討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

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第52話

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なかなか5人と話ができないまま一日が過ぎていった。

帰りの時間になり、礼央以外の4人は親が迎えに来て帰っていった。
礼央はいつも親が迎えにくるのが遅いので1人教室で遊んでいた。

俺は家政婦さんが迎えに来ていたが少し待ってもらって、礼央のところに行った。

「礼央くん・・・」

話しかけた俺に気がつき驚く礼央。
その顔はまた青ざめていた。

「僕・・・何かしたかな。何か悪いことしてたなら教えていくれないかな」

俺は必死に礼央に話しかける。
礼央は、少し悩んでいるようだ。

何か話せない理由があるのか。
いつも優しい礼央が青ざめた顔をするのだからよっぽどの理由があるのだろう。

「・・・無理にとは言わないけど・・・僕、礼央くんとは仲直りしたいんだ」
「そんなこと言っても無理だよ!」
「え?」
「・・・・もう一緒に遊べない」
「どうして?」
「どうしてって・・・お前、親から何も聞いていないのか?」

親?なんで親が出てくるんだ。

「何も聞いてない・・・何があったの?」
「・・・お前と仲良くするなって。お前の親の代理ってやつから電話きたらしいんだよ。俺ら5人の家に」
「え?」
「俺も訳わかんなかったし、親が言ってくることだから別に気にしてなかったんだけど。昨日、また家に電話が来て・・・」

礼央の顔がまた青くなる。

「電話を受けた母ちゃんが泣きながら俺に言ってきたんんだ。・・・だからごめん」
「・・・そんなことがあったんだ。ごめん、話してくれてありがとう」

なんで俺の両親はそんなことするんだ?
俺が誰と仲良くしようが関係ないだろ。

俺は待ってもらっていた家政婦さんと一緒に家に帰った。







「坊っちゃん・・・そろそろ寝ないと」
「・・・今日は親と話したいことがあるから起きてたいんです。佐々木さん、付き合わせちゃんってすみません」
「私は構わないんですが・・・」

時計はもう夜の10時を過ぎていた。
家政婦の佐々木さんは俺が寝るまでは帰れないという制約を守って残ってくれていた。
佐々木さんは俺が物心つく頃にはいた家政婦さんだ。身長は少し低く年齢は60前半くらいだろうか。ゆっくり動いているようで無駄な動きがない人で、いつも俺の意見を尊重してくれる。そして、間違ったことがあるとそっと諭して教えてくれる人だ。

「どうかしたんですか?・・・幼稚園から帰ってきてから元気がないようですけど」
「・・・大丈夫です。父さんと母さんどっちが早く帰ってきますかね?」
「そうですね・・・」

リビングにある小さな液晶画面を佐々木さんは見た。
そこには父と母の携帯やPCの端末と連動しているもので、帰る予定などが逐一更新されるのだ。
これを見れば大体の予定がわかる。入力しているのは恐らく秘書だろうが。

「奥様が22時半頃に帰宅予定になっていますね。旦那様は今日は帰れないとなってます」
「そうですか・・・わかりました」

指示したのが父さんなのか母さんなのか分からないが、母さんに聞いてみるか。

「私はキッチンで明日の朝ごはんの準備を少ししていますので、何かありましたら仰ってください」
「ありがとうございます」

佐々木さんはぺこりとお辞儀をしてキッチンへと去っていった。
俺は、母さんを待つ間ソファーに腰掛けながら本を読む。

そう、俺は5歳の時にはすでに簡単な漢字なら読み書き出来るようになっていた。
家庭教師が週2回来ていたのもあるが、何より本を読むのが好きだった。

幼少期によくある親が絵本を読んで寝かしつけてくれることがほとんどなかった俺にっとって、寝る時までいてくれる家政婦さんが親みたいなものだった。家政婦さんは2人いて、今日いてくれている佐々木さんと佐藤さんだ。
佐藤さんは49代前半くらいの男の人の家政夫さんだ。佐々木さんが母親代わりなら佐藤さんは父親代わりだろう。俺の両親がそう考えてこの2人に頼んだのかは分からないが、俺は男の大人との接点を作ってくれたことに感謝している。
父親とほとんど顔を合わせない俺は、佐藤さんがいなかった場合大人の男性と喋ることがないのだ。家でも女性、幼稚園の先生たちも女性・・・。
なので、1週間交代でくる佐藤さんの時は楽しみだった。面白い本が世の中にたくさんあることを教えてくれたのも佐藤さんだった。

「戒斗くんはまだ何が好きなのか・・・どれに興味あるのか分からないと思います。自分が本当にしたいことが出来た時に、勉強しておいて損はありません。今は、本をたくさん読んで知識を蓄えてください」

そう言ってくれた一冊の本。
漢字がたくさん並んでいてまだまだ読めなかったが、頑張って漢字辞典で調べながら読んでいるうちにだんだん漢字も読めるようになっていった。
半年で500ページ近くある本を読んだって伝えた時の佐藤さんの驚いた顔は今でも忘れられない。




ガチャっと玄関のドアが開く音が聞こえる。
俺は読んでいた本から目を離し時計を見る。夜の11時になろうとしていた。
玄関からリビングへつながっているドアが開くと久しぶりに見る母親の姿があった。

「あら、戒斗まだ起きてたの。電気がついていたからそうかなとは思ったけれど」
「おかえりなさいませ」

母さんが帰ってきたのに気がついて佐々木さんがキッチンから出迎える。
母さんの上着とカバンを受け取り、手際良く片付ける。

「おかえり」

俺は、母さんの顔を見て改めて言う。

「ただいま・・・それで?私に話があるんでしょう?いつも規則正しくしているあなたがこんな時間まで起きて待ってるなんて珍しいものね」

母さんは、俺の隣に腰掛けた。



「うん。・・・今日さ、幼稚園の友達から聞いたんだけど・・・」
「・・・」

母さんは俺の顔をじっと見つめる。
その顔からは焦りも、動揺も見られない。

「俺とは仲良く出来ないって。そう、家に連絡がきたらしいんだ」
「・・・そう」

母さんは、佐々木さんが出してくれたお茶を飲みながら静かに聞いてくれていた。


「それって母さんが指示したの?・・・・それとも父さん?」

俺は恐る恐る聞いた。

しばらく、リビングには沈黙が続く。
俺は、手を組んだり握ったりしていた。

どんな返事が来るのか・・・。

チラリと母さんの顔を見る。
顎に手を置いて考え込んでいるみたいだ。

こんなに考えているのであれば母さんの指示じゃないのかな。
それとも俺にどう説明しようか悩んでる?

この長い沈黙が色々な想像をうんで不安を煽る。

「戒斗はどう思った?」
「え?」
「私とお父さんがそうしたと思ってる?」

逆に質問され、俺は言葉に詰まる。

確かに、俺の両親らしくないとは思った。
普段理由もなく、俺の私生活に口を出すことはない。そもそもそんな暇が両親にはない。
家政婦さんからの話だったり、秘書に少し調べてもらってもらっているのは知っていた。
どんなに幼くても俺を含めて話をしてくれていた両親。
過去にも似たようなことがあったらしい。

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