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第三章 出会い
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「ありがとうございました。本当に助かりました。」
俺は姿が見えるのでその場からお辞儀をして礼を伝えた。
しかし、火神は俺に向かって手招きをする。
「こっちこい。」
俺は呼ばれる理由が分からないが、その指示に素直に従うことにした。
「お前らは呼ばれてないから。入るなよ。」
「あ?」
後ろを振り返れば京介と多田は市瀬の手によって入室を拒否されており、京介のどすの効いた声と共に殺気立った瞳で市瀬をにらみ上げている。
「別にお前らの側近を苛めるつもりはねぇよ。直ぐそっちに返すから。」
火神は2人にそう声をかけており、京介たちも渋々というように従った。
しかし、いつでも飛びかかれるように戦闘態勢であるのは伝わってくる。
俺は2人に大丈夫という意味をこめて頷き、火神の傍へと歩を進めた。
傍に寄って立ち止まれば、火神は顔を寄こせと人差し指で指示をしてくる。
俺は少し身構えながらも火神に顔を寄せた。
その俺に、火神は徐に顔を近づけてきた。
その動作が、とても艶かしく感じるのは何故だろう。
色気を感じてしまうのは、男としての強さと余裕のせいだろうか。
ふわりと、あの日嗅いだ甘い匂いが鼻をつく。
花のように柔らかく、安心できるような温かい匂い。
火神は俺の耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。
その言葉に、俺はえ?と小さく言葉が漏れる。
ものを言い終えた火神はまた背もたれに体をつけ、顔色1つ変えず、笑みもたたえず、真っ直ぐ俺の瞳を見つめる。
だが、表情には出ていない感情が、目元に出ているような気がした。
力強い綺麗な茶色の瞳が、とても優しく見えた。
俺は、思わず頷いていた。
それに火神も1つ頷いた。
「もういいぜ。あの殺気立ってるの連れて帰れ。」
「はい。あの、ありがとうございました。服、一応洗濯したんですけど、人が着たの嫌だったら言って下さい。お金払うんで。」
「そんぐらい気にしねぇよ。」
俺は服の持ち主が火神だと決め付けてそう伝えた。
理由は明白である。
この暑い中、火神だけが長袖を着ていたからである。
半袖のカッターシャツにインナーが長袖だったなら俺もそこまで考えなかっただろうが、火神は中に長袖のインナーを着て、尚且つその上から長袖のカッターを羽織っていた。
寒がりには見えないのだが、何か理由があるのだろうか。
そんなことを尋ねてはいらない詮索をするなと殴られそうなので、俺は大人しく言葉に従って教室を出る。
帰る際にも小さくお辞儀をしながら俺は2人を連れて下に下りた。
「お前さっき何言われたんだ?」
「うぅん、特には。大丈夫かって、ただそれだけ。」
「あの火神が心配ねぇ。ま、状況が状況だからな。何もなかったならいいわ。」
実際は、そんなことを言われたのではない。
だが、何となく隠したほうがいいのではないかと思ったから。
火神は俺に、何かあったらいつでも俺のとこに来いと言った。
京介たちから聞いていた話で想像していた人物とは、どうにもかけ離れていた。
2人が嘘をついているのではなく、周りで噂されているイメージが実際とは異なっているのだと思う。
しかし、そう決め付けるには関わりが少なすぎる。
実際にどのような人物なのか、どうにも推し量れない人だ。
俺は姿が見えるのでその場からお辞儀をして礼を伝えた。
しかし、火神は俺に向かって手招きをする。
「こっちこい。」
俺は呼ばれる理由が分からないが、その指示に素直に従うことにした。
「お前らは呼ばれてないから。入るなよ。」
「あ?」
後ろを振り返れば京介と多田は市瀬の手によって入室を拒否されており、京介のどすの効いた声と共に殺気立った瞳で市瀬をにらみ上げている。
「別にお前らの側近を苛めるつもりはねぇよ。直ぐそっちに返すから。」
火神は2人にそう声をかけており、京介たちも渋々というように従った。
しかし、いつでも飛びかかれるように戦闘態勢であるのは伝わってくる。
俺は2人に大丈夫という意味をこめて頷き、火神の傍へと歩を進めた。
傍に寄って立ち止まれば、火神は顔を寄こせと人差し指で指示をしてくる。
俺は少し身構えながらも火神に顔を寄せた。
その俺に、火神は徐に顔を近づけてきた。
その動作が、とても艶かしく感じるのは何故だろう。
色気を感じてしまうのは、男としての強さと余裕のせいだろうか。
ふわりと、あの日嗅いだ甘い匂いが鼻をつく。
花のように柔らかく、安心できるような温かい匂い。
火神は俺の耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。
その言葉に、俺はえ?と小さく言葉が漏れる。
ものを言い終えた火神はまた背もたれに体をつけ、顔色1つ変えず、笑みもたたえず、真っ直ぐ俺の瞳を見つめる。
だが、表情には出ていない感情が、目元に出ているような気がした。
力強い綺麗な茶色の瞳が、とても優しく見えた。
俺は、思わず頷いていた。
それに火神も1つ頷いた。
「もういいぜ。あの殺気立ってるの連れて帰れ。」
「はい。あの、ありがとうございました。服、一応洗濯したんですけど、人が着たの嫌だったら言って下さい。お金払うんで。」
「そんぐらい気にしねぇよ。」
俺は服の持ち主が火神だと決め付けてそう伝えた。
理由は明白である。
この暑い中、火神だけが長袖を着ていたからである。
半袖のカッターシャツにインナーが長袖だったなら俺もそこまで考えなかっただろうが、火神は中に長袖のインナーを着て、尚且つその上から長袖のカッターを羽織っていた。
寒がりには見えないのだが、何か理由があるのだろうか。
そんなことを尋ねてはいらない詮索をするなと殴られそうなので、俺は大人しく言葉に従って教室を出る。
帰る際にも小さくお辞儀をしながら俺は2人を連れて下に下りた。
「お前さっき何言われたんだ?」
「うぅん、特には。大丈夫かって、ただそれだけ。」
「あの火神が心配ねぇ。ま、状況が状況だからな。何もなかったならいいわ。」
実際は、そんなことを言われたのではない。
だが、何となく隠したほうがいいのではないかと思ったから。
火神は俺に、何かあったらいつでも俺のとこに来いと言った。
京介たちから聞いていた話で想像していた人物とは、どうにもかけ離れていた。
2人が嘘をついているのではなく、周りで噂されているイメージが実際とは異なっているのだと思う。
しかし、そう決め付けるには関わりが少なすぎる。
実際にどのような人物なのか、どうにも推し量れない人だ。
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