【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

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第五章 落ち着くのは

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颯斗の家に帰れば、玄関には智くんと亮が立っていた。

「何事?」

説明を求めるように智くんに尋ねられるが、俺は喋ろうとはしなかった。
追及を逃れるように顔を背けて颯斗によりいっそう抱きつく。

「わり。もう大丈夫だから。足洗いたいからそこ通してくれるか?」

それに2人は素直に応じてくれた。
俺は浴室に連れて来られ、お風呂の椅子を器用に蹴って動かしたそこへと下ろされる。

「どうする?汗も流す?」

汗で体が冷えたこともあり、それに頷いて着ていた服を颯斗に渡した。
颯斗は着替えを取りに行ってくれ、俺は体を軽く流して足を洗い、浴室から出れば服は既に用意されており、そこには颯斗がいた。

「大丈夫か?体調は?」

「うん、大丈夫。ごめんね、油断してた。」

「いーよ。俺も安易に考えてたから悪いし。前もこんなことあったのか?」

「うぅん。初めて。今までは、魘されて眠れないとか、食欲ないとかだけだったから。情けないね。」

俺はそう言って小さく笑った。
自分を嘲笑あざわらうような笑みだったと思う。
それを見た颯斗は顔をしかめた。

「そんな風に笑うなよ。怖くて当然だろ。平気な訳がねぇじゃん。泣きたいなら泣けばいいし、怖いなら怖いって言えばいい。我慢する必要はない。俺が傍にいんだから。」

颯斗はいつでもそうやって俺を受け入れてくれる。
俺の支えになってくれる。

でもだからこそ、申し訳なくなってしまう。
俺に合わせてくれているのが分かるから。
俺のために行動してくれているのが分かるから。
それに対して俺は何も返せないから。
俺には何のとりえもないから。

「でも、俺颯斗の荷物にしかなってない。俺に合わせてくれてるのが分かるし、送迎も大変だし、男と一緒に寝るのも嫌だろうし、今だってこんな夜中にこんな騒ぎ起こして迷惑かけて、俺何もお返し出来ないのに。」

俺は情けなくも涙が込み上げてきて、ついには零れ落ちてしまう。
そんな颯斗は俺の元におもむろに近づき、手が止まっていた俺の手からバスタオルを取り上げ、包み込むように俺の体にかけて涙をそっと拭う。

「柚希は何も分かってねぇな。」

颯斗はそう言いながら俺の体にバスタオルを滑らせて残った水滴を拭きあげてくれる。
颯斗の言葉に心がズキリと痛んだ。
しかし、それを否定するように颯斗は言葉を紡いでいく。
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