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伍 月の魔女の呪い【ラスside】
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荒々しく手を振り解かれて驚くルーナと、その様子を見て固まるアークとリジェル。
「おい…ラス! ルーナちゃんがびっくりするだろ!」
すぐに我に返ったアークが、顔を顰めながらラスに注意する。
「ごめんね、ルーナさん。ラスは、女性に触れられるのを好まない性格なんだ。驚いたよね」
「え? …あぁ、そうなんだ……」
リジェルが気遣うように言うと、ルーナも戸惑いから笑顔へと表情を変化させて、改めてラスを見上げた。
「手、触っちゃってごめんなさい。次からは気をつけるね!」
と、ルーナは変わらない笑顔を向けてくる。
失礼な態度を取った者にも不快さを露わさずに笑顔を絶やさない明るくて健気なルーナ。
誰が見てもそう思うだろう。
実際、アークとリジェルも関心した様子でルーナを見ていた。これまでに、ラスがその冷淡さで近付いてくる女性を何人も怖がらせて泣かせてきた過去を知っているから、余計に。
でも……何故かラスの心は痛んだ。
ルーナは相手の無礼を許す優しい心の持ち主…に一見みえるのだが、実際はそうじゃないとラスには分かった。
彼女はただ、ラスにそこまでの興味がないのだ。
許すとか許さないじゃなく、無関心。だから、彼女は変わらない笑顔を向けてくれる。
何故ラスがルーナの無関心さに気付いたかと言うと、それは彼もまた同じだったからだ。
筋金入りの女嫌いだと言われている彼だが……本当は、ラスは別に女嫌いでもなんでも無い。
ただ、ラスがこれまで出会ってきた女性達に興味が持てず、関心が無かっただけなのだ。
始めこそ、自分の気を引こうとする女性達に我慢して丁寧に断りを入れていた。でも、それでは女性達は一向に引こうともせず、中には一夜限りを望みしつこく縋る人もいた。硬派なラスがそれを受け入れる筈もなく……
丁寧に対応しても相手に望みを抱かせるだけなのだと知り、それからラスは遠慮なく取り繕う事なく女性達を追い払い始めた。
相手がラスの冷淡な態度に傷付こうが泣こうが関係ない。何故なら元より興味のない者達だからだ。
ラスの確固たる冷淡さ、それはルーナの愛想笑いと同じだった。
誰に対しても、冷たく、笑顔で、相手と接する。彼が他人をあしらう方法に、冷淡さを選んだとすれば、彼女は愛想笑いを選んだということだけ。
とても身に覚えのある事だったから、だからラスはルーナの自分への無関心さに気付いたのだ。
ラスは言いようのない暗い気持ちに、眉を顰めた。
(彼女は俺に興味がない……)
その事実にショックを受けている自分自身に驚く。
(…………だから、何だって言うんだ!)
そんな事に落ち込む自分が信じられなかった。
ラスの中では急に腹立たしさが込み上がる。アークやリジェルが声を掛けてくるのも無視して、ラスはサッサとルーナの店を後にしたのだった。
宿に戻ると、ラスは店で買った数本の魔法薬とルーナに貰った薬草軟膏を机の上に置く。
ラスは暫くそれらを見つめていて……再びゆっくりと動き出したかと思えば、怪我も何もしていないのに買ったばかりの回復魔法薬を飲み干した。
(絶対に……ルーナの呪いを暴いてやる!)
ラスは空になった瓶を力強く机に置くと、決意の炎を燃やしたブルーグレーの瞳を鋭く光らせた。
面と向かって挑めば……相手は魔女。呪いに免疫のない聖騎士である自分は、また彼女に呪われてしまうかもしれない。だから、気付かれないように監視してやる。
その為には、また彼女の店に行く機会が必要で……つまり、明日また店に行く為に今買ったばかりの魔法薬は処分しなくてはならないのだ。
だから飲んだ。無傷な身体に回復魔法薬を使ったからなのか、何だかラスはとても元気になった気がした。
昨夜、一心不乱に写本して寝不足だったのだが、それすらも解消された気分だ!
「あの魔女め……今に見てろよ」
絶対にこの呪いを解いてやる。
常にルーナの事を考えてしまう頭も、彼女と触れるだけで痛いくらいに暴れ出す心臓も……解呪されればおさらばだ。
「…………ルーナ…」
ふとした瞬間に彼女の名を口にしてしまう、こんな口も。
彼女の手の温もりと柔らかさをはっきりと覚えている、こんな手も……
ラスは昨日のルーナとの出会いの瞬間を、何度も頭の中で反芻しては思い出していた。
(可愛いからって、なんだ……)
そう、ラスはあの一瞬でルーナに目を奪われた。生まれて初めて、誰かの事を『可愛い』だなんて思ったのだ。
「…待っていれば…いつか君は俺に目を向けてくれるのか……?」
そんな本心が、ラスの唇からこぼれ落ちる。
瞬間、ラスはハッとして否定するように強く頭を振った。
(何を考えているんだ、俺は……呪いだ、これも全てあの魔女の呪いのせいだ!)
ラスは改めて決心する。必ずこの呪いを解いてみせると。
「おい…ラス! ルーナちゃんがびっくりするだろ!」
すぐに我に返ったアークが、顔を顰めながらラスに注意する。
「ごめんね、ルーナさん。ラスは、女性に触れられるのを好まない性格なんだ。驚いたよね」
「え? …あぁ、そうなんだ……」
リジェルが気遣うように言うと、ルーナも戸惑いから笑顔へと表情を変化させて、改めてラスを見上げた。
「手、触っちゃってごめんなさい。次からは気をつけるね!」
と、ルーナは変わらない笑顔を向けてくる。
失礼な態度を取った者にも不快さを露わさずに笑顔を絶やさない明るくて健気なルーナ。
誰が見てもそう思うだろう。
実際、アークとリジェルも関心した様子でルーナを見ていた。これまでに、ラスがその冷淡さで近付いてくる女性を何人も怖がらせて泣かせてきた過去を知っているから、余計に。
でも……何故かラスの心は痛んだ。
ルーナは相手の無礼を許す優しい心の持ち主…に一見みえるのだが、実際はそうじゃないとラスには分かった。
彼女はただ、ラスにそこまでの興味がないのだ。
許すとか許さないじゃなく、無関心。だから、彼女は変わらない笑顔を向けてくれる。
何故ラスがルーナの無関心さに気付いたかと言うと、それは彼もまた同じだったからだ。
筋金入りの女嫌いだと言われている彼だが……本当は、ラスは別に女嫌いでもなんでも無い。
ただ、ラスがこれまで出会ってきた女性達に興味が持てず、関心が無かっただけなのだ。
始めこそ、自分の気を引こうとする女性達に我慢して丁寧に断りを入れていた。でも、それでは女性達は一向に引こうともせず、中には一夜限りを望みしつこく縋る人もいた。硬派なラスがそれを受け入れる筈もなく……
丁寧に対応しても相手に望みを抱かせるだけなのだと知り、それからラスは遠慮なく取り繕う事なく女性達を追い払い始めた。
相手がラスの冷淡な態度に傷付こうが泣こうが関係ない。何故なら元より興味のない者達だからだ。
ラスの確固たる冷淡さ、それはルーナの愛想笑いと同じだった。
誰に対しても、冷たく、笑顔で、相手と接する。彼が他人をあしらう方法に、冷淡さを選んだとすれば、彼女は愛想笑いを選んだということだけ。
とても身に覚えのある事だったから、だからラスはルーナの自分への無関心さに気付いたのだ。
ラスは言いようのない暗い気持ちに、眉を顰めた。
(彼女は俺に興味がない……)
その事実にショックを受けている自分自身に驚く。
(…………だから、何だって言うんだ!)
そんな事に落ち込む自分が信じられなかった。
ラスの中では急に腹立たしさが込み上がる。アークやリジェルが声を掛けてくるのも無視して、ラスはサッサとルーナの店を後にしたのだった。
宿に戻ると、ラスは店で買った数本の魔法薬とルーナに貰った薬草軟膏を机の上に置く。
ラスは暫くそれらを見つめていて……再びゆっくりと動き出したかと思えば、怪我も何もしていないのに買ったばかりの回復魔法薬を飲み干した。
(絶対に……ルーナの呪いを暴いてやる!)
ラスは空になった瓶を力強く机に置くと、決意の炎を燃やしたブルーグレーの瞳を鋭く光らせた。
面と向かって挑めば……相手は魔女。呪いに免疫のない聖騎士である自分は、また彼女に呪われてしまうかもしれない。だから、気付かれないように監視してやる。
その為には、また彼女の店に行く機会が必要で……つまり、明日また店に行く為に今買ったばかりの魔法薬は処分しなくてはならないのだ。
だから飲んだ。無傷な身体に回復魔法薬を使ったからなのか、何だかラスはとても元気になった気がした。
昨夜、一心不乱に写本して寝不足だったのだが、それすらも解消された気分だ!
「あの魔女め……今に見てろよ」
絶対にこの呪いを解いてやる。
常にルーナの事を考えてしまう頭も、彼女と触れるだけで痛いくらいに暴れ出す心臓も……解呪されればおさらばだ。
「…………ルーナ…」
ふとした瞬間に彼女の名を口にしてしまう、こんな口も。
彼女の手の温もりと柔らかさをはっきりと覚えている、こんな手も……
ラスは昨日のルーナとの出会いの瞬間を、何度も頭の中で反芻しては思い出していた。
(可愛いからって、なんだ……)
そう、ラスはあの一瞬でルーナに目を奪われた。生まれて初めて、誰かの事を『可愛い』だなんて思ったのだ。
「…待っていれば…いつか君は俺に目を向けてくれるのか……?」
そんな本心が、ラスの唇からこぼれ落ちる。
瞬間、ラスはハッとして否定するように強く頭を振った。
(何を考えているんだ、俺は……呪いだ、これも全てあの魔女の呪いのせいだ!)
ラスは改めて決心する。必ずこの呪いを解いてみせると。
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