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第二章 最強の男
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しおりを挟む「亀早くない?」
先に寝室から顔を出したのは多田であり、その背後に見える布団はまだ膨らみがあるので京介は起きて来ていないのだろう。
登校が早い割りに目覚めは悪いらしい。
「朝洗濯物回すようにしてるからさ。朝ごはん作ったけど食べれる?」
「もちろん。先に顔洗ってきていい?」
「いいよ。飲み物はコーヒーとお茶、どっちがいい?」
「俺はコーヒーかな。ブラックでいいよ。」
「分かった。」
俺は座卓に朝食を並べ、多田のコーヒーを注ぎ終れば俺は京介を起こしに寝室へと向かう。
「京介ー。起きて。朝ごはん出来たよ。」
「んー・・・。」
返事はしているが起きる気配はないし、この返事も俺の言葉を理解してではないだろう。
「起きてって。学校もあるし。ご飯冷めるよ。」
「亀ダメだよ。京介はそんなんじゃ起きないから。」
顔を洗い終えた多田は俺の背後に立ちつつそういう。
「じゃあどうやって起こすの?」
「まぁ見てて。」
そう言って多田は座り込み、布団に潜っている足を布団を剥いで露にし、人差し指で足の甲をするすると蛇行させながら足首へと滑らせていく。
くるぶしぐらいに差し掛かった頃、京介は突然飛び起きて指を滑らせていた足の甲を手で払った。
俺はその突然の行動にびっくりしたが、飛び起きた本人もびっくりした表情をしていた。
「あーもうまたお前かよ!マジびっくりした!それやめろっつの!」
「京介が起きないからだよ。亀が朝ごはん作ってくれたって。」
「朝ごはん?マジ?そんなもんまで出んのこの家?」
「だから無駄にしないように早く起きて。」
多田が立ち上がってリビングに戻っていくので、俺もそれについてリビングに戻りながら先ほどの京介について尋ねる。
「さっきのどういうこと?」
「京介、昔寝てた時に足にムカデが這ったことがあって、それから寝てる時に足がムズムズするのがトラウマなんだよ。あれをしたら一発で起きる。」
「なかなか鬼畜な起こし方するね。他にないの?」
「無理だよ。睡眠が足りてれば揺すれば起きてくれるけど、昨日みたいに寝るのが遅かったら梃子でも起きないから。あの爆音で起きないぐらいだからね。逆に亀はいつ起きたの?」
「1時間前ぐらいかな。」
「昨日寝るの遅かったのにすごいね。」
「俺目覚めはいい方だから。てか俺昨日寝た記憶ないんだよね。いつ寝た?」
「うーん、俺も気づいたら寝てたからな。分かんないや。京介の意識が落ちたのは覚えてるけど、もしかしたら皆ほぼ同時ぐらいかもね。」
「うっわ、うまそ。朝からこんな豪勢な飯食えんのかよ。」
「京介はお茶とコーヒーどっちがいい?」
「俺お茶ー。」
2人が座卓を囲むように座り、俺は京介の飲み物を置いて空いた場所に座り、洋朝食に手をつける。
こんな豪勢と京介は言ってくれたが、普通に卵とウインナー、サラダとパンを焼いただけである。
手は一切込んでいないのだが、喜んでもらえたならそれでいい。
朝食を食べ終えれば、昨夜のように多田が皿洗いをし、京介が拭いて俺が片付ける。
俺は残り歯磨きと制服だけのため直ぐに支度を終え、2人の支度が終わるのをテレビをみながら待っていたのだが、坊主の京介の支度はめちゃくちゃ早かった。
顔と歯磨きをすれば制服を着替えて終了である。
坊主というものは本当に簡単だとつくづく思う。
かといって俺が似合う訳ではないのでしないのだが。
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