討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

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第50話

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ギイッと音がする入り口の扉を開けて店の中に入った。
店内は間接照明で照らされており、少し薄暗い感じになっていた。

「すみません」

俺は、店内に呼びかけてみた。
しかし、なんの返事も返ってこない。

もう一度呼びかけようとしたら、店の中のカーテンからスッとフードに身を包んだ人物が出てきた。

「何かようかい?」

顔はフードで見えないが、声の感じから年配の女の人のようだった。

「あの・・・ここで自分の魔法の得意な属性を教えてもらえるって聞いて来たんですけど」
「あぁ・・・やってるよ。そこに座って」

そう言われて、店の少し奥に丸いテーブルがあり椅子が向かい合わせに2つ置いてあった。
そのうちの一つにお婆さんが腰掛ける。
俺はその向かいの椅子に腰掛けた。

丸いテーブルの上にある大きな水晶玉があり、そこに手をかざしお婆さんはじっと動かない。

「あの・・・」
「しっ・・・少し黙っといてくれるかい」

俺は色々聞きたかったことがあったが、お婆さんに止められたので大人しく黙る。





どれくらいの時間が経ったのだろうか。

お婆さんは水晶にかざしていた手を離し、俺の顔を見た。

「表世界の人間かい・・・この間も来たね。その子に教えてもらって来たんだね」
「え・・・はい」
「あんたは大きな使命を背負っておるな。そして、今の魔力はあんたの全力じゃない・・・その手の紋章のせいか。まぁ、あんたを守るためなんだろうね」
「え・・・どういうことですか?」
「あんたの本当の魔力はそんなもんじゃないよ。今は10分の1くらいに抑えられてるんじゃないか?まだ、その魔力でも制御出来ないんじゃそういう対処になったのもわかるけどな」
「なんで・・・」
「そりゃそうだろう。抑えてない魔力でコントロール出来ずに暴走したらあんた人何人殺すと思ってるんだい?」

お婆さんがジロリと俺を見た気がした。
俺はゾクっと背筋が凍る。

「え・・・」
「もしこの王国で使ってごらん。この王国なんて一瞬で滅んでしまうよ」

ここに来るまでの人たちや、道案内してくれた果物屋の少女の顔が浮かぶ。

「え・・・そんな。俺にそんな力・・・」
「だからその紋章をつけたんだろうね。その人に感謝しな」

俺は自分の右手の甲を見る。

これは黒主学園の上級クラスの契約書じゃないのか??
俺たちの命を守ってくれる紋章じゃないのか?

「そういえば、この間ここにきた表世界の子も同じ紋章があったね・・・。でも、あんたと違って防御機能しかなかったんだが・・・あんたはそれともう一つ見えないように紋章がもう一つ重ねてあるんだね」

え?俺にだけ見えないようにもう一つ紋章?

「恐らくそれがあんたの魔力を抑えてくれているんだ」
「でも俺、もっと強くなりたいんです。この紋章って外せないんですか?」
「外せなくはないけれど・・・今はその時じゃないね。それに外さなくてもあんたが魔力を制限できるようになったら少しずつあんたに合わせて外れるようになっているよ。この紋章かけた術師はあんたのことよく考えてるね。普通こんな面倒な術かけないよ」
「そうなんですか?」
「そりゃそうさ。つける、外すだけだったら簡単だが、それをつけられたあんたに合わせて外れていくっていう細かい術をプラスでかけるんだから。手間も神経も使うもんだよ」

恐らくこんな術かけられるのはブラークだろう。
いつからこれがかけられていたのかは分からないが。

「そうなんですね。それで、今日は俺の得意属性を見て欲しくて尋ねました」
「あんたは雷が得意だと思っているね」
「え・・・どうしてそれを」
「わしにはなんでもこの水晶で見えるんだよ。今置かれているあんたの状況もわかっておる」
「・・・・・・」

そうだ、俺はルークに出されたあの扉を開けなければならない。
そのヒントが貰えるかと思って訪ねてきたのもこのお店に来た一つの理由だ。

「その扉の開け方はわしも分からん。ただ、今の魔力よりも魔力出せるようにしないとあの扉は開けらんないよ。恐らくあんたの今の魔力ではあの扉は開けられない。それだけはわかる。とりあえず、魔力を引き出す方法を考えないと一生あの扉は開かないね」
「魔力を引き出す方法・・・」
「それと、ちょっと失礼するよ」

お婆さんはそっと俺の右手を取り、両手で包み込む。
シワシワの手に包まれた俺の手が少し白く光り、ほんのり熱くなっている。

少しして、お婆さんは手をそっと離した。

「あんたは闇属性が適正だね」
「・・・闇!?」

思いもよらない答えだった。

「でも、闇ってほとんど魔法本がないんですよ。俺だって他の魔法本に書いてあったダークボールくらいしか魔法知らなくて・・・」
「闇の魔法はほとんど出回ってないからね。使える者も少ない」
「え・・・それはなんで?」
「闇が得意属性なのは魔族が多いからね」
「魔族??」
「そうだよ。この世界には魔物がいるだろう?その親玉みたいなもんさ。今はほとんど人間の前には姿は見せないけどね。100年ほど前に魔族と人間の戦争があったんだけど、その時に魔王が退治されて戦争が収まったって話だよ。今では魔族もひっそりと隠れて暮らしてるみたいだが」

魔族・・・?
そんな話始めて聞いたぞ。ますますゲームの中の話みたいになってきたな。

「しかし、闇属性が適正だなんて珍しいこともあるもんだね。あんた魔族だったりするのかい?」
「そんなわけないじゃないですか!俺は表世界から来たんですよ?魔法もつい最近覚えましたし」
「そうだね・・・疑って悪かったね」

お婆さんはスッと椅子から立ち上がった。

「闇の魔法はほとんど人間社会にはないからね。闇以外の属性でもある程度あんたは使えるはずだから均等に練習するといいよ。本当に、天性の魔法使いだね」
「え・・・そうなんですか?」
「普通は、自分の得意属性以外は初級か中級で精一杯なんだよ。でも、あんたは闇以外でも上級まで使えるはずだ。ご両親に感謝だね」
「俺・・・別に魔法使いになりたくてなったわけじゃないんですけどね・・・」
「そうだね・・・でもそれがあんたの宿命なんだよ」

俺の宿命???
俺はなんのために討伐師ハンターなんて目指しているんだろう。


親のため?
ブラークのため?
学校のため?
将来のため?



俺、いつからこんな風に結果しか考えないようになったんだろうか。


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