【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
163 / 261
第六章 干渉

163

しおりを挟む
久しぶりに帰ってきた家は、何一つ変わっていなかった。
几帳面の母親を体現したかのような、整理整頓された物の少ない家。
物には定位置があり、必ずその場所に戻される。
おかげで何も変わっていない。
昔の生活に戻ってきたと錯覚してしまうほど、変わっていない。

「通知表、持ってきたのよね?」

リビングで俺がいつも座っていた一人がけのソファーに座れば、左手にある3人がけのソファーに、母親が俺に寄って座った。
鋭い目付きをする母親に、俺は何も言わずに通知表を手渡した。

家を出る前に持ってこいと言われていたものだ。
正直、通知表は見せたくなかった。
言われることは想像がつく。絶対に、遅刻と欠席を指摘される。

「あなた、これは何?ふざけてるの?遅刻と欠席がついているけどどういうこと?」

案の定予想が当たり、俺は事前に考えてきていた嘘を話し始める。

「欠席は、体調不良で。無断欠席になっているのは、風邪をこじらせて動く気力がなかったからです。すみません。遅刻も、体調が優れない時に起きれなくて、遅刻しました。すみません。」

「そう。毎学期、全部が体調不良なのね?こっちにいるときは一度たりとも起きれなかったことがないあなたが、こんなにも体調不良で遅刻をしたのね。」

母親の言うとおりだ。
俺は起きれなかったことは一度もないし、遅刻も一度もしたことがない。
一人になった途端それが出来なくなるのは考えにくいだろう。

しかし、俺としてはそれ以外に説明のしようがない。
本当のことを言おうものなら、即刻この家に帰されてしまう。
無難な嘘はその手しかない。

「新しい環境で慣れるのに時間がかかったのと、不摂生な食事のせいだと思います。一人だと、どうしても面倒になってしまったりすることがあるので。気をつけます。」

「そうね。働き始めたら体調管理も仕事のうちよ。基本だわ。それも出来ないようなら一人暮らしは早いということね。こっちに帰ってきた方がいいんじゃないかしら。始発で行けば学校には間に合うでしょう?」

「すみません。以後気をつけます。改善の兆しがなければ、それで構いませんので、もう少し頑張らせてください。」

母親としては何としてもこちらに帰したいのだろう。
自分の手中に俺を収めたいから。
勝手な行動をしないように、警視総監の息子として正しいと思っている振る舞いをさせる為に。
未だに母親の鋭い視線が俺の瞳を射抜くが、俺としても引くわけにはいかない。

「次、こんなことがあったらこっちに戻ってきてもらいます。あまりに酷ければ編入も考えるから、そのつもりでいなさい。」

「はい、分かりました。」

これで、俺は一度たりとも遅刻も欠席も許されなくなった。
母親はするといえば絶対にする人だ。
この生活を守るためには、俺は何が何でも学校に行かなければならない。

京介たちには協力をしてもらわないといけないだろう。
いざとなれば2人を家において、自分だけ登校する方法を取らなければならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...