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壱 ルーナの魔女薬店
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「あの…?」
彼女が言い掛けた時、死んだ筈の大蛇の頭が目を覚まし、突然暴れ始めた。
「!?」
どうやら、この部屋の何かの薬品の匂いを嗅いで、一時的にゾンビ化してしまったようだ。
ラスは舌打ちをすると、すぐに剣を抜いて大蛇の頭へ顔を向けた。
頭が暴れた衝撃で棚が揺れ、中に並べてあった薬の材料達が乱雑に落ちていった。まだ作りかけの魔法薬の入った大釜にも色んな材料が沈んでいき、ルーナは驚愕の悲鳴を上げる。
魔法薬が心配で大釜へ駆け寄るルーナだったが、ラスは「危ない!」と彼女の体を後ろから抱き締めた。何が起こったのか分からず、ルーナが驚いて振り向けば目の前にはラスの顔がある。
大蛇の頭がルーナ目掛けて飛び出したので、ラスがそれを庇ったのだ。頭はルーナを通り越えて大釜の中へとダイブすると、その中でも暴れ回ったので大釜がひっくり返ってしまった。
溢れ出す未完成の魔法薬がルーナとラスを襲う。
ザバァ!
大量の魔法薬を被った二人は全身びしょ濡れで、鼻をつく刺激臭が自分から立ち込めることに不快感を感じたラスは、顔の水気を拭いながら顔を顰めていた。
空になった大釜と一緒に転がる大蛇の頭を見れば、薬の効果が切れたのか力尽きたのか…頭はもうピクリとも動いていなかった。
「ごほっ…こほ…」
次に自分の腕の中で咳き込むルーナへと目を向ける。彼女はラスに抱き締められていた事もあり、身動き出来ずに魔法薬を顔の真正面から被っていた。
「えらい目に合ったなぁ…」
ルーナは悲しそうに嘆きながらラスの腕から抜け出すと、濡れた髪を掻き上げた。すると、ラスの目に飛び込んできたのは、ルーナのあどけさの残る少女の愛らしい顔とは相反する、色気のある濡れた白い鎖骨。
次にルーナは濡れて重くなったローブを脱ぎ、びしゃりと水音を立てて近くの机の上に無造作に置く。白い質素なワンピース姿になったルーナを、ラスは目を丸めて見つめていた。
それは何故か…普段は露出の少ない服装で、更に全身を包み込むローブを羽織っているルーナだったが、今その服は水分をたっぷりと含んでルーナの体にピッタリと張り付いている。
すると、露わになるのはルーナの意外にも大きいバストとくびれた腰…からの、なめらかに描かれた尻まで続く曲線。
いくら禁欲的な生活を好むラスも、この時ばかりは目を逸らさずにはいられなかった。
ルーナは微動だにしなくなったラスを不審に思いながらも彼から離れて、転がる大釜を片付けていた。
(あぁ…もう一度やり直しだよぉ…)
心の中で泣きながらルーナは元凶の大蛇の頭を睨み付けた。
(せっかく、動物と話せる魔法薬が完成するまであと少しだったのに。材料も全て無駄になっちゃった…最悪!)
ルーナは腹立たしい気持ちで大蛇の頭へと手を伸ばしていると…。
『……抱きしめたい…』
どこからか、そんな声が聞こえてきた。
「え?」
ルーナは振り返り後ろに立つラスを見るが、彼は普段通りの不機嫌そうな仏頂面でこちらの様子を窺っているようだった。
(気のせい…?)
ルーナは前へと向き直り作業を再開させようとするが、やはりまた聞こえた。
『可愛い…なんて可愛いんだ…』
「え? なに?」
ルーナは聞き間違いじゃないと再びラスを振り返るが、彼はさっきと同じように仏頂面だ。
「今、何か言ったよね?」
「俺が? 話しかけてもいないが?」
何故か威圧的にラスに睨まれたルーナは、納得出来ないと顔を顰める。すると、また聞こえてきた。
『ルーナの怒ってる顔、可愛いな…』
今度ははっきりと聞こえる声に、ルーナは目を丸くした。だってあのラスが…女嫌いで有名な聖騎士ラスがそんな事を言うなんて…? と、信じられない気持ちで改めて彼を見る。
『やば…濡れたところ、透けてる…えろいな』
「へ!?」
ルーナは顔を真っ赤にして、慌てて自身の体を隠すように両腕で自分を抱き締めた。ラスを見るが、彼はポーカーフェイスを決め込んでいるのか、いつも通りの冷たい目をした表情だ。
『このまま押し倒したい』
ラスの遠慮ない言葉が聞こえる。それなのに彼の口は一切動いておらず、ルーナは目を疑った。
ふと、ルーナは自分の腕に何か模様が刻まれている事に気付く。濡れた服の袖を腕捲りして、その模様を目にした彼女は…。
「ら、ラスさん!」
青褪めた表情のルーナが彼の元へ駆け寄ると、ラスが何か言う前に素早く彼の服の裾を捲り上げて腕を確認した。
「なにする…」
「ラスさん、どうしよう!」
ルーナが突然触れてきた事でラスが嫌がる素振りを見せたのだが、彼の言葉を遮りルーナは叫ぶ。
「私たち、呪われちゃったみたい!」
「は……なんだと…?」
ルーナの愕然とする瞳がラスの姿を映す。ラスは唖然として、視線を下に落とした。
そこには、自分とルーナの腕に、くっきりと刻まれた同じ黒い模様があったのだった。
—壱 ルーナの魔女薬店・終—
彼女が言い掛けた時、死んだ筈の大蛇の頭が目を覚まし、突然暴れ始めた。
「!?」
どうやら、この部屋の何かの薬品の匂いを嗅いで、一時的にゾンビ化してしまったようだ。
ラスは舌打ちをすると、すぐに剣を抜いて大蛇の頭へ顔を向けた。
頭が暴れた衝撃で棚が揺れ、中に並べてあった薬の材料達が乱雑に落ちていった。まだ作りかけの魔法薬の入った大釜にも色んな材料が沈んでいき、ルーナは驚愕の悲鳴を上げる。
魔法薬が心配で大釜へ駆け寄るルーナだったが、ラスは「危ない!」と彼女の体を後ろから抱き締めた。何が起こったのか分からず、ルーナが驚いて振り向けば目の前にはラスの顔がある。
大蛇の頭がルーナ目掛けて飛び出したので、ラスがそれを庇ったのだ。頭はルーナを通り越えて大釜の中へとダイブすると、その中でも暴れ回ったので大釜がひっくり返ってしまった。
溢れ出す未完成の魔法薬がルーナとラスを襲う。
ザバァ!
大量の魔法薬を被った二人は全身びしょ濡れで、鼻をつく刺激臭が自分から立ち込めることに不快感を感じたラスは、顔の水気を拭いながら顔を顰めていた。
空になった大釜と一緒に転がる大蛇の頭を見れば、薬の効果が切れたのか力尽きたのか…頭はもうピクリとも動いていなかった。
「ごほっ…こほ…」
次に自分の腕の中で咳き込むルーナへと目を向ける。彼女はラスに抱き締められていた事もあり、身動き出来ずに魔法薬を顔の真正面から被っていた。
「えらい目に合ったなぁ…」
ルーナは悲しそうに嘆きながらラスの腕から抜け出すと、濡れた髪を掻き上げた。すると、ラスの目に飛び込んできたのは、ルーナのあどけさの残る少女の愛らしい顔とは相反する、色気のある濡れた白い鎖骨。
次にルーナは濡れて重くなったローブを脱ぎ、びしゃりと水音を立てて近くの机の上に無造作に置く。白い質素なワンピース姿になったルーナを、ラスは目を丸めて見つめていた。
それは何故か…普段は露出の少ない服装で、更に全身を包み込むローブを羽織っているルーナだったが、今その服は水分をたっぷりと含んでルーナの体にピッタリと張り付いている。
すると、露わになるのはルーナの意外にも大きいバストとくびれた腰…からの、なめらかに描かれた尻まで続く曲線。
いくら禁欲的な生活を好むラスも、この時ばかりは目を逸らさずにはいられなかった。
ルーナは微動だにしなくなったラスを不審に思いながらも彼から離れて、転がる大釜を片付けていた。
(あぁ…もう一度やり直しだよぉ…)
心の中で泣きながらルーナは元凶の大蛇の頭を睨み付けた。
(せっかく、動物と話せる魔法薬が完成するまであと少しだったのに。材料も全て無駄になっちゃった…最悪!)
ルーナは腹立たしい気持ちで大蛇の頭へと手を伸ばしていると…。
『……抱きしめたい…』
どこからか、そんな声が聞こえてきた。
「え?」
ルーナは振り返り後ろに立つラスを見るが、彼は普段通りの不機嫌そうな仏頂面でこちらの様子を窺っているようだった。
(気のせい…?)
ルーナは前へと向き直り作業を再開させようとするが、やはりまた聞こえた。
『可愛い…なんて可愛いんだ…』
「え? なに?」
ルーナは聞き間違いじゃないと再びラスを振り返るが、彼はさっきと同じように仏頂面だ。
「今、何か言ったよね?」
「俺が? 話しかけてもいないが?」
何故か威圧的にラスに睨まれたルーナは、納得出来ないと顔を顰める。すると、また聞こえてきた。
『ルーナの怒ってる顔、可愛いな…』
今度ははっきりと聞こえる声に、ルーナは目を丸くした。だってあのラスが…女嫌いで有名な聖騎士ラスがそんな事を言うなんて…? と、信じられない気持ちで改めて彼を見る。
『やば…濡れたところ、透けてる…えろいな』
「へ!?」
ルーナは顔を真っ赤にして、慌てて自身の体を隠すように両腕で自分を抱き締めた。ラスを見るが、彼はポーカーフェイスを決め込んでいるのか、いつも通りの冷たい目をした表情だ。
『このまま押し倒したい』
ラスの遠慮ない言葉が聞こえる。それなのに彼の口は一切動いておらず、ルーナは目を疑った。
ふと、ルーナは自分の腕に何か模様が刻まれている事に気付く。濡れた服の袖を腕捲りして、その模様を目にした彼女は…。
「ら、ラスさん!」
青褪めた表情のルーナが彼の元へ駆け寄ると、ラスが何か言う前に素早く彼の服の裾を捲り上げて腕を確認した。
「なにする…」
「ラスさん、どうしよう!」
ルーナが突然触れてきた事でラスが嫌がる素振りを見せたのだが、彼の言葉を遮りルーナは叫ぶ。
「私たち、呪われちゃったみたい!」
「は……なんだと…?」
ルーナの愕然とする瞳がラスの姿を映す。ラスは唖然として、視線を下に落とした。
そこには、自分とルーナの腕に、くっきりと刻まれた同じ黒い模様があったのだった。
—壱 ルーナの魔女薬店・終—
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