【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

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第七章 従順な俺

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「ずっと見てきた。小さい頃からずっと。でも、京介が泣いたのは初めてだった。保育園の時でさえ、京介は泣き顔を見せたことは一回もなかった。いつも唇をぐっと噛み締めて、涙が出そうになっても絶対に零さなかった。そんな京介が初めて泣いた。正直、俺がやり返したいぐらい悔しい。でも、京介がそれを望まないのが分かるから。俺は話を聞いてあげるぐらいしか出来ないのがもどかしいよ。」

多田の中で大きな感情がとぐろを巻いているのだろう。
京介のことを思うからこそ行動できず苦しいに違いない。

「それで十分だと思うよ。ずっと隣で見てくれてた多田にだからこそ、分かってくれることがあるんでしょ。多田相手だからこそ喋れることもあるだろうし、同じだけ悔しい思いを共有してくれる人が傍にいるって、相当心の支えだと思うから。多田は本当に京介が好きなんだね。」

「当たり前だよ。だからずっと一緒にいるんだよ。」

多田はそう答えながら、優しい表情をしていた。
京介の話をする時はいつもそのような表情をする。
感情をあまり表に出すタイプではないのだが、京介に対する感情はいつも駄々漏れだ。

「今まで敢えて聞かずにきたけど、多田って京介のこと、友達以上で好きだよね。」

「そりゃ俺にとって京介は唯一無二だから。」

そう平然と言い切ってしまうが、俺の言っていることをきちんと理解したうえで答えているのかは分からない。
その返答内容ですら、本気か冗談かも計り知れない。

「それは、恋愛として好きって捉えていいの?」

「亀にとってそう見えるならそうなんじゃない?」

どうやら言及するつもりはないらしい。

「俺も颯斗のこと告白したんだからちょっとぐらい教えてよ。」

「情報屋だからそんな簡単には喋らないよ。ただ俺は京介のことが好きだよ。本人にも言ってるけど、今も昔もずっと。だから一緒にいる。それだけだよ。」

どんなことを投げかけようと、きっと多田はこれ以上のことは話さないだろう。
しかし、俺の推測は当たっているのだろうと判断する。
多田は別に隠しているわけではない。
大っぴらにしているし、本人にも明け透けと伝えている。

ただ、その言い方が冗談めいてるように見えるから、周りも本人も本気だとは思っていない。
多田もそれを良しとしているし、それ以上は踏み込もうとはしていない。
これ以上の進展を望んでいないのだろう。

「俺は応援するからね。」

「何に対してか知らないけど、亀もお風呂入ってきたら?京介はもう絶対に起きないだろうから。」

「そうするよ。多田も先に寝てていいよ。」

「ありがと。お言葉に甘えるね。」

そして多田は寝室へ、俺はお風呂場へ行き寝る支度へと入っていく。
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