖なんだから。たまには気を楽にして、楽しめばいいのに)
そんな事を思いながらも、リジェルはラスの意見を尊重して頷いてみせた。ラスはブルーグレーの瞳を細めて、最後にもう一度だけルーナが消えていった店の奥へと目を向ける。
「どけ」
そして、すぐに出入り口の扉へと向き直ると、進行方向を塞いでいた女性冒険者を鋭い目でひと睨みして道を開けさせて、さっさとその場から立ち去ったのだった。
するとラスは顔を顰めて、苛立たしそうな様子でルーナの手から魔法薬を奪い取るように受け取った。まるで、彼女と触れ合ってしまったことが、不本意で心底嫌だと言わんばかりの態度だった。
(彼女達の噂話通り…この人は筋金入りの女嫌いなんだなぁ)
ルーナはぼんやりとそんな事を思って、すぐに思い直す。
(いや、違うな。特に私を嫌っているんだ)
ラスは普段、女性に話しかけられても無反応な態度を貫くだけなのに、ルーナに対してはこうしてよく睨んだり不機嫌そうな表情を向けたりする。ルーナはこの数ヶ月間で、ラスの自分に対する嫌悪感を的確に察知していた。
言っておくが、ルーナは特にラスを不快にするような失態は犯していない。むしろ、そんな隙もないほどに、彼には初めから距離を置かれている。
まぁ、聖騎士のような聖職者からすれば、魔女という『聖』とは正反対の存在は嫌悪の対象だろうから、彼のこの態度も仕方がないのかもしれない。実際に、ルーナは神なんて信じていないしね。
しかし、ルーナはラスのそんな失礼な態度に気を止めることなくニコリと笑ってみせる。
別にルーナはラスに興味ないし…自分が興味あるのは魔女薬とお金稼ぎだけ。きちんとお金を払って商品を買ってくれるなら、どんなに嫌な態度でも大切なお客様だ。
商品の購入も済んだ事だし、三人はすぐに店から立ち去るだろうと思っていたルーナの予想に反して、彼らはすぐにその場から離れようとはしなかった。
「…まだ何か?」
ルーナがぱちくりと目を瞬かせながら尋ねると、アークが「いや…」と、少し言葉を濁しながら相槌を打つ。
「俺たち、今から飯に行くんだけど…一緒にどう?」
アークのお誘いの言葉に、まだ店内に残っていた女性冒険者達は騒ついた。何故なら、アークは普段女性に誘われたら相手にするが、自分からは誘うことがないからだ。
「えぇっと…」
ルーナは何かを考えるように視線を右上に向けた。これはルーナの癖だった。
「ごめんなさい。今日は満月だから、今開発中の新しい魔女薬に必要な材料を集めておきたいの」
そしてニコリと笑って当たり前に断るルーナに、またもや女性冒険者達は騒ついた。
「何なの、あの女! せっかくアーク様がお誘いしてくれたのに!」
「誘われたのも腹立つけど、断るのも腹立つ!」
「いい気になってんじゃないわよ!」
と、遠慮なく野次が飛んでくるのでルーナは疲れた表情で笑った。
「アーク様! お食事なら私達と行きませんか!?」
すぐに女性冒険者達が彼らを囲むように押し寄せてきた。
「いや、俺はルーナちゃんと…」
女性を無下に扱えず、たじろぐアークがチラリとルーナを見ると、ルーナは変わらず笑顔のままで「はーい。では、本日はこれで閉店だよ。速やかにお帰りくださいね」と、言ってさっさと店の奥に姿を消してしまった。
「アーク、諦めろ。君は振られたんだよ…」
ショックの表情を浮かべるアークに、リジェルは慰めなのか傷口を抉っているのか、優しい声で彼に真実を教えてあげた。
「うぅ……よし、皆で飯に行くか!」
ルーナの淡白な態度に悲しそうではあったが、アークは切り替えるとニカッと笑って言った。すると、女性たちの嬉しそうな黄色い声が上がる。
リジェルはそんなアークを見つめて、やれやれと言った表情で笑った後、隣に立つラスへと目を向けた。
「君はどうする?」
「俺は行かない」
即答する友に、リジェルは『やっぱりね』と、思った。
(女性が来るなら、ラスは来ないだろう。全く…潔癖なんだから。たまには気を楽にして、楽しめばいいのに)
そんな事を思いながらも、リジェルはラスの意見を尊重して頷いてみせた。ラスはブルーグレーの瞳を細めて、最後にもう一度だけルーナが消えていった店の奥へと目を向ける。
「どけ」
そして、すぐに出入り口の扉へと向き直ると、進行方向を塞いでいた女性冒険者を鋭い目でひと睨みして道を開けさせて、さっさとその場から立ち去ったのだった。
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