【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
226 / 261
最終章 人生最大の反抗

226

しおりを挟む
声を聞いても、俺は未だに幻覚を見ているのではないかと思い、そっと見えている颯斗へと手を伸ばす。
その手を、颯斗はしっかりと握ってくれた。
熱いぐらいの体温が、俺の手を包み込んだ。

「なんで・・・、どうやって・・・?」

「俺運動神経いいから。お前んち、登りやすい作りしてたからよじ登ってきた。」

「なんで?どうして?」

「何でもどうしてもねぇだろ。柚希が拉致られて監禁されてんの、ほっとけるわけねぇじゃん。それに約束しただろ。飛び出せないなら俺が連れ出しに行ってやるって。俺は約束通り迎えに来た。後は、柚希が決断するだけだ。」

「決断?」

「そう。親に死ぬ気で反抗して俺と一緒に住むか、親に従ってここに住んで大学目指すか。今、ここで選べ。俺は柚希の決断に従う。」

今すぐ選べなんて、そんなこと俺には出来ない。
昔の俺だったら、そう言っていただろう。
しかし、今の俺は直ぐに決断を下すことが出来た。

「俺、ここから出たい。颯斗と一緒にいたい。」

「素直でよろしい。行こう。俺がどこまででも自由にさせてやる。」

そのキザなセリフに、俺は素直に頷いていた。
颯斗に手を引かれ、ベランダへと一歩踏み出す。
それだけで、背中に翼が生えたかのような軽い気持ちになった。
自由にさえなれた気分だった。

颯斗は2階にある俺のベランダから器用に玄関アーチの屋根に飛び降り、身軽に1階へと飛び降りていく。

「こい。受け止めてやるから。」

颯斗は小声でそう言いながら俺を受け止めるように腕を広げた。
しかし、ここは2階である。
そう簡単に飛び降りれる高さではない。

それでも、躊躇っている時間はない。
両親はもう寝ている時間だが、いつ俺らの異変に気づいて起きてもおかしくない。
そうなったらおしまいだ。

俺はベランダの外側に立ち、なるべく体勢を低くして、意を決して颯斗の胸に飛び込むような気持ちで手を離す。
俺の体は宙を舞い、落下する感覚に体がゾワっと恐怖する。

それでも、俺は目を瞑らなかった。
俺をここから連れ出してくれると約束してくれた颯斗を信じ、真っ直ぐ見つめて手を伸ばした。
颯斗は俺の体を受け止め、衝撃を流すようにしてターンをして俺の脚を着地させる。

「こんなに細くなっちまって。」

衝撃も痛みも然程になく受け止めた俺の体を、颯斗は1回きつく抱きしめた。

「行こう。逃げる手はずは整ってる。」

俺を放した颯斗は俺の手を取り、玄関の門を抜けて家の前に止めていたバイクへと跨る。
俺は急いでヘルメットをつけ、颯斗の後ろへと跨り乗った。
しっかりと腕を回していることを確認し、颯斗は走り出した。


人生最大の逃亡劇の始まりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...